中国メーカーが独自開発した400cc並列4気筒のフルカウルスーパースポーツ? 冗談だろ。正直に言うと、試乗するまでは半信半疑だった。
【詳細画像】400cc 4気筒エンジンを搭載するQJモーター SRK400R
クラッチをつなぎ、アクセルを少し開ける。すると低回転から驚くほどリニアに車体が前へ出る。6000rpmを超えた瞬間、フルフェイスの中へ吸気音が響き渡り、そのまま一気に1万4000rpmまで駆け上がる。
思わず頬が緩む。
「もっと回したい!」
そう思わせる高揚感は、日本メーカーが長年磨き続けてきた400cc並列4気筒そのものだった。
◆日本メーカーにガチンコ勝負を挑んできた
中国製という先入観を覆すシャープな走りを見せるQJモーターSRK400Rフルフェイスのヘルメット越しに聴こえるサウンドは、かなり迫力がある。社外品がオプションとして設定されているのか? そんなふうにも思えるほどに、音が気持ちい。
しかし外から聞くと、排気音は意外なほど静かだという。後ろを走る同行ライダーに聞くと、「そんなに大きい音じゃないですよ」という返事。じゃあ、この気持ちいい音は何なんだ?
理由を探ると、カウル内で巧みに演出された吸気音がかなり効いている。乗り手だけを気持ちよくさせるサウンドチューニングであり、開発・設計の技術力の高さに感心するばかりだ。中国メーカーに対する先入観が、こうして少しずつ崩れ去っていく。
QJモーター SRK400R
このバイクの名は、QJモーター『SRK400RS』。2025年春の東京モーターサイクルショーで日本初公開されるや否や、大きな話題を呼んだ。
理由はひとつ。中国メーカーが独自開発した399cc並列4気筒エンジンを積んできたからだ。350ccでも500ccでもない。日本の普通二輪免許で乗れる上限である400ccであることの意味は大きい。
しかも、日本メーカーが半世紀近く磨き続けてきた並列4気筒DOHC4バルブ・ショートストロークエンジンの技術が詰め込まれている。まさに日本のお家芸へ、真正面から挑んできたのだ。
◆400cc 4気筒は、いまもっとも熱いカテゴリーへ!
QJモーターが独自開発した並列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載そして今、ホンダ『CB400 SUPER FOUR』が、新型となって復活し、さらにフルカウルモデル『CBR400R FOUR』も9月18日に新発売される。(どちらもEクラッチを標準装備し、車名に名乗る)400cc 4気筒市場が、一気に活気づいているのだ。
かつて「ヨンヒャク4気筒」といえば、日本メーカーの専売特許のような存在だった。ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4メーカーが、それぞれ個性ある400cc 4気筒を世に送り出してきたことは、ベテランライダーには説明するまでもないだろう。
しかし、環境規制の厳格化と開発コストの高騰により、その世界は急速に縮小。最後の砦だったCB400 SUPER FOURも2022年、生産終了となった。
その流れを変えたのが2023年のカワサキ『Ninja ZX-4R』シリーズだった。そして、そこへQJモーターが日本へ上陸したのである。
カワサキ Ninja ZX-4RR
ホンダ CBR400R FOUR E-Clutchスペックを見ても、その本気度は一目瞭然だ。
SRK400RSは399cc水冷並列4気筒エンジンを搭載し、最高出力77.6ps/14,000rpm、最大トルク39Nm/13,200rpmを発生。ライバルとなるカワサキ Ninja ZX-4RRは77ps/14,500rpm(ラムエア加圧時80PS)、39Nm/13,000rpmと、数値上はほぼ互角だ。
一方、新型CBR400R FOURは58ps/11,500rpm、38Nm/9,750rpm。ホンダはスペックにこだわっていないことがわかる。
車重にも注目したい。SRK400RSは176kgと、Ninja ZX-4RRの189kg、CBR400R FOURの187kgを大きく下回る。
スチール製メインフレームとアルミ製リヤセクションを組み合わせたハイブリッド構造を採用し、パワーウエイトレシオでもZX-4RRを上回る。実際に今回の試乗では、コーナー新入時にヒラリと軽快に車体を寝かし込め、軽さがそのまま運動性能につながっていることを実感した。
◆欧州テイストをまとったスタイリング
