【ヤマハ トレーサー9 GT 試乗】欲張りすぎ!? 誰もが認める圧倒的実力…青木タカオ

オールマイティに使えるマルチマシン

3発エンジンのトルク感は音が決め手!

装備麺も充実で走りが快適

荷物満載も夜間走行も不安なし!

ヤマハ トレーサー9 GT
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オールマイティに使えるマルチマシン

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市街地メインの普段乗りはもちろん、休日のツーリングでスポーティかつ快適。多用途に使える3点ラゲッジボックスまで備わったから、これ1台あればなんでもこなせてしまう。ヤマハ『トレーサー9 GT』は欲張りすぎやしないか。

単なる移動手段ではなく、移動そのものが楽しいバイク。コロナ禍で感染防止策のひとつ“3密”回避にもつながると人気を呼んでいるが、トレーサー9 GTならどこへでも、いつまでも出かけたくなり、走ること自体が楽しみとなる。

つまり、目的地などどこだっていい。雨が降ってこようが、気温が下がろうとも、1日中バイクに乗っていたいのだ。

3発エンジンのトルク感は音が決め手!

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縦・横・捩り剛性のバランスを最適化した新設計CFアルミダイキャスト製フレームは、高剛性と軽量化を両立したもので、アルミパネルを溶接したボックス構造のロングスイングアームとの組み合わせによって、高い直進安定性と旋回時の優れたトラクションを獲得している。

エンジンは『MT-09』譲りの888cc並列3気筒で、最高出力120ps/10,000rpm、最大トルク93Nm/7000rpmと申し分のないスペック。発進時からリヤの駆動力と迫力ある排気音が同調して、車体を押し出す力強さは強烈なほど。

常用回転域となる5000rpmまではトルク感を加速と排気音の両方で感じ、さらに高回転へ回していけば吸気音と伸びやかなパワーフィールが全身に伝わってくるから気持ちがいい。

ヤマハ トレーサー9 GTヤマハ トレーサー9 GT

さすがはトルク自慢のMT-09の心臓部で、低中回転域ではツインのレスポンスの鋭さ、高回転域ではマルチエンジンの湧き上がるパワー感が味わえ、3気筒ならではの表情が堪能できる。

五感を刺激するトルクフィールは、サウンドの心地良さや迫力も大きく影響していて、路面から反射した音を聴くために、意味もなくブリッピングしてしまうこともあるほど官能的でさえある。聴覚からの刺激が、エンジンのトルクフルさをより増強しているのだ。

アシスト&スリッパークラッチでレバー操作荷重を軽減し、減速時の車体挙動を緩和。最新の6軸IMUも搭載し、バンク角も反映する新型トラクションコントロール、スライドコントロール、前輪浮き上がり傾向時に介入するリフトコントロールといった電子制御も充実した。

装備麺も充実で走りが快適

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強烈な加速に身体が遅れないよう、太ももからくるぶしにかけてのフィット感に優れ、ニーグリップが自然にできてマシンとの一体感があるのも見逃せない。

ゆったりとしたアップライトな乗車姿勢で、長い時間も疲れ知らず。大型フロントスクリーンやハンドガードに上半身が守られ、下半身も張り出したタンクカバーやシュラウド、サイドカウルのおかげで風が当たらない。ウインドスクリーンはレバー操作によって、5mm単位で10段階の高さ調整も可能としている。

クルーズコントロールは4速およそ50km/h以上の走行時にセットでき、スイッチのワンプッシュ操作で2km/h刻みのスピード調整もできる。さらにアップ&ダウン両対応のクイックシフターも追加装備され、ロングライドの疲労を軽減した。

冬季に欠かせないグリップウォーマーは暖かさを伝わりやすく新設計され、ホイールスイッチでの10段階調整式。別売のヒートシートも同様に、スイッチ操作で細かく温度調節ができる。

ヤマハ トレーサー9 GTヤマハ トレーサー9 GT

またセパレートシートも新作で、シート高を810mmと825mmの2段階に調整可能とした。先代のトレーサー900はシート高850mmであったから、最大40mm低く設定。ステップやハンドルも位置を選択でき、好みや体格に合わせている。

ウインドスクリーンの内側には3.5インチのフルカラーTFTメーターがダブル装備され、左に色が変化するデジタルバー式のタコメーターや速度、ギアポジションなどをディスプレイ。右画面では、燃料、水温、外気温、トリップメーターなど各情報から4種を選び、拡大表示ができる。

KYB製の電子制御サスペンション『KADS』を新たに採用していることも大きなトピックスで、走行中に減衰レベルを自動調整し、バイクが路面に引き付けられているかのようにタイヤの接地感が抜けない、違和感のない自然な乗り味を実現。「スポーツ」と「コンフォート」、2つのモードが選べる。

荷物満載も夜間走行も不安なし!

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レインウェアはもちろん、キャンプ道具やお土産など積載力はバイクだって高いほどに嬉しい。トレーサー9 GTは左右のサイドケースだけでなく、トップケースも同時に備える3ケース構造で、メインフレームやリアフレーム、リアアームなども設計段階から最適化。取付けステーにサイドケースの振動を減衰するダンパーを内蔵し、高速走行や旋回時のライディングを妨げない。

そしてIMUの高速演算処理によりバンク角を検出し、イン側のコーナリングランプを点灯させる。夜間も走行したが、車体を寝かせていくにつれてリニアに明るくなり、照射エリアが広がることで安心感を高めてくれる。先進技術が満載で、なんと頼もしいことか。

卓越したパフォーマンスを持ちながら、あらゆるシーンで楽しめるマルチパーパス性。1000ccを超えない適度なサイズ感に充分すぎるパワー、そして官能的ですらあるトリプルエンジン。冒頭で述べたが、トレーサー9 GTは欲張りすぎるのだ。それでいながら車両価格は145万2000円と、もはやリーズナブル。お買い得感タップリである。

青木タカオ氏とヤマハ トレーサー9 GT青木タカオ氏とヤマハ トレーサー9 GT

■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
コンフォート:★★★★★
足着き:★★★
オススメ度:★★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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