【トヨタ クラウン 新型】ドラレコにADAS用カメラ活用、普及のきっかけになる?

16代目「クラウン」に搭載されたトヨタ・セーフティセンス用単眼カメラ。天候に左右されないよう周囲には熱線が組み込まれている
  • 16代目「クラウン」に搭載されたトヨタ・セーフティセンス用単眼カメラ。天候に左右されないよう周囲には熱線が組み込まれている
  • 手動r録画を画面上から操作するときは中央のアイコンにタッチする
  • トランクリッドに組み込まれたバックカメラ(右)と電子ミラー用カメラ。中央には汚れを洗浄するウォッシャーが備わる
  • ドライブレコーダーの録画スイッチ一覧
  • 2019年の東京モーターショーでデンソーテンが参考出展した「観光ルート動画生成システム」
  • 16代目のクラウンは4車型を持つ多彩な展開となる
  • クラウン初のSUVとしてデビューした「クロスオーバー」
  • クラウン初のSUVとしてデビューした「クロスオーバー」

7月15日に登場した16代目トヨタ『クラウン』に新たに採用されたのがドライブレコーダー機能だ。注目はそのカメラにトヨタ・セーフティセンスで活用するADAS用カメラをドライブレコーダーにそのまま利用したこと。そのドライブレコーダーの詳細をお伝えする。

◆ドライブレコーダーには肖像権に対する課題があった

個人的には、以前から「ADAS用カメラをドライブレコーダーに活用できないものか?」と考えていた。ドライブレコーダーを後付けすると、電源を別に取らなければならないし、その配線が目立って取り付けた状態は決してスマートではないと思っていたからだ。

そんな思いもあって、各自動車メーカーのADAS担当者にこの話をぶつけると、各社が口を揃えて課題として回答したのは『肖像権』の問題だった。

ご存知のように、ドライブレコーダーは走行中の映像を常に記録するのが役割だ。そのため、ドライブレコーダーには周辺のありとあらゆる映像を片っ端から撮影していく。それだけにその中にはプライベートな映像が含まれている可能性は充分ある。問題はこの映像がSNSなどに無許可でアップされた場合だ。それは撮影された側にとっては不愉快どころか、状況次第では大きな問題になることだって可能性としてはあるわけだ。

こうした時に、映像をアップしたのはユーザーだが、それができる環境を提供したのはドライブレコーダー機能を搭載した自動車メーカーとなる。それ自体が訴訟の対象にはならないか。しかも、この肖像権絡みで今でもドライブレコーダーを禁止している国も実際に存在する。先のADAS担当者が心配するのはこの部分なのだ。

ただ、そうは言いながらもADAS担当者は「世の中ではドライブレコーダーが認知され、あおり運転対策として推奨される風潮があるのは確か。肖像権への配慮とのバランスでどうすべきかメーカーとしても悩んでいるところ」と話し、「どこかが露払い的にADASカメラを活用したドライブレコーダー機能を装着してくれると心強いんですが……」と本音も語っていた。

◆ADAS用をフロント用に、電子ミラー用をリア用として使用

そんな中で登場したのが16代目クラウンだ。そこには私が以前から期待していたADAS用カメラを活用したドライブレコーダーが搭載されていた。ADAS用カメラはシングルで、ここで捉えた映像をフロント用ドライブレコーダーとして活用し、リアの記録にはトランクリッドに装着した電子ミラー用カメラで対応している。これで前後2カメラのドライブレコーダーとしての記録を実現したわけだ。

この装備に至る経緯を担当者に聞くと「『ハリアー』で録画機能付き電子ミラーとして出したところ、この評判がとても良かった。これならドライブレコーダーとして搭載できるのではないかと考えた」と話す。ライン装着されたこともあり、配線の露出などは一切なく、見事なまでにキレイに収まっている。後付けのドライブレコーダーとはこの辺りが大きく違う。この状態を見て「欲しかったのはこれ!」そう実感したのも確かだ。

