【三菱 デリカD:5 1400km試乗】デビュー15年目でもオンリーワンであり続ける理由[後編]

2019年に大規模改良を受けた三菱自動車のラージクラスミニバン『デリカD:5』での1400kmツーリング。前編では概論、走りの性能などについて述べた。後編ではまず、パワートレインから入っていこうと思う。

8速AT化の恩恵

かつてはガソリンエンジンもラインナップされていたデリカD:5だが、改良を機にガソリン版は在庫限りでカタログから落ち、2.2リットルターボのディーゼル専用モデルとなった。そのエンジンだが、型式こそ「4N14」と変わらないものの、部品の多くが新造品。圧縮比を14.9:1から14.4:1に下げて燃焼を改善し、騒音・振動対策も強化した――というのが発表時の開発陣の主張であった。

実際に乗ってみたところ、まず動力性能については2トン弱のボディに出力145psという組み合わせゆえ驚くほど速いわけではないが、重量級ミニバンを気持ち良く走らせるだけの能力は持っていた。残念なことに0-100km/h加速タイムの計測に失敗してしまったが、感触的には予備ブーストなしで11秒を少し切り、発進直前に少しブーストをかけてやれば10秒アンダーを狙えるという印象である。高速道路における本線車道への流入などフル加速が要求されるシーンでも痛痒感はほとんどなかった。

最高出力145psの2.2リットルターボディーゼル。静粛性は改良前に比べて劇的に上がった。パワーは必要十分だが、177ps(135kW)くらいだともっとゴージャス感が出るのにと思ったのも事実。最高出力145psの2.2リットルターボディーゼル。静粛性は改良前に比べて劇的に上がった。パワーは必要十分だが、177ps(135kW)くらいだともっとゴージャス感が出るのにと思ったのも事実。
今回は山岳路も含めて険路と言えるほどの道は走っておらず、ノーマルルートでの印象に過ぎないが、急勾配区間での加速力は予想以上に強力で、山岳オフロードでも力感不足を覚える局面はあまりないのではないかという印象だった。エンジンパワーは限定的だが、ATが6速から8速へと多段化され、ローギア側の変速ステップが小刻みになったことも功を奏しているのだろう。

その8速ATだが、恩恵は多段化によって変速ステップが狭くなったことだけではない。改良前の6速ATはエンジン回転数が結構上がらないとパドルシフトを使ってもシフトアップを受け付けず、何となくもったいない走りにならざるを得なかったのだが、8速はそんなことはない。超低回転を使うもエンジンをぶん回すも思いのままで、ドライビングのフレキシビリティは格段に上がった感があった。

デリカD:5の燃費性能は

三菱 デリカD:5 アーバンギア。岩手・閉伊川流域にて。三菱 デリカD:5 アーバンギア。岩手・閉伊川流域にて。
燃費は走行シチュエーション別に測ったわけではないが、平均燃費計の推移を観察したかぎり、市街地、郊外路、高速、山岳路のすべてで改良前モデルに対して明確なアドバンテージを示した。満タン法による実測燃費は東京出発後、FWD(前輪駆動)にて東北自動車道と国道4号線を通って盛岡に達した573.7km区間が給油量35.80リットルで16.0km/リットル、そこからAWD(4輪駆動)モードにて三陸経由で東京に帰った758.5km区間が給油量46.39リットルで16.4km/リットル。平均燃費計値はおおむね3%過大表示と、誤差は十分妥当な範囲内に収まっていた。

改良前と最も大きな差があったのは市街地燃費。アイドルストップが装備されたことで渋滞への耐性が大幅に上がった。クルマを引き取ってから筆者の自宅までの20km弱走ったときは都心が大渋滞で平均車速が14km/hしか出なかったくらいのノロノロ、ゴーストップの嵐であったが、それでも平均燃費計値は10.5km/リットルを示した。2トン弱のクルマをこの過酷なモードで走らせて実燃費の推定値が10km/リットルを下回らなかったのは大したものである。

