2024年暮れにマイナーチェンジが施された三菱『アウトランダーPHEV』。バッテリーの容量が変わって、EVとしての航続距離が伸びた。
前回、短時間の試乗ではエンジンがかかることはなかったのだが、今回は連続最大300kmを走行して、バッテリー残量が無くなった時の走行フィールや、試乗会では絶対に試すことのできない充電なども体験してみた。
バッテリーの容量アップについてはすでにお伝えした。また、バッテリーはあれやこれやといじって大きな進歩を見せているのだが、そのあたりの詳細については実際に使うユーザーにとっては、とりあえずあまり関心も薄いだろうから(興味のある人は詳しい解説を探してください)、今回はその「伸びた航続距離」に特化してお話をする。
◆「100kmをBEVとして走ることができる」は本当か
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試乗会の折、技術者から「100kmをBEVとして走ることができる」を念頭に開発したという話があった。しかし、借り出した時バッテリーはフル充電の状態だったが、可能走行距離は80km程度で、しかも渋滞のある都内の一般道を走行する限り、どうもその航続距離も保たない。結果的にほぼ50kmを走行して我が家に着いた時は、残走行可能距離は10km台に落ちていた。条件によって可能走行距離は大いに異なるのだと思うけれど、まあ、100km保たせるのは至難の業である。
我が家の3kwの充電施設で2日半充電してみたが、その時もうまく入ってくれなかったのか、可能走行距離は90km台を指していて、そのまま一路東名高速を西進して、愛知県に向かった。途中、新東名の NEOPASA浜松で、充電。ここには150kwの大容量充電スタンドがある。もちろんここまでほぼ250kmを走行してきたから、バッテリーはカラ。30分でおおよそ70%の充電が可能で、その時の可能走行距離は60km程度。この表示も、過去の走行パターンからクルマが計算してはじき出したものだと思う。しかし、そこから50kmほど走ってやはり表示はカラになった。
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150kwの充電スタンドで30分入れると、およそ70%入ることが確認できたので、帰路はこの150kw充電を同じ場所で連続、合計1時間試してみた。もちろん充電スタンドのクルマがいなかったのでこれができたのだが…。結果は最初の充電でおよそ70%。しかし次の30分では90%にまでしか充電できず、やはり携帯同様徐々に入りが悪くなることが確認できた。
では、実際にどのようにしたら100kmの航続距離を得られるのか、あれこれ試してみた。自宅の3kw充電設備で、カラからおよそ13時間ほど充電した時に出た数値が113km。これが最大である。充電は長くすれば良いというものではないことは(バッテリーの寿命にもつながると聞いたことがある)知っているが、48時間入れても表示上100kmに届かなかった(もちろん満充電なのだが)こともあったことから、こういうのはあれこれ試して経験値を蓄積する必要があるのかな?とも感じた。
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◆高速道での走りと“ワンペダル”の使い勝手
クルマは実に快適である。往復600km走っても疲れは全くない(目が疲れるが)。シートにはマッサージ機能が付いているが、下からひたすら背中を押すだけで、もう少し違う動きをしてくれたらなぁ…と思ったものである。
少し気になったのは、高速上のラフな路面でかなり大きめの入力が来ることと、それに伴って直進性が乱されること。このため、ドシっと安定した走行と言うわけにはいかない。それに、ACCはこれも矢のように直進するというわけにはいかず、車線内を右へ左へまさに右往左往することがある。要改善ポイントの一つだと感じた。
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もう一つ改善して欲しいのは、「イノベーティブペダル オペレーションモード」という、いわゆるワンペダルモード。このスイッチはシフトレバー横にある。それがペダルのピクトグラムなのだそうだが、初めて乗った時はそれに気づかなかった。確かに言われてみるとペダルのように見えるが、もう少し別なデザインにした方がわかり易いと思う。
で、このワンペダルモード、速度域が50km/h以上で使用する分にはあまり違和感がないのだが、より低速、具体的には30km/h以下程度になるとアクセルをオフにした時の減速Gが凄まじい。しかも完全停止までは機能してくれないから、ある程度、まあ10km/hくらいだと思うが、そこからはドライバーがブレーキを踏んでやる必要がある。しかし、その時のブレーキフィールも俗にいうカックンブレーキ風の効き方をする。ワンペダルモードでない時はそんなことはないので、ひとえにクルマ側でのやり取りに起因する。ここは改善して欲しい。
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◆いくつかの不満点はあれど
こうしたいくつかの不満点はあるものの、新しいアウトランダーは総じて快適である。それに目立ち度も結構高そうで、オーナーになったらそのあたりも満足度が高いだろう。
今回お借りしたのは、「P エクゼクティブパッケージ」という最上級グレード。メーカーオプション25万3000円、ディーラーオプション21万1090円が載って、車両価格は659万4500円であった。メーカーオプションはともかく、ディーラーオプションはフロアマットや三角表示板、トノカバーなどで外しにくい。ドラレコとETCナビも入っているが、これを市中で自分でつけるようにすれば外せる。しかも値段が15万1030円と結構高い。
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■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来47年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。