ドライブレコーダーとしては特に秀でた印象はないものの、一通りの機能は備えられている。記録される映像はフロント/リア共に1920×1080pのフルHD仕様で、フロントはフレームレートが10fpsで、リアは30fpsとなっている。フロント映像はカクカクとした動画になりそうだが、それだけにLED信号の取りこぼしはなさそうだ。

常時録画の録画時間は約100分で、一般的なドライブレコーダーと同様にメモリ領域がなくなると古いファイルから順に上書きされていく。また、一定以上の衝撃を検知したときはイベント録画として保存される。記録時間はそれを境に前後10秒間の計20秒間で、それは上書きされないフォルダに自動保存。また、手動録画した場合も前後10秒間を記録し、両方合わせて最大10ファイルまで保存でき、それ以降は上書きされる可能性があるということだ。

◆ドライブレコーダーの手動記録を音声コマンドで対応

駐車中の記録にも対応した。ただし、衝撃を受けたときに録画を自動スタートさせるため、衝撃の瞬間は捉えられない。また、この機能の作動時間はパワースイッチをOFFにしてから約12時間でまでで、次のパワーONまでの最大3回が駐車時イベントとして検知できるそうだ。なお、このイベント録画は駐車時イベント録画として別枠で10ファイルまで保存できるという。

録画した映像は車内のディスプレイ上で再生できる。担当者によれば「録画した映像はUSBメモリやWi-Fiを使って外部に取り出せるが、その場合の肖像権や著作権についての課題は特に意識はしなかった。しかし、利用規約があるので、その範囲内で使ってもらうことになる」と話した。撮影した映像の肖像権や著作権に関しては、映像の使用範囲もあくまで個人的な範囲での使用にとどめて欲しいということだ。また、この仕様を海外に展開するかどうかは現時点では未定だという。

使い勝手で特筆すべきは音声での録画に対応したことだ。撮りたいシーンに遭遇したときは「ドライブレコーダーで録画して」と音声で発すれば手動録画として記録保存してくれる。ディスプレイ上のアイコンをタッチすることでも録画はできるが、操作は3タッチとなるため、音声で機能させた方が使いやすいはずだ。これらはまさにライン装着したことで実現できた機能と言っていいだろう。

◆通信機能によってドラレコの肖像権問題もクリアできる?

一方で、新型クラウンにはテレマティクス用として通信機能が標準で搭載されているにもかかわらず、ドライブレコーダーはそれに対応していない。通信機能を活かせれば、アクシデントに遭遇して冷静でいられなくなっても、自動的に動画映像をサーバーや指定先へ自動送信したりできる。これによって、万一、車体が火災などで焼失してしまっても映像は残る。駐車監視にしても、衝撃を検知したときは即座にスマホなどでその状況を把握することが可能となるのだ。

また、あくまで可能性としてだが、通信によって肖像権に対する課題もクリアとすることができるかもしれない。古い話で恐縮だが、2019年の東京モーターショーでデンソーテンは、観光案内に活用する通信型ドライブレコーダーを参考出品していた。ここではタクシーが撮影した観光地のリアルタイムの映像を送信しつつ、同時に映り込んでいる人物が特定できないよう画像処理していた。これを活かせば、ドライブレコーダーの肖像権問題も解決できるかもしれない。このように通信機能を活かせば様々な拡張性が期待できるのだ。

とはいえ、新型クラウンでは今までどこも実現して来なかったADAS用カメラのドライブレコーダーへの活用を実現した。ここは大いに評価したいところだ。これはまさに前出のADAS担当者が話していた“露払い”になる可能性は充分にあるだろう。今や販売される乗用車のほぼすべてにADAS用カメラが搭載される時代。これをきっかけにドライブレコーダーの標準装着が一気に進むことになるのかもしれない。


《会田肇》

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