返却時に同じ区間を逆方向に走った時は比較的スムーズな流れで推定約13km/リットル。アイドルストップのない旧型では到底こうはいかなかった。新旧の差が最も小さかったのは高速燃費で、改良型のアドバンテージは1割程度と推察された。燃料タンク容量は公称64リットル。満載状態での長距離ドライブの場合、ワンタンクでの走行レンジは900km程度であろうか。

実寸より広く感じる室内としっかりした機能性

助手席側からの風景。ダッシュボードはラグジュアリーを狙って全面変更されたが、無骨さが随所に見えて少しちぐはぐな感があった。助手席側からの風景。ダッシュボードはラグジュアリーを狙って全面変更されたが、無骨さが随所に見えて少しちぐはぐな感があった。
次に内装および居住感について。デリカD:5のボディの特徴はキャビン上部があまり絞り込まれていない、スクエアな形状であること。全幅は1795mmと、イマドキの3ナンバーミニバンに比べると少しナロー。室内幅もトヨタ『アルファード/ヴェルファイア』、日産『エルグランド』、ホンダ『オデッセイ』などに比べると狭いのだが、ボディ側面が立っているため圧迫感がなく、実寸より広く感じる。

内装は先の大規模改良でダッシュボードをはじめ、トリム、シート表皮ほぼ全面的に刷新された。デザイン性、質感の向上が狙いとのことだったが、世代の新しいライバルと渡り合えるようなものにはなっていない。筆者としては改良前モデルが持っていたアウトドアイメージと引き換えにするほどの成果は得られていないように思えた。三菱自動車のデザイナーはアウトドアを表現するのは上手いが、月並みな高級感を表現するのは正直、下手だ。

デザイン性をさて置けば、機能はしっかりしている。シートは1~3列目とも、たっぷりとではいかないが、5ナンバーミニバンと比較すると格段に余裕のあるサイズを持ち、着座時のタッチも悪くない。全長は4.8mと競合モデルに比べて短いが、全般的に座面高が高く、背もたれの倒れが小さいアップライトな姿勢で座らせるパッケージングのため、足元空間については2、3列目とも十分。今回は全区間1名乗車であったため2、3列目を走っている状態で試すことができなかったが、長旅で忍耐を強いられることはなさそうであった。

採光性は大変良く、車内は明るい。これまた停止時に確認するしかなかったのだが、着座位置の高さとサイドウインドウ下端の低さの合わせ技で眺望が良い。3列目は2列目に比べるとさすがに閉所感があるが、それでも横の窓は広く、3列シート同士で比べれば眺めはいいほうだろう。1列目はキャビン上部の絞り込みが小さいことで左右幅が十分に広く取られたフロントウインドウのおかげで、これまた風景がよく目に入る。このちょっとした観光バスのような景色の見え方は、デリカD:5をファミリーカーとして買うひとつの動機になり得るだろう。

車内はフルフラットにできる。寝心地はなかなか良かった。車内はフルフラットにできる。寝心地はなかなか良かった。
旅の途中、車中泊も試してみた。試乗車は2列目が左右独立のキャプテンシートだったため、車内をだだっ広いフラットにするのには適していなかったが、1列目のシートバックを倒して2列目とつなげ、就寝してみた。すると、これがなかなか具合が良い。シートバックが柔軟性豊かで、体に突起部が強く当たる感触がなく、ぐっすり寝ることができた。宿泊施設へのチェックイン時間などに縛られず、気ままに旅をしたいという人にとってはなかなか好都合だ。

改良前の弱点だった運転支援システムは

オプションのコネクテッドカーナビは大画面。グーグルなど外部サービスとの連携は結構しっかり使えた。オプションのコネクテッドカーナビは大画面。グーグルなど外部サービスとの連携は結構しっかり使えた。
オプション装着されていたカーナビは10.1インチサイズの大画面。価格は25万3000円と高価だが、画面を4分割し、地図、オーディオ、電話、インターネットなど複数の情報を常時表示できるのは便利だった。それぞれの画面の占有率も4等分だけでなく、地図を大きくその他を小さく等々、指によるセンター部分のドラッグで自由自在に変えることができた。なお、このカーナビにはパルスセンサーを用いた速度計があったが、インパネのスピードメーター表示と異なり、GPSとほぼ同じ実速度を示していた。面白いものである。

