ホンダ『インサイト』がすごいのは189万円という価格で売り出したことだ。これまでのハイブリッド車はハイブリッドに乗ることの“見栄代”を払って乗るクルマだったが、インサイトはそれとは違い、だれにでもリアリティのあるハイブリッド車になった。
兄貴分の『C6』や『C5』などと違って、『C4』はハイドロニューマチックサスペンションを装備しない。金属スプリングとダンパーを組み合わせたオーソドックスなサスペンションを採用している。でも、C4の乗り心地と走りっぷりは、ハイドロに似ている。
ハイブリッドのネームバリューと、価格や燃費といった経済性という、『インサイト』における二大長所を一旦脇においても、好感をもてる箇所が2つあった。
予想したよりも、拍子抜けするほど普通のクルマだった。いろんな意味で、いい意味で。『プリウス』が半分電気自動車みたいなハイブリッド車であるのに対し、インサイトは運転感覚においてはハイブリッド車であることをほとんど意識させない。
ボルボ『S40』、『V50』、『C30』の三兄弟に重要な変更が加えられた。可変吸気システムを備えた新しい2.0リットル4気筒エンジンとボルボ初のデュアルクラッチ6速ATが組み合わされたからだ。
私がこの『インサイト』で食いついちゃったのは、デザインでもハイブリッドシステムでもなく、「ティーチング機能」という、ドライバーの運転を採点してエコなドライビングを教えてくれるシステムだ。
スタイリングは確かに先進的な香りのするものだが、けして気負うことなくハイブリッド生活に溶け込めそうな自然体であることがインサイトの特徴だと思う。
初代インサイトは、当時世界最高の燃費を出すだけの、技術者自己満足の塊ヨロシクの2人乗り。だから今回登場した新型インサイトは、リアシート狭いけれど、そりゃ、ドジな私は毎回乗り込むときにアタマをぶつけるけれど、上出来な5人乗りだと思うわけです。
初代『インサイト』のオーナーである僕からすれば、新しいインサイトがデビューしたことで、自分のクルマが旧型になってしまうことは複雑なものがある。しかし、実際にのってみた新型インサイトは、予想していたよりもはるかに完成度が高く良いクルマに仕上がっていた。
デビューから1か月たらずで1万5000台。ホンダ『インサイト』人気の理由は、「200万円以下のハイブリッド専用車」というわかりやすさにあると思う。価格をウリにした新型車は、僕の記憶ではほとんど売れているからだ。