マクラーレンの新世代ハイブリッドが、「オープン」でさらに進化 『アルトゥーラ・スパイダー』の注目ポイントは

マクラーレン アルトゥーラ・スパイダー
  • マクラーレン アルトゥーラ・スパイダー
  • マクラーレン・オートモーティブ日本代表の正本嘉宏氏
  • マクラーレン アルトゥーラ・スパイダー
  • マクラーレン アルトゥーラ・スパイダー
  • マクラーレン アルトゥーラ・スパイダー
  • マクラーレン アルトゥーラ・スパイダー
  • マクラーレン アルトゥーラ・スパイダー
  • マクラーレン アルトゥーラ・スパイダー

マクラーレンが設立以来の英知を集結してゼロから開発した新世代のスーパースポーツ、『アルトゥーラ』のオープンモデル、『アルトゥーラ・スパイダー』が日本でも発表された。価格は3650万円からで、デリバリーのタイミングは本年度第4四半期を予定している。

◆ハイパフォーマンスハイブリッド

マクラーレン・オートモーティブ日本代表の正本嘉宏氏マクラーレン・オートモーティブ日本代表の正本嘉宏氏

アルトゥーラのポイントは、ハイパフォーマンスハイブリッドシステムを搭載したクルマということだ。そもそもマクラーレンはスーパーカーセグメントにおいていち早くハイブリッドシステムを搭載したメーカーで、パイオニアともいえる。2013年に『P1』を発表。2019年には最高速度403km/hを誇る『スピードテール』を投入。さらに、「非接触充電、チャージングシステムも含めスーパーカーにとってハイブリッドシステムがどうあるべきかをこれまで開発、検証してきた」と紹介するのはマクラーレン・オートモーティブ日本代表の正本嘉宏氏だ。そしてアルトゥーラは、「いままでマクラーレンが培ってきた英知、そして最先端の技術を投入したまさに新世代のスーパースポーツだ」と述べる。

「もうひとつ、アルトゥーラには大きな特徴がある」と正本氏。「スーパースポーツというカテゴリーと、エレクトリフィケーション(電動化)とは相容れない部分がある。それは、パフォーマンス重視のスーパースポーツにとって、バッテリーやモーターは重量がかさむものであり、それをコンバインする(組み合わせる)ことで矛盾が生じる」からだ。しかし、「マクラーレンは独自のやり方で解決し、新たなレベルへと進化させている」とその実力を強調した。

その最大のポイントは、マクラーレンが開発した新しいカーボンテクノロジー、“マクラーレンカーボンファイバーライトウェイトアーキテクチャ”だ。これは、「今後の電動化に向けてバッテリーを最適位置に搭載でき、しかもその重量をできるだけ相殺できるように従来よりもさらに軽く、強靭なカーボンモノコックを新たにゼロから開発したものだ」と話し、従来のカーボンタプと比べ30%剛性が高められているという。さらに、「最新鋭のイーサネットを投入することにより、従来よりもワイヤリングの質量を25%削減。その結果として軽量化に大幅に貢献している」と説明した。もちろん最新のADASシステムも搭載するなどで、「スーパーカーでありながらもオールラウンダーとしてのクルマの質を高めたのが特徴だ」と語った。

◆スパイダーに合わせてバージョンアップ

マクラーレン アルトゥーラ・スパイダーマクラーレン アルトゥーラ・スパイダー

今回発表されたアルトゥーラ・スパイダーの特徴は、リトラクタブルハードトップを採用した点だ。50km/h以下であれば11秒で開閉が可能なので、「急な天候変化だけでなく、ドライバーの気分によって、ワンタッチで開閉が可能」と正本氏。

また、そのルーフにはオプションでエレクトロクロミック・ガラスパネルを選ぶことができるが、アルトゥーラ・スパイダーでは従来のものと比較し反応速度を90%高め、シェードは紫外線を0.1%までシャットアウトする新たな機能も搭載されている。

さらにアルトゥーラ・スパイダーは、パワートレインも進化している。アルトゥーラ用に新開発されたV型6気筒3リットルエンジンだが、従来の585psから605psにパワーアップ。モーターを加えたシステム出力で680psから700psとなった。正本氏は「高回転域においてエンジンのパフォーマンスの高まりをより感じてもらえるだろう」とコメント。同時に車重が約1500kgに収まっていることも強調しておきたい。

マクラーレン アルトゥーラ・スパイダーマクラーレン アルトゥーラ・スパイダー

またアルトゥーラ用に開発された8速のギアボックスにも手が入った。プレフィル機能を搭載することでシフトスピードを25%向上させたのだ。具体的には「クラッチの油圧をあらかじめ高めることによってスタンバイモードに入り、ドライバーの意図した瞬間にスムースなシフトチェンジが実現するシステム」だという。こういったテクノロジーを進化させたことで0-100km/h加速はクーペと同じ3秒、最高時速330km/hを記録する。

また、マクラーレンが最も力を入れているドライビングダイナミクスも強化された。アルトゥーラ用に開発されたプロアクティブダンピングコントロールシステムもアルゴリズムを改良することにより、従来よりも最大で90%反応速度が高まった。エンジンマウントも改良されボディとの一体感が増すとともに、ステアリングフィールも剛性感を高められた。

同時にスパイダーであるからにはエグゾーストノートにもこだわった。正本氏は、「エグゾーストシステムに新たなフラップを追加することによって、“クレッシェンド”と呼ばれる高回転に行くにしたがってドラマチックに高まるエグゾーストノートのチューニングも行われた」と述べた。

◆機能美はマクラーレンのデザイン哲学

マクラーレン アルトゥーラ・スパイダーマクラーレン アルトゥーラ・スパイダー

アルトゥーラ・スパイダーのデザイン上の特徴として、ルーフ以外にはリアのフライングバットレス(Cピラー部)が挙げられる。通常はアルミ製のものが多いが、このクルマは透明のポリカーボネート製にすることで、「スタイリングだけでなく、視界をしっかりと確保。これによりスパイダーでありがちなリアの視界が悪くなることを最大限解消し、できる限りドライバーの安全確保と快適なドライビング環境を提供している」。

また、リトラクタブルハードトップはエンジン上部に収納されるため、エンジンの冷却性能に影響を与えてしまう。それを解消するためにリアのデッキ部分に新たにエアインテークとエアアウトレットを計4つ搭載。これが、「機能美としてこのクルマにデザイン的な大きな特徴を与えている」と正本氏。「全てのものには意味があり、それが機能美に繋がる。単に格好良いものを作るのではなく、ひとつひとつのラインは意味がある」とマクラーレンのデザイン哲学について語り、これらがアルトゥーラ・スパイダーのデザイン上の特徴だとした。

そのほかADAS系もアダプティブクルーズコントロールやレーンデパーチャーウォーニング、トラフィックサインレコグニションなどは搭載されてきたが、アルトゥーラ・スパイダーのローンチに合わせ、新たにブラインドスポットモニタリグとリアクロストラフィックディテクションが装備された。

なお2025年モデルのアルトゥーラクーペも、パワートレインを中心に同様のアップデートが施されるという。

マクラーレン アルトゥーラ・スパイダーマクラーレン アルトゥーラ・スパイダー
《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集