改良前モデルの弱点であった運転支援システムは、ステアリング介入機能を持たないなど同格のライバルに比べると見劣りする感はあるものの、全車速対応のアダプティブ(前車追従型)クルーズコントロールをはじめ、有用な機能は一通りついた。国交省の基準では「サポカーSワイド」に相当する。

アダプティブクルーズコントロールは速度の調整が比較的上手いほうで、車間距離の変化にこだわりすぎてせわしなく速度を上げ下げするような感じではなかった。道路に引かれた車線の認識率は標準レベル。

ヘッドランプは可変配光型ではなく単なるハイ/ロービーム自動切換えタイプ。この種のデバイスが苦手としているトラックのテールランプ認識は結構優秀なほうだったが、車格を考えればアクティブハイビームが欲しいところである。

ヘッドランプの配光自体は、三菱自動車がかねてからそれをかなり重視する設計ポリシーを持っていることもあって、路肩までしっかり照らされる良い特性を持っていた。照射ムラも小さく、夜間走行時もチラつきが気になるようなことはなかった。

三菱 デリカD:5 アーバンギア。ヘッドランプはジュエリーなデザインだった。三菱 デリカD:5 アーバンギア。ヘッドランプはジュエリーなデザインだった。

まとめ

デビューからはや15年目に突入したデリカD:5。大規模改良を経てもなお古い部分が随所に見受けられるようになったが、それでも3ナンバーミニバンでは唯一無二のターボディーゼル搭載車、唯一無二の最低地上高、かつてに比べて薄まってしまったとはいえ唯一無二のアウトドアイメージ等々、オンリーワンと言えるファクターは多々残っており、それゆえに今でも魅力的な何かを感じさせるクルマであり続けていた。

休日に海、山にドライブに行くと、累計販売台数のわりにデリカの姿を見かける頻度がやたらと高い。その中にはフロントエンドのデザインがガラリと変わった新型も相当数混じっているところをみると、改良型もアウトドア、レジャー志向の強いユーザーから受け入れられているとみていいだろう。

大画面カーナビなどのオプションも含めると支払総額は500万円近辺と、決してお安くないクルマだが、デリカD:5は特異なキャラクターゆえか、売却するときの価格も結構高いので、それである程度は相殺できる。また、ターボディーゼルゆえの燃料価格の安さとそこそこに良好な燃費の相乗効果で、1kmあたりの走行コストは低い。アウトドアミニバンというキャラクターに魅力を感じるのであれば、今買っても悪くはないと思う。

リトラクタブルサイドステップ装備。リトラクタブルサイドステップ装備。
仕様の選択だが、まずノーマルとアーバンギアはお好みでOK。メーカーオプションの大型マッドフラップやアフターマーケットで豊富に売られているドレスアップパーツが似合うのはノーマルのほうだろう。素で乗るならアーバンギアも悪くない。

グレードはいくつかあるが、ベーシックグレードとトップグレードの価格差はそれほど大きくないので、基本的にはトップグレードの「P」か、次点の「Gパワーパッケージ」を選ぶのが良さそう。この2つには電動サイドステップが付くので、子供や高齢者が2列目以降に乗り込むのもそれほど大変ではないという利点もある。

もうひとつの選択肢は定期的にリリースされる「ジャスパー」「シャモニ」などの特別仕様車。これまでの実績を見るかぎり、豪華さでは常時販売の上級グレードに負けるが、カラーやデザイン、アウトドア装備など、結構魅力的に作られるのが常のようなので、発売情報を時折チェックしておくといいだろう。

三菱 デリカD:5 アーバンギア。岩手・陸前高田にて。三菱 デリカD:5 アーバンギア。岩手・陸前高田にて。

《井元康一郎》

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