【ルノー ルーテシア 650km試乗】ゴーン体制の“プラスの”置き土産、OEMの稀有な成功例だ

ルノー ルーテシア1.3TCe インテンスのフロントビュー。旧型第4世代のイメージを継承しつつ、少しスリークになった。
  • ルノー ルーテシア1.3TCe インテンスのフロントビュー。旧型第4世代のイメージを継承しつつ、少しスリークになった。
  • ルノー ルーテシア1.3TCe インテンスのリアビュー。
  • ルノー ルーテシア1.3TCe インテンスのサイドビュー。ホイールベースは日産『ノート』とほぼ同じ。
  • フロントエンド。ルノーのアイデンティティマスクを折り込んだデザインだが、旧型に比べると若干目が小さい。
  • 一見つるっとした印象だが、ボディパネルの抑揚は結構大きい。
  • フロントバンパー左右にはホイールハウスへの導風口が設けられている。
  • 前ホイールハウスにエアカーテンを張るためのエアアウトレット。
  • タイヤは205/45R17サイズのコンチネンタル「コンチ エココンタクト6」。ハイパフォーマンスではないが、柔らかいグリップ力を持ついいタイヤだ。

フランスの自動車メーカー、ルノーのBセグメントサブコンパクト『ルーテシア(欧州名:クリオ)』を650kmほど走らせる機会があったので、インプレッションをお届けする。

クリオの第1世代が登場したのは今から30年以上前の1990年。ルノーは長年、乗用車の基幹モデルについては『19(ディズヌフ)』『25(ヴァンサンク)』等、番号車名とするのを伝統としていた。例外もあったが少数派である。その方針を転換し、固有名詞としての車名を付けはじめたのは1984年のミニバン『エスパス』。クリオはそれに続く第2弾で、今日もルノーの中で2番目に長い伝統を持つ車名となっている。日本名ルーテシアは古代ローマ帝国時代のパリの呼称ルテチアを基にした造語で、初代クリオ時代から継承されてきたものである。

今日販売されているのはコロナ禍前の2019年に欧州デビューを果たした第5世代。欧州委員会による厳しいCO2規制により第4世代に存在したホットモデル「R.S.」は消滅。デビュー当初は存在したディーゼルも廃止され、現在のパワートレインは1リットル3気筒、1.3リットル4気筒の2つの純ガソリンエンジンとストロングハイブリッド「E-TECH」の合計3種。日本に入ってくるのは本国にはない1.3リットルの自動変速機版とE-TECHの2種類。

ロードテスト車は純ガソリングレードの「インテンス」。ドライブルートは横浜を起点とした北関東周遊で、総走行距離は674km。最遠到達値は日光・清滝。道路比率は市街地3、郊外路5、高速2。1~2名乗車、エアコンAUTO。

まずルーテシアの長所と短所を5つずつ箇条書きにしてみよう。

■長所
1. リッター100psのターボエンジンとしては望外に良好な燃費。
2. 旧型の非ルノースポールモデルに比べて操縦安定性が大幅向上。
3. 格段に進化した快適性と静粛性。
4. スマホのミラーリングが可能なディスプレイが標準。
5. ほぼ全部入りの欧州Bセグメント車としてはかなり平和な車両価格。

■短所
1. スタイリングの独特な躍動感は旧型からいささか後退。
2. 坂道発進時など高トルクでのクラッチミートが若干ヘタクソ。
3. 欧州車には珍しくロービームの配光特性が良くない。
4. 質感は高いがもう少し洒落たインテリアカラーが欲しい気がした。
5. 日本ではハイオク仕様になる。

◆ゴーン体制の“プラスの”置き土産、OEMの稀有な成功例

ルノージャポンが入居する日産グローバル本社にて。ルノージャポンが入居する日産グローバル本社にて。

ではインプレッションに入っていこう。旧型の第4世代に比べて何となく日本車っぽいエクステリアビューとなった感のある第5世代ルーテシア。操縦性やライドフィールも欧州小型車っぽさが薄れたかと思いきや、乗ってみると欧州ユーザーのわがままとも言えるくらいの走行性能への要求に応えようとする今どきの欧州Bセグメント真っ只中と言うべきテイスト。第4世代では一時期、エンジンパワーは低いがシャシーセッティングはアルピーヌに統合される前のルノースポールが行った「GT」というグレードがラインナップされていたことがあったが、第5世代はノーマル系のインテンスがそのGT相当という感じだった。

