2022年、日本再参入後初のモデルとして投入されたのが、このBEVの『アイオニック5』。先ごろ千葉ロッテマリーンズへリリーフカーとして贈呈されるなどした。
が、登場から早くも3年以上が過ぎたものの、“ドア付き”のベース車も、街中で見かけるとつい目をやってしまうクルマである。個人的にはSUVと見做すことには少し抵抗があるが、相変わらず、ショーモデルのようないい感じの現実離れ感はやはりハッとさせられる。
ただし全幅が1890mm、全高1645mmとボリューム感があるため、たとえば7、8型のVW『ゴルフ』あたりが横にくると、スケール違いのプラモデルが並んでいるようにもみえる。が、シャープでクリーンなスタイルはバンパー下部のディテールが改められるなどしているがまったく色褪せていない。

◆より落ち着いた雰囲気で「ととのう」インテリアに
他方でインテリアは、居心地のよさはそのままに、より落ち着いた雰囲気に。試乗車は「Lounge」の2WD車だったが、ほのかに温かみのあるテラブラウン内装に、ブラックがベースのディスプレイ&メーター(初期型はホワイトベースだった)の組み合わせでグッと引き締まった印象となり、ますます気持ちが整う室内空間になった。
初期型に対しては大モノではほかにセンターコンソール(各種スイッチとスマホのワイヤレス充電機能もここにある)、ステアリングなどもデザインが改められている。装備面ではほかに前席のヒーターとベンチレーション、後席のヒーター、後席電動スライドと、かなりの充実ぶりだ。

後席についてはBピラー部に専用のエアベント、ドアカーテンも備わり、そもそも居住スペースもゆとりが大きいため、乗り心地・NVH評価担当の我が家の飼い犬のシュン(柴犬・オス・3歳半)を安心して乗せていられ、本人も快適そうだった。
◆航続距離703km、より自然な走行フィーリングに進化
ところでアイオニック5は、最新モデルでは性能向上を果たしている。初期型とスペックを見較べると、最高出力は160kW→168kW、最大トルクは350Nm(数値は同一ながら200rpm発生回転数が高められた)。バッテリー容量も72.6kWh→84kWhに拡大し、一充電走行距離も618km→703kmに伸びた(いずれもLounge・RWD)。
実際に走らせてみると、動力性能の余裕が増したことはもちろん、より運転しやすく、クルマの反応もよりスムースで洗練されたものになったことを実感。

回生を最大にした状態(停止まで行なえる)でもアクセル操作に対し加・減速の反応が自然でまったくギクシャクしたものにならないのは感心した次第。ステアリングの反応、乗り心地、静粛性も進化しており、走らせていて(乗っていて)ますます気持ちが整うクルマになったと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。