フロントカウルにはラムエアダクトを配置し、吸入した走行風をエアクリーナーボックスへ導く「ついにここまで来たか」
そう思わずにはいられない。実車を目の前にすると、まず圧倒されるのは、クラスを超えた凝ったスタイリングだ。
大型ウイングレットを備えたフロントマスク、エッジを効かせたシャープなカウル、縦型テールランプ。どこにも“安い中国車”という雰囲気はない。
それもそのはず。じつはデザインを担当したのは、MVアグスタで数々の名車を手掛けたエイドリアン・モートンとサンマリノのデザインスタジオである。どことなく、イタリアンムードが漂うのも納得がいく。
ライディングポジションは過激ではない。スポーツ性と扱いやすさを高いレベルで両立している。セパレートハンドルはトップブリッジ下にマウントされているが、前傾姿勢は見た目ほどきつくない。
シート高は795mm、足つき性に優れるQJモーター SRK400R自然に上体を預けられ、街乗りからツーリングまで無理なくこなせそうなライディングポジションに仕上げられている。
下半身は自然に収まり、車体との一体感も得やすい。足元はスリムに絞り込まれており、足着き性も申し分ない。身長176cmの筆者であれば、両足の足裏がベッタリと接地するほど足着き性は良好だ。
そして、注目度が非常に高い。パーキングスペースへ停めるたび、「何だ、このバイク?」という視線が集まる。
それもそのはず。QJモータージャパンの担当者によれば、この車両は日本でナンバー登録された記念すべき第1号車。まだ誰も走る姿を見たことがないのだ。
◆期待以上だったエンジンフィール
QJモーター SRK400Rクラッチミートして、最初に感じるのは低速域の扱いやすさだ。昔のアンダー400cc 4気筒といえば、パワーバンドに入った途端、一気にパワーが盛り上がるピーキーな特性を持つことも珍しくはなかった。
きっと中国製。前時代的で、トルクカーブに谷間のあるものと決めつけていたが、SRK400RSは違う。スロットル操作に対する反応がリニアで、右手の動きに忠実に車体が前へ出る。
ギクシャク感は皆無。それでいて高回転では400cc 4気筒らしい伸び上がりが待っている。6000rpmを超えた瞬間から一気に高揚感が増し、ショートストローク設計らしく軽やかに吹け上がる。
ブレンボのラジアルマウントキャリパーなど、装備内容も充実足まわりも抜かりはない。前後にはマルゾッキ製サスペンションを採用し、倒立フロントフォークは右側でリバウンド、左側でコンプレッションを調整できるフルアジャスタブル仕様。初期作動はしなやかで、ストローク奥ではしっかりと踏ん張るため、市街地では快適な乗り心地を、スポーツライディングでは高い接地感をもたらしてくれる。
さらに驚かされたのが、ブレーキの秀逸なタッチとストッピングパワーだ。フロントにはブレンボ製ラジアルマウントキャリパーとセミラジアルマスターシリンダーを装備。握り込んだ分だけリニアに制動力が立ち上がり、コントロール性も申し分ない。価格帯を考えれば、かなり贅沢な構成と言える。
電子制御も充実している。自動調光機能付きTFTディスプレイに加え、トラクションコントロールを標準装備。さらに、レースシーンで使われるローンチコントロールまで搭載するなど、装備内容はライバルに引けを取らない。
7インチカラーTFTディスプレイはライディングモードをはじめ、各種電子制御を画面上で設定できる◆単なる「安い中国車」ではない
公道ではその真価を試す機会はなかったものの、担当者によればIMUとTCSを連携させた高度な制御システムを採用しており、「ぜひサーキットでも走らせてほしい」と胸を張る。
これだけの内容を盛り込みながら、QJモーターSRK400Rの価格は104万8000円。Ninja ZX-4RRの121万円、CBR400R FOURの119万9000円を明確に意識した戦略的なプライスだ。
単なる「安い中国車」ではない。性能、装備、価格、そのすべてで真正面から勝負を挑んできたのである。
気が付けば、400cc 4気筒市場は再び熱を帯び始めた。ホンダ、カワサキに加え、中国メーカーのQJモーターまで参戦した今、あとはヤマハとスズキの動向が気になるところだ。
大型ウイングレットを備えたフロントマスクには、イタリアンスポーツを思わせる洗練されたセンスが息づいている青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。










