8月3日に決勝を迎えた「鈴鹿8耐2025」(2025 FIM世界耐久選手権コカ・コーラ鈴鹿8時間耐久ロードレース第46回大会)。灼熱の鈴鹿サーキットでは文字通りのアツいレースが繰り広げられているが、各メーカーによる「新型車合戦」も白熱している。
スズキは8耐に合わせ、2022年に販売を終了していたスーパースポーツ『GSX-R1000』『GSX-R1000R』を復活させると発表。1日に開幕した8耐の会場では、往年のレーシングマシンを彷彿させる3色のGSX-R1000Rがサプライズで日本初公開となった。

「GSX-R」シリーズは、1985年の初代『GSX-R750』発売から2025年で40周年を迎えた。これまでシリーズ累計生産120万台以上を生産している。また、世界耐久選手権での20回のタイトルを含め、スーパーバイク世界選手権、全日本ロードレース選手権など数々のレースで栄光を勝ち取ってきた。鈴鹿8耐2025では昨年に引き続き、サステナブル燃料な素材を使用したGSX-R1000Rで参戦している。
GSX-R シリーズ40周年の節目に、日本では2022年を最後に販売を終了し、復活を熱望する声が絶えなかったGSX-R1000、GSX-R1000Rが生まれ変わる。
◆スポーツバイクの王者としての性能を進化

今回のモデルチェンジでは、見た目の変化はほとんどなく、性能面での進化がポイントだ。
“The King of Sportbikes(スポーツバイクの王者)”としての高い性能を犠牲にすることなく、排ガス規制と騒音規制に対応し、エンジン内部部品の徹底的な見直しに加えて、最新の電子制御システムや、軽量、コンパクトで信頼性が高く、幅広い温度特性を持つエリーパワー製のリチウムイオンバッテリーを採用し進化した。
999.8ccの水冷4サイクル直列4気筒エンジンはそのままに、インジェクター、シリンダーヘッド、カムシャフト、バルブ、ピストン、クランクシャフトなどのエンジン内部部品の形状などを全面的に改良し、厳しい排ガス、騒音規制をクリアしながら、高パフォーマンスと耐久性の向上を実現した。

バルブの最大リフト量は変えず、リフトカーブを変更することでカムシャフトオーバーラップを減らした。耐久レースなど厳しい環境下で使用されることを想定し、カムチェーンの幅を広くした。
排気システムの形状や触媒類の配置を見直すことで、排ガス規制への対応と高い出力性能を両立した。また、レイアウトを変更したことでマフラーボディがスリムでスタイリッシュなデザインとなった。
最高出力は1万3200rpmで195ps、最大トルクは1万1000rpmで110Nmを発生する。新しい鍛造アルミニウムピストンは短いスカートとカットアウェイサイドを持ち、圧縮比を13.8:1に向上させた。
◆高次元の「走る、曲がる、止まる」、8耐マシンと同じウィングレットも

ボディサイズは全長2075mm×全幅705mm×全高1145mm、ホイールベースは1420mm。シート高は825mm。タンク容量は16リットルで、装備重量は203kgとなっている。
現行モデルで高い評価を得ている、軽量コンパクトで高剛性なツインスパーアルミフレームを継続して採用することで、「走る、曲がる、止まる」の基本性能が高次元で調和した。サスペンションはショーワ製のバランスフリーフォークとリアショックを採用し、電子制御ステアリングダンパーも装備する。
ブレーキはフロントにブレンボ製モノブロックキャリパーと320mmディスク、リアに単一キャリパーと220mmディスクを装備。新しいABSユニットは従来モデルより51g軽量化された。

フロントカウルには、2024年の鈴鹿8耐で「チームスズキCNチャレンジ」の車両が装着していたものと同じカーボンファイバー製のウィングレットをオプションとして設定(一部地域では装着販売)することで、車体にダウンフォースを発生させコーナリングからの立ち上がり時にフロントのリフトを抑制し、スムーズな加速を実現した。
加速時にフロントホイールが浮き上がるのを抑制し、スムーズな加速をサポートするようリフトリミッターも追加された。
IMUと車輪速センサーが車体姿勢と車速を検出し、車体のバンク角と車輪の回転数に応じて後輪の駆動力をコントロールし、コーナリングから最適な加速ができるようトルクを制御するロールトルクコントロールを装備した。トラクションコントロール、リフトリミッター、ロールトルクコントロールは、「スマートTLRシステム」として連動して機能する。
◆往年のスズキレーシングマシンを彷彿させる3つのカラー

会場にも展示された往年のスズキレーシングマシンを彷彿させる3色は、「Pearl Vigor Blue / Pearl Tech White」(ブルー)、「Candy Daring Red / Pearl Tech White」(レッド)、「Pearl Ignite Yellow / Metallic Mat Stellar Blue」(イエロー)。
このほか、車両側面やタンク上部、キーマスコットに40周年記念グラフィックやエンブレムが施された。シートやマフラーには「GSX-R」ロゴがあしらわれている。これら全てのカラーが8耐会場に展示され、レッドの車両については跨り試乗も可能となっていた。
GSX-R1000、GSX-R1000Rともに日本での販売時期や価格などについては未発表。だが、スズキは販売する気マンマンだ。その意気込みは今回の展示にも現れていた。
ちなみに、現時点で判明しているGSX-R1000とGSX-R1000Rの違いはサスペンションのみで、フロントがショーワ製のBPFとBFF、リアがリンク式コイルスプリングオイルダンパーとショーワ製BFRC-liteの違いとなっている。外観やエンジン特性などはすべて共通と見られる。
