製品、戦略、開発力、インフラなどさまざまな視点からEVのこれからについて、モータージャーナリストの岡崎五朗氏が語るインタビュー連載企画「EV新時代到来」。
今年5月に発表されたばかりの軽EV、日産『サクラ』と三菱『eKクロスEV』の受注台数が想定を超えた大ヒットとなっている。さらに、7月には中国のEV大手のBYDが日本市場への参入を発表するなど、国内のEV市場は活発化している。そこで今回は、国内メーカーが持つ注目の電動化技術と各国のEVに関わる動向の変化をテーマに議論した。
◆日本メーカーがCO2排出を減らした背景にあるのはハイブリッドと軽自動車
岡崎五朗氏(以下、敬称略):軽もハイブリッドも、実際にCO2を先進国のなかでもっとも減らしているのは日本メーカーです。過去20年間で日本は23%のCO2排出を減らしています。ドイツは3%増えて、アメリカも9%増えています。
---:もともと排出量が低かったにも関わらず、努力して減らしたのに、そこが全く評価されていないのがもどかしいですね。
岡崎:そうです。他の国が減らせていなくて、日本だけがダントツに減らせているのは、日本のやり方が正しかったということです。具体的に言うと、ハイブリッドが増えたことと軽自動車が増えたこと、この二つです。本来なら成功事例として胸を張るべきなんですが、なぜか日本のメディアはドイツに学んでEVをもっと増やせ、日本は遅れていると騒ぎ立てる。理解に苦しみますね。
たしかに、テスラは世界でもっとも多くのEVを生産していますし、ドイツメーカーも積極的にEV開発をしています。しかし彼らがやっているのは、電気だったら使い放題、大きなバッテリーを積んで速く走るというクルマがメインです。でもそれは本当にエコなbのでしょうか?このように、電気だったらいくら使っても文句ないだろうという他国のやり方には違和感を覚えます。
◆各社メーカーの注目の電動化技術
---:次のトピックは、電動四駆についてです。各社が技術力をアピールしていますね。
岡崎:電動四駆で、駆動力を今まで以上にきめ細かくコントロールすることによって走りを良くしますよというのは、雪の上で走ってもサーキットで走っても実際そうで、昔とはレベルが違う制御技術なんですけども、それがユーザーレベルでイノベーションかと言うと、僕は実はそう思っていません。
例えば雪国の人には、今までの車よりも運転しやすい、安心だと思ってもらえると思いますし、軽の生活四駆でも、その結果安全性が増して事故が減ることはとてもいいことだと思うんですけども、皆がテストドライバーじゃないし、そこが売りになるのかというと、実はそんなこともないのかなと思っています。