ライドフィールとともに瞠目(どうもく)させられたのは燃費。欧州メーカーが浸透させつつある48ボルトのマイルドハイブリッドが組み込まれているわけでもなく、あるのはシンプルなアイドリングストップ機構のみ。それで市街地、郊外、高速のオーバーオール燃費の実測値はリッター20kmを上回った。1.3リットルターボエンジンの効率がよほど高く、かつ車体の走行抵抗がよほど小さくなければこうはならないというスコアだった。

筆者は以前、日産自動車の同格モデル、第3世代『ノート』AWDの3600km試乗記をお届けした。第5世代ルーテシアはそのノートと同じ「CMF-B」プラットフォームで作られており、ホイールベースもほぼ同一。興味深く思われたのは同じプラットフォームを使いながら両モデルが異なる方向性を目指し、それぞれ違う良さを体現できていることだった。

失脚したカルロス・ゴーン元会長はルノーと日産が共通の技術の引き出しを持ち、それを使ってそれぞれが独自のクルマを作ることを目指していた。が、それは簡単ではなかった。同時代のモデルでは第1世代ノートと第3世代クリオが同一プラットフォームを使用したが、第2世代ノートと第4世代クリオでは前者が新興国向けモデルを視野に入れた「Vプラットフォーム」を使ったのに対し、後者はゴーン氏の言うことを聞かず、旧プラットフォームを改良して使った。ルノーのエンジニアの一人は「欧州市場で戦うにはスペック不足」と理由を語っていた。

ルノー ルーテシア1.3TCe インテンスのサイドビュー。ホイールベースは日産『ノート』とほぼ同じ。ルノー ルーテシア1.3TCe インテンスのサイドビュー。ホイールベースは日産『ノート』とほぼ同じ。

現行モデルでは再び同一プラットフォームになったが、ノートは本当に日産らしく、ルーテシアは心底ルノーらしく仕上がっていた。言われなければ同じ車台だとはほとんど誰も気づかないことだろう。ちなみにCMF-Bはルノー主導の設計だが、アッパークラス用の「CMF-C/D」は日産主導。そのCMF-C/Dでは日産が『エクストレイル』、三菱自動車が『アウトランダー』と、これまたそれぞれのカラーを目いっぱい出したモデルを作出している。ルノーのSUV『オーストラル』はテストドライブしたことがないが、独自カラーをまとったものになっているものと推察される。

ようやく技術的には共通基盤、商品作りではメーカーごとに独自というステージの入口に立った格好だが、OEMの世界でそれをモノにした例は稀有で、今後ルノー=日産に三菱自を加えた3社アライアンスの強みのひとつになっていくのではないかと推察された。ルノーと日産は資本関係の見直しを巡ってモメにモメたが、長年の苦心の末にここまで協業を深化させることができたのに、それをむざむざ捨て去るという選択肢はお互いになかったに違いない。

我が身が一番大切ということは3社とも同じだ。が、Win-Winのスピリットでつながりを維持することができればグローバルにおけるメジャーの一角というポジションを失うことはないだろう。功罪相半ばするゴーン氏の功績だが、他社より一歩進んだ技術の共有化はプラスの置き土産と言える。そんな思いも抱いたテストドライブであった。

◆プラットフォームの刷新がモロに効いた乗り心地と快適性

タイヤは205/45R17サイズのコンチネンタル「コンチ エココンタクト6」。ハイパフォーマンスではないが、柔らかいグリップ力を持ついいタイヤだ。タイヤは205/45R17サイズのコンチネンタル「コンチ エココンタクト6」。ハイパフォーマンスではないが、柔らかいグリップ力を持ついいタイヤだ。

