【ヤマハ テネレ700 試乗】待望のビッグオフ!日本だけの「ロー仕様」はありがたい…青木タカオ

テネレ700 ABS Low
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オンロード:オフロード=9:1あるいは8:2くらいに、舗装路重視の走行性能に設定するアドベンチャーモデルが多いなか、ヤマハが7月31日に新発売する『テネレ700 ABS』はまったく逆。

開発はオンロード:オフロード=1:9くらい、オフロード性能をかなり重視したモデルをつくろうとスタートした。つまり、生粋のビッグオフローダーというわけ。

市販車として完成された車両は、実際のところ1:9ではないにしろ、休日に都会から郊外のダートエリアへ出かけるとき、高速道路やワインディングを安心して走れ、オフロードでは思いっきりファンライドが楽しめる。そんなバイクに仕上がっているのだ。

走り重視ならスタンダードも

ヤマハ テネレ700ABS LOWテネレ700 ABS Low
つい、結論から言ってしまったが、見るからにして車体はスリムで、脚が長くオフロード車然としている。LED4灯ヘッドライトは上2灯がロー、下2灯がハイビームで、下端にポジションランプを装備。フロントまわりも重くならないよう極力無駄を省いたという印象だ。

今回ここでまず紹介するのは、日本国内のみに設定されるアクセサリーパッケージ『テネレ700 ABS Low』。同じ車体価格のまま、ローシートとローダウンリンクでシート高を約38mm下げて837mmとし、身長175cmの筆者が跨ると両足を地面に下ろしても足の指の付け根までしっかり届き、スタンダードより足つき性を良好にしている。

シート高875mmのスタンダードにも跨ったが、シート高はかなり高く小柄な人にはオンロードだけの走行でも苦戦しそう。本格的な足まわりをセットし、最低地上高もしっかり取ろうとするなら高い着座位置も必然で、オフロードモデルとして考えれば875mmのシート高も驚かない。

テネレ700 ABS Lowテネレ700 ABS Low
比較するのはナンセンスだが、筆者が所有してきた『YZ250F』など競技車は970mmもシート高があるわけで、自分のようなオフロード好きにはむしろダート走行をしっかり想定してきたなと歓迎するところである。

とはいえ、ナンセンスと先述したとおり、重量が半分しかないモトクロッサーと比較してどうするのだ。テネレ700はこのクラスにしては充分に軽量だが、それでも車両重量は205kgあり、片足立ちでツマ先ツンツンだと悪路でスタックしたときなどを考えると、セルスターターを装備にしていても正直なところツラい。このロー仕様の登場はたいへんありがたく、現実的なチョイスではなかろうか。

シート高はローシートが約20mm、ローダウンリンクがリアショックのリンク長を変更し約18mm下げる。どちらもワイズギヤの純正オプションだから、走りにこだわるならスタンダードを購入し、どちらかのみを使うという手も良さそう。クッション厚が充分にあるスタンダードのシートは長距離を走るなら快適だし、サスペンション性能をフルに発揮したいならローダウンリンクも付けないほうがいい。

高速道路&ワインディングはアドベンチャーレベル

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ウインドシールドは短いものの、それに対し着座位置が低いためウインドプロテクション効果は充分。車体に落ち着きがあって、不快な微振動もなく充分に快適。高速巡航力においてはビッグオフローダーではなく、アドベンチャーモデルと言っていいレベルに達している。

また、フロントに大径21インチホイールを履き、ワインディングもヒラヒラと軽快。タイヤの接地感もしっかりとあって、アスファルトの上でも高い安心感がある。ブレーキは前輪がブレンボ製2ポットキャリパーと282mm径ウェーブディスク、後輪が1ポットキャリパーと245mm径ウェーブディスクの組み合わせで、タッチや制動力も申し分ない。高速道路と一般道でダートエリアへ着くまでに疲れてしまうなんてことはなさそうで、コーナーもキビキビ走って旋回力も侮れないのはヤマハらしさだ。

前輪を落としても破綻しない

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未舗装路では、ABSをオフにすることができる。インナーチューブ径43mmの倒立式フロントフォークと、プリロードだけでなく伸/圧減衰調整機構を持つリアサスがよく動いて、フラットダートは朝飯前と言ったところ。ストローク量はフロント210mm、リヤ200mmで、最低地上高は240mm(スタンダード)を確保した。

カメラマンを置いて、フープスのような凸凹やジャンプも試してみるが、新設計の専用フレームはネックまわりにしっかりとした剛性感があり、前輪を溝の谷間に落としても踏ん張ってフロントから破綻するまでの限界点が高い。

アドベンチャーモデルではできないようなフロントローの着地もこなすし、テールが流れてからのコントロール性もとてもいい。トラクションコントロールなど電子制御は搭載せず、クロスプレーン設計に基づく270度クランクのパラレルツインエンジンはスロットル操作にリニアにレスポンスし、フラットな特性としているから後輪のスライドが把握しやすく操りやすい。

タイヤはピレリ製SCORPION RALLY STRを標準装備し、オン/オフに対応。もっとブロックの高いタイヤも履けるようフロントフェンダーの高さを上げることができたり、ウインドシールドから続くフロントパネルを透明にし眼下の路面状況を見やすくするなど、細部のつくりを見てもオフロードに対する情熱を感じる。

待望のヤマハ ビッグオフ!

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『MT-07』譲りの688ccエンジンを積むが、2014年のMT-07デビュー時に、このエンジンでオフロードモデルが登場したらさぞかしいいだろうと予感したが、ヤマハは期待に見事なほど応えてくれた。

もちろんシャシーも完全新作の高張力鋼管ダブルクレードルフレームで、CP2エンジンも吸・排気系を刷新。満を持しての国内デビューであり、待った甲斐があった!!

■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★
オススメ度:★★★★★

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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