4桁の数字の名称は、プジョーにとってハッチバックとセダン以外のモデルにつけられる名称。最初に出たのは『3008』だった。
その3008の3列シート版として誕生したのが、『5008』であり、当初はMPVとしてスタート。その後2代目からは、SUVに姿を変えたが、『3008』のストレッチ版という立ち位置は今も変わらない。本国では2024年に登場した現行モデルが3代目。おおよそ7年~8年のスパンでモデルチェンジされているが、今回のモデルはプロポーションこそ先代から受け継いでいるものの、中身は完全に入れ替わった別物へと進化した。
どこがどう進化したかというと、まずプラットフォームが違う。次にエンジンとトランスミッションも違う。つまり総入れ替えで、エクステリアのスタイリングこそ、先代とデザイン的には近似性を持たせたものの、インテリアの作りなどもまるで別物であり、まさに新時代へと突入した印象が強い。
◆新プラットフォーム×マイルドハイブリッド
プジョー 5008 GTハイブリッドプラットフォームの話からしよう。先代までは「EMP2」と呼ばれたプラットフォームで、これは電動化は考慮に入っていなかったICE専用ともいうべきプラットフォームだったのだが、今回は「STLA」というプラットフォームに変更された。これは電動化を見据えたバッテリー搭載を考慮したプラットフォームであり、5008に採用されているのはCセグメントとDセグメントをカバーする、「STLA Medium」と呼ばれるものである。大枠としては従来のEMP2を、電動化に合わせて進化させたものという理解でよいと思う。
次にエンジンだが、従来は1.6リットル4気筒、もしくは2リットル4気筒のターボディーゼルがチョイスできたが、今回は1.2リットル3気筒と電動モーターを組み合わせたMHEV(マイルドハイブリッド)仕様の一択となった。このシステム、3気筒エンジンとモーターを内蔵した6速DCTの組み合わせで、メカニズム的には現行プジョーラインナップMHEVすべてに共通する。つまり、Bセグメントの『208』とも同じというわけだ。
プジョー 5008 GTハイブリッド
もちろん、エンジンパワーやモーター出力などはチューニングが異なり、208ハイブリッドに比べて510kgも重い車重に合わせて、それなりのパワーアップは図られているが、そうはいってもモーターは15kwが16kwに。エンジンは101psが136psへと向上しただけで、なんとなく心もとないように思えたのだが、それは杞憂に終わった。
従来はアイシン製8ATだったものが、出力16kwのモーターを内蔵した6速のDCTとなっている。すべてのメカニズムがこれに統一されたプジョーのMHEV。まだ修正が必要と思える部分もあるのだが、当面はMHEVはこれ。そしてPHEVとBEVが加わり、まだICEだけのモデルは、いずれ淘汰されていくのかもしれない。
◆さすがにフラッグシップだけのことはある
プジョー 5008 GTハイブリッド旧型とよく似たスタイルの外観だが、ホイールベースが60mm延長され、全幅で55mm、全長で170mm伸びているから、まさに一回り大きくなった。その分3列シートのSUVとしては、室内寸法にゆとりができたことにより、室内空間は先代よりもだいぶゆったり過ごせるように思う。また先代で指摘した3列目シートにISOFIXのフックが付かない点は今回も同じで、やはりチャイルドシート装着は2列目のみとなるようだ。
今回は208GTハイブリッドからの乗り換え。機構的に同じなので、例の高周波ノイズがどうなるのか心配だったし、例の低速域でのぎくしゃく感なども心配の種だったことは、これも予断。だからそれがなかっただけで、このクルマが相当に良く感じてしまったことは、これももしかすると一種のリバウンドか。
プジョー 5008 GTハイブリッドそれを差し引いたとしても、5008の出来はとても良いと感じた。まず、さすがにフラッグシップだけのことはあって、相当にインシュレーターを多用しているのか、静粛性はとても高い。それとともに、例の高周波ノイズは、ステランティス車両担当に言わせると、間違いなく出ているそうだが、室内からは感知することができないレベルに抑えられている。
次に低速域のぎくしゃく感は、これも重さのなせる業なのか、はたまた、吸収させるようなダンパーでもついているのか、こちらも全く感知されず、極めてスムーズな乗り味に終始した。一方で208が持っていた俊敏さはさすがに影を潜め、そもそもそんなものが必要ないセグメントだし、車格だし、ジャンルであるから問題はない。気になっていたパフォーマンスについても、とりあえず必要にして十分。特に日本の高速道路のように、ヨーロッパと違い速度域が低いので、アンダーパワーを感じることは一切なかった。
◆599万円は高価ではあるけれど
プジョー 5008 GTハイブリッド新たに湾曲した1枚物のディスプレイが例のi-Cockpitを形作るのだが、従来のものと比較して、こちらの方がなじみやすかった。インテリアの作りそのものは、従来のプジョーと同じなのだが、大きな1枚物のディスプレイの存在だけで、印象は大きく異なる。
なお、車両本体価格は599万円。試乗車は618万9070円であった。確かに高価ではあるけれど、マツダ『CX-80』あたりともろに被る価格帯だから、これならセグメントを考慮しても納得である。
プジョー 5008 GTハイブリッド■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。