要素別にもう少し細かく見ていこう。CMF-Bプラットフォームを得た第5世代ルーテシアの動的質感は第4世代から長足の進化を遂げた。素晴らしかったのはボディシェルの剛性感の高さで、左右輪が別々に大きな入力を連続して受けるような国道新4号茨城~栃木区間をいいペースで走ってもステアリングコラムや左右ピラーのブルつきがまったく感じられない。結果、結構固めのサスペンションであるにもかかわらず路面のインフォメーションがスッキリとした形で伝わってくるし、振動の収まりも非常に良かった。

ハンドリングについては特性を云々できるほど山岳路を走っていないので高G領域については何とも言えないが、スキーの片足に荷重をかけているかのような直進感の良さ、カーブでハンドルを切ったときのサスペンションの沈みと横Gの高まりの相関性の高さ、S字スラロームにおけるリアサスのロールの収まりの良さなどは第4世代のGTに似たものがあった。このあたりはシャシーセッティングだけでなく、全高1470mmと現代のBセグメントとしては低めのルーフ高であることも寄与しているのかもしれない。いろは坂の下り線のようにそこから切り込んでいくようなターンが連続するような場面でも素直な操縦性に終始するのではないかと推察された。

前席。シートのタッチは剛性感の高い、大変欧州車的なものだった。前席。シートのタッチは剛性感の高い、大変欧州車的なものだった。

乗り心地、快適性はプラットフォームの刷新がモロに効いている部分だった。強固なボディシェルと固めだがよく動くサスペンションのコンビネーションにより、スポーティでありながら揺すられ感が少ない。装着タイヤは205/45R17サイズのコンチネンタル「エココンタクト6」。このタイヤはアタリが大変柔らかく、これを履いたモデルで悪い印象を抱いたことがないので、そのおかげもあろう。

ハーシュネスカットと共に進化が印象付けられたのはボディシェルの共振が減ったことによる騒音低減で、舗装面がざらついたところでもざわざわとした耳障りなホワイトノイズが増えない。最近はBセグメントでも静かなクルマが本当に増えたが、小さくなったノイズの中でどの成分をどう抑制するかによって体感的な静粛性の良し悪しに結構な差が出る。第5世代ルーテシアはその点バッチリだった。

◆動力性能以上に好印象なドライバビリティの向上

エンジンは1.33リットル直4ターボ。燃費性能、動力性能とも申し分なかった。エンジンは1.33リットル直4ターボ。燃費性能、動力性能とも申し分なかった。

第5世代ルーテシアのエンジンは「H5Ht」型1.33リットル直4DOHCターボ。第4世代の「H5Ft」に対してシリンダー内径72.2mmはそのままにストロークが73.1mmから81.4mmへと拡張され、136ccの排気量アップとなっている。このエンジンには複数のチューニングがあるが、7速DCT(デュアルクラッチ変速機)と組み合わされる日本仕様のスペックは最高出力96kW(131ps)/5000rpm、最大トルク240Nm(24.5kgm)/1600rpm。

まずは運動性能だが、エンジン自体のスペックアップと変速機の6→7段化の相乗効果で、第4世代に対して加速タイム、ドライバビリティとも大幅に向上した。GPSを用いた実測度ベースの0-100km/h(メーター読み104km/h)加速タイムは8.5秒。空載パワーウェイトレシオ9.16kg/psのAT車としてはなかなか立派なスコアだった。

絶対的な動力性能以上に好印象だったのはドライバビリティの向上で、旧型のH5Ftに対して低中速域のゆとりは圧倒的。市街地でも1000rpm台半ばでぐいぐい加速するため変速の段付きやエンジンノイズの高まりは最小限だった。

DCTは旧型の乾式クラッチ6速から湿式クラッチ7速に変更。変速プログラムは基本的に大変適切で、いったん高い段にシフトされると少々のことではシフトダウンせず、エンジンの低回転トルクをしっかり使って走るという印象だった。ただし弱点もある。ウェット路面で段差を乗り越えつつ発進、低ミュー路での発進などはクラッチミートが若干ヘタクソでホイールスピンが頻発する傾向があった。ブレーキホールド機能との協調制御をもう少し煮詰めていただきたいところだ。

