【アウディ A3スポーツバック&セダン 新型試乗】プレミアム・ハッチバックの雄の変化とは?…南陽一浩

今回のフルモデルチェンジはじつに8年ぶり、97年の初代から数えて4世代目で、これまでに世界で500万台以上が販売されたという。なるほど、およそ半世紀前に『ゴルフ』が先鞭をつけた欧州Cセグメントのハッチバックというジャンルは、セダンよりカジュアルで経済的なボディ型式と見られてきたが、ここ20数年で「プレミアム領域」に引き上げたのは、確かにアウディの功績だ。

より正確には、『A3』に先んじる『S2』こそがアウディ的なプレミアム・ハッチバックの先駆だと思うが、いずれ先進的なデザインとテクノロジーに秀でた歴代「A3スポーツバック」の成功なかりせば、メルセデス『Aクラス』の背は高いままだったかもしれないし、BMW『1シリーズ』はFR一本鎗で突き進んでいたかもしれない。それだけエポックメイキングなモデルの最新版であることを意識しつつ、実車に向き合うと思わぬ発見が多々あった。

今回試乗したのはA3セダンとA3スポーツバックの2台で、いずれも「ファースト・エディション」、直3ターボ1リットルに7速Sトロニックが組み合わされたFF仕様。とくに後者は同時に日本に上陸したゴルフ8の1リットル MHEV版とMQBプラットフォームやパワートレインなどを共有するハッチバックだ。ゴルフ8と違ってA3ファミリーには1.5リットルは用意されず、『S3』以外の直4ターボ2リットルのクワトロ仕様は今秋頃の導入予定という。

アウディらしさは、デザインに表れている

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A3スポーツバックの外寸は全長4345×全幅1815×全高1450mmで、ゴルフ8よりも全長が50mm長く、全幅は25mm広い。ルーフレールがあるにも関わらずゴルフ8の全高1475mmに対しA3スポーツバックは1450mmと低い。ルーフレール無しのSライン仕様なら1435mmとさらに低い。ちなみに全長4495mmのセダンも含め、ホイールベースは2635mmは共通で、これまたゴルフ8より15mmほど長い。全体的にロー&ワイドかつ、足まわりのジオメトリーに加えてトランスミッションやMHEVの制御ごと異なるようで、カタログ燃費では市街地で僅かにA3がゴルフ8を上回るが、郊外モードや高速道路ではナロートレッドのゴルフ8が数%ほど優っている。

アウディらしさというか独自路線は、まずデザインに表れている。エクステリアでの大きな変化は、ボディサイドのキャラクターライン。先代までは山折りと谷折り、双方のエッジがピキピキに効き過ぎてディティールに凝り過ぎた嫌いもあったが、今次のA3ではセダンもスポーツバックも、山折りのエッジは効かせつつも谷折りは緩やかにフェンダーと繋がる処理で、ボディカラーのグラデーションをキレイに見せてくれる。そのグラデをよくよく見れば、アウディらしいブリスターフェンダーが浮き上がってくるような、控え目な演出がまた心憎い。

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アウディはモデルに関わらず、ボディカラー的には無難な白黒銀に人気が集まりがちだが、こうしたマルク・リヒテがチーフデザイナーに就いて以来の新しいデザインランゲージそしてエッジ処理は、広報車で提案されているようなカラフルな色味の方が楽しめるだろう。下取り価格は無論大事だが、とくにモノトーン好きでもなければ、好きでも自分らしくもないボディカラーをまとい続ける時間の方が、むしろ勿体ないのだ。

ファースト・エディションの外装はグレードでいうと「アドバンスト」に準じ、6角形のフロントグリルのフレームはクローム仕上げで、チンスポイラーと両サイドのエアレット、さらにリアバンパー下端がシルバー仕上げとなる。あと、いわゆる「流れるウインカー」とセット装着になるマトリクスLEDライトの「下まつ毛」部分が、アドバンストでは横方向だがSラインでは縦方向と、光り方が少々異なる。

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意外とコンサバにも感じられたインテリア

インテリアに目を移してみよう。アウディならではの水平基調のクリーンなデザインは健在で、3本スポークのステアリングの向こうには10.25インチのバーチャルコクピットこと液晶デジタルのメーターパネル、その左側にエアコン吹き出し口を挟んで、ダッシュボード中央には10.1インチのMMIタッチパネルが鎮座する。ゴルフ8よりタッチパネルが手元に近く、すぐ下のエアコンの操作系が物理的ボタンである点は、意外とコンサバにも感じられた。

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シフトレバーのシーケンシャルスライド+Pボタンという構成も同じくだが、ゴルフ8譲りというより『e-tron』など上位機種と共通のインターフェイスと解釈すべきか。ちなみに今回の試乗ではスポーツバックとセダンの双方とも、シートヒーター付きでブルーのラインが入ったパワーシート仕様だったが、新型のA3には再生ペットボトルを1座あたり40本用いた、そんなSDGsなトリムも用意される。

痛痒なく走らせる48V MHEVの力強いアシスト

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この日はA3セダン、A3スポーツバックの順に乗ったが、箱根路のアップダウンの多いルートでたった1リットルだというのに、セダンボディを痛痒なく走らせる48V MHEVの力強いアシストは、大したものだった。逆にいえばスポーツバックの方が軽快かと予想していたのだが、セダンの車重がわずか10kg増しの1330kgであるせいか、その軽快さが逆に際立って感じられた。とはいえドライバビリティや手応えはけっこう違う。

セダンの方は、ストロークを抑えつつもしなやかで、よくいえば落ち着いた印象、悪くいえば少し事務的でコンサバ。対してハッチバックは、ロール量が僅かながら増し、まろやかな接地感と芯の強いスタビリティが途切れずに伝わってくる。スポーティに走らせて楽しめるのは後者の方だが、前者の効率のいい仕事っぷりも捨てがたい。

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同じ225/40R18というサイズで、セダンがピレリ、スポーツバックがブリヂストンというタイヤの違いもあったものの、軽快で角のない乗り心地、それでいてステアリング操作に対して丹念に地面を捉えるような、アウディならではのロードホールディングは、両者に通底する。

じつをいって同じ1リットルのMHEVを積むゴルフ8より、高回転域でパワー感がカツカツになる気配がしなかったことが、最大のグッドサプライズだった。だが、あちらを走らせた時はもっと狭い峠で頻繁にバッテリー電力を吐き出さざるを得ない状況だったし、今回はより長いリズムで平均ペースも上がる道で、回生の効率も明らかに上だった分、結論は出しづらい。

いずれMHEVになっても、ゴルフより一層マイルドかつ、プレミアムとしてSDGsもしくはラグジュアリー・コンシャスに提案すべきことはしてきた、それが新しいA3スポーツバック&セダンの要諦であるし、その造り込みに迷いはない。あとはファースト・エディションでスポーツバックが453万円、セダンが472万円という価格でもって、元々のアウディ顧客だけでなく国産車からの乗り換えをどこまで獲得できるか? その辺りが新しいA3の成否の分かれ目となりそうだ。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

南陽一浩|モータージャーナリスト
1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

《南陽一浩》

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