【池原照雄の単眼複眼】学生の皆さん、足元だけで自動車業界を見ないで

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「不人気業種」となった自動車

日経新聞が毎年この時期に実施している「就職希望企業調査」を見て驚いた。自動車メーカーのランキングが前年からガタ落ちしていたからだ。世界的な自動車危機でトヨタ自動車すら赤字に転落するという現下の経営環境が影響しているのは明白だ。

しかし、自分の生涯の仕事選びとなるかもしれない就職先を、かくも近視眼的に決めるのはいかがなものか。2010年度入社の就職戦線は厳しいものとなりそうだが、「不人気業種」の自動車は狙い目ではないか。

大学3年生を対象にした調査結果によると、総合ランキングでは、トヨタが前年の3位から一気に46位に後退。同様にホンダも22位から60位に下げている。

上位100社の中にはこの2社と部品最大手のデンソー(65位)しかいないというお寒い状況となっている。理系学生を対象にした結果も同様の傾向で、ホンダは前年の6位から9位、トップだったトヨタは19位までランキングを下げている。

◆困難を飛躍への転機としてきた

世界の自動車産業は、ビジネスの基本である新車需要落ち込みの直撃を受け、いまや最大勢力となった日本の自動車業界も最大ゆえの強烈な逆風と向かい合っている。その風圧の大きさは1970年代の2度の石油ショック、80年代後半の急速な円高、90年代初頭のバブル経済崩壊というかつての困難を凌ぐものだろう。

だが、過去のこうした困難は、日本車を世界へと飛躍させる転機となった。石油ショックは、各社が燃費性能に磨きをかけるきっかけとなり、米国という世界最大の自動車マーケットで日本車が市民権を得ることとなった。

80年代の円高は、為替リスクを回避するための海外工場進出を加速させ、雇用創出などを通じた進出先の経済発展に貢献することで、日本車ファンの獲得という好循環をつくり出した。

さらに、国内市場の縮小を余儀なくなれたバブル経済崩壊後は世界に視野を広げながら、いち早く地球環境保全への重要性に着眼。ハイブリッド車などの環境技術開発で世界をリードするポジションの獲得につなげてきた。

◆志をもって来たれ!

日本の自動車業界の歴史は、危機的状況を次の飛躍へのバネとしてきた歴史でもある。確かに今回の危機は未体験ゾーンだし、中期的に見ても業界は大きな転換点に入って行く最中にある。

技術面では地球環境保全に対応するためハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車へと、クルマの根底からの技術革新が進む時代を迎えている。

また、かつては世界のビッグ3と称された米国自動車メーカーの凋落がもたらす世界的な業界再編や、中国など新興諸国の自動車メーカーの台頭といった業界勢力図の変動も起きていく。

そうした転換期のプロセスを自動車産業に身を置いて関われることは、うらやましくも思う。学生の皆さんには、「志をもって来たれ!」と訴えたい。

《池原照雄》

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