◆リッター20km以上!燃費のよさに驚いた

日光にある喫茶店、いちごの里カフェへ。日光にある喫茶店、いちごの里カフェへ。

燃費は驚くほどいい。満タンto満タンの燃費計測区間は656.4kmだったが、その間無給油でなお何目盛りも燃料が残っている状態。満タン法による実測燃費は20.2km/リットル。オンボード燃費計値は4.9リットル/100km(20.4km/リットル)と実測値とほぼ一致。燃費計測区間のうち3割ほどは横浜~埼玉の混雑した市街地、郊外&高速走行も2名乗車の区間が多かっただけに5リットル/100km(20km/リットル)アンダーは予想外の好スコアだった。

燃費が伸びた要因はまず市街地走行を燃費計値6リットル/100km(16.7km/リットル)強と、最低限の燃費低下で乗り切れたこと。ここで燃料消費がかさむと郊外路でどれだけ燃費が良くても平均燃費は落ちる。渋滞していた序盤こそ7リットル/100kmに達するシーンがあったが、ちょっと前が空くとスルスルと燃費が向上していくという感じで上記の数値に落ち着いた。

郊外および高速での燃費は鉄板の良さ。燃費計値をリセットせずに走ったが、瞬間燃費計は郊外一般道では速い流れに乗っても3リットル/100km前後をうろうろ。高速でもせいぜい4リットル/100km前後を推移するという感じで、燃費が面白いように上がっていく。最後の埼玉~横浜間の一般道走行ではふたたび燃費に厳しい環境に直面したが、こうなったら通算5リットル/100kmアンダーに挑んでやろうとエコランを頑張った。

郊外では全般的に流れが良かったとはいえ、高速道路のバリアでの動力性能計測、標高700m台の日光清滝への駆け上がりなどがあったことを思うと、その郊外・高速区間を推定リッター23~24kmで走れたのは御の字。筆者はよく東京~鹿児島ツーリングを行うが、このくらいの燃費性能があれば燃料代がもったいなくないかなと思える水準だった。

◆荷室はびっくりの広さ、スペックだけではわからない使い勝手

コクピット。マテリアルの質感は旧型から大幅に上がった。コクピット。マテリアルの質感は旧型から大幅に上がった。

ルーテシアは全高が1400mm台と、今どきのBセグメントとしては比較的背の低いモデルだが、室内は十分に4座として使えるだけの広さを有していた。ホイールベースが第4世代の2600mmから2585mmへと若干短くなっているにもかかわらず、後席の膝元空間は第5世代のほうがずっと広い。つくづくクルマというものはスペックだけではわからないものだ。

室内のクオリティはデザイン、マテリアルとも大幅に質感がアップした。第4世代が欧州デビューを果たしたのは2012年だが、電子インパネやカーコミュニケーションシステム等々、インテリアデザインに大革新のトレンドが押し寄せたのはその直後。そのぶん余計にアップデート幅が大きく感じられた。

インパネはフル液晶で、運転支援システムモード、スポーツモード、エコモード等々、複数パターンの表示が可能。センタークラスタにはApple CarPlay、Google AndroidAuto両対応のディスプレイオーディオが装備されており、ナビ専用機がどうしても欲しいというのでなければ吊るしの価格でナビが使えるのは嬉しいところだろう。

夜間は室内のイルミネーションがなかなか綺麗だ。もともとインテリアイルミネーションはアメリカ人が好んでいたもので、日本でも昭和時代からトヨタ『クラウン』、日産『セドリック』/『グロリア』など室内に間接照明を持つクルマが結構あった。当時は欧州メーカーはそういう光の演出にはまったく興味関心がないという姿勢だったが、ここ5年ほどだろうか、猫も杓子もインテリアイルミネーションという波が来ている。今までお楽しみを知らなかっただけだったのかと、ちょっと笑うところである。もっとも、LED調光技術が発達した現代の製品だけあって、イルミネーションのカラーの七変化はなかなか面白い。デートドライブでちょっといい雰囲気を作る一助くらいには十分なりそうだった。

ラゲッジルームは広さ十分。奥行きは大したことはないが縦方向の余裕はかなりのもの。ラゲッジルームは広さ十分。奥行きは大したことはないが縦方向の余裕はかなりのもの。

荷室はびっくりの広さである。筆者は2014年に第4世代クリオのステーションワゴン、エステートでオーストリア、スロヴァキア、ハンガリーを巡る旅を行い、本サイトでレポートをお届けしたことがあるが、そのエステートに対して奥行きは劣るものの容量自体は大して変わらないのではないかと思ったが、事後に調べてみると容量は奇しくも両者、391リットルとのことだった。

第4世代ハッチバックの300リットルをはじめ並みいるライバルを寄せつけない数値で、Bセグメントの低車高ハッチバックで第5世代ルーテシアより広いのは筆者が知る限りホンダ『フィット』のガソリンFWD(前輪駆動)車の427リットルくらいだ。今回は大荷物を積んで移動するような旅ではなかったが、ちょっとしたリゾートユースなどは楽勝であろう。

◆第5世代ルーテシア最大の弱点はヘッドライト?

照射範囲を外れたところへの光の拡散がなく、ロービームで闇夜を走るのは少々恐い。ハイビームは問題なし。照射範囲を外れたところへの光の拡散がなく、ロービームで闇夜を走るのは少々恐い。ハイビームは問題なし。

第4世代にはなかった先進運転支援システムも標準で付く。ステアリング介入あり、日産で言えば「プロパイロット」相当のシステムが付くのはハイブリッドの「E-TECH」のみで、ガソリン車は前者追従クルーズコントロール+各種警報だが、これでもないよりはずっといい。クルーズコントロールの性能そのものも悪くなかった。

安全面で気になったのはハイテク装備ではなくヘッドランプ。ハイビーム照射は問題ないのだがロービームは配光特性が良くない。照らされている部分はくっきり照らされるのだが、そこからちょっと外れるとスッパリと光が途切れてうっすらとも照らされず真っ暗という感じで、夜間に照明のない地方道を走るのは少々恐い。欧州メーカーはそこをしっかり作り込むのが常と思っていただけに意外な取りこぼしポイント。クルマとして大変まとまりの良い第5世代ルーテシアの中で、ここが最大の弱点であるようにも思えた。

◆まとめ

ルノー ルーテシア1.3TCe インテンスのリアビュー。ルノー ルーテシア1.3TCe インテンスのリアビュー。

第5世代ルーテシアはハードウェア的には第4世代をほぼすべての面で完全凌駕する完成度であった。明確に弱かった点はスロットル開度が大きめの発進時のクラッチミートとヘッドランプくらいのものである。走り、快適性、そして郊外路ではハイブリッドカーと大して変わらない経済性など、商品力は試乗前の予想を大きく超えるものがあった。

惜しむらくはエクステリアデザインが第4世代に比べていささか薄味になったことだが、実用車でありながらスペシャリティカー的な要素も併せ持つという第4世代の資質はちゃんと継承されているので、薄味に目をつぶれば全長4m級の小型車を欲する向きにはとても良い選択肢になり得る。

現在ルーテシアのラインナップにはストロングハイブリッドのE-TECHもある。あくまで燃費を重視する場合や都市走行がメインという場合はそちらが主候補になるだろう。が、地方在住でゴー&ストップの多い市街路を走る比率が低めのユーザーの場合、郊外路では一昔前のストロングハイブリッド並みに燃費がいい今回の1.3TCeもなかなか合うのではないかと思った。ルノー車も昨今の円安・資源高の影響で値上げが相次いだが、それでもインテンスは価格が税込み286万円と比較的買いやすい水準にとどまっているので、狙い目といえる。

ライバルは欧州Bセグメントハッチバック全般。最も競合しそうなのは同じフランスのプジョー『208』とドイツのフォルクスワーゲン『ポロ』。すでにモデル末期だがゆるキャラが魅力的なシトロエン『C3』も比較対象になるだろう。それらのライバルと比べてルーテシアが明確にアドバンテージを持つのはエンジンパワー。半面、純エンジンモデルの場合は208、ポロに対してステアリング介入型ADAS(先進運転支援システム)を欠くことがディスアドバンテージとなる。

日本車ではキャラが被るモデルが少ないが、走りと実用性の両立を考えるとホンダ『フィットRS』、トヨタ『アクアGRスポーツ』、日産『ノートオーラNISMO』といったところか。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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