世界最大級の自動車イベントで見た、SDV・自動車ソフトフェア開発の今とこれから…「ジャパンモビリティショー VS IAAモビリティ 日独自動車ソフトウェア出展比較 「失敗が許されないSDVシフト」(『EdgeTech+ 2023 オートモーティブ ソフトウエア エキスポ』開幕直前SP)

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オンラインセミナー「ジャパンモビリティショー VS IAAモビリティ 日独自動車ソフトウェア出展比較 「失敗が許されないSDVシフト、2025年とその次」(『EdgeTech+ 2023 オートモーティブ ソフトウエア エキスポ』開幕直前SP)
  • オンラインセミナー「ジャパンモビリティショー VS IAAモビリティ 日独自動車ソフトウェア出展比較 「失敗が許されないSDVシフト、2025年とその次」(『EdgeTech+ 2023 オートモーティブ ソフトウエア エキスポ』開幕直前SP)
  • 自動車ジャーナリストの川端由美氏
  • ナノオプト・メディア代表取締役社長 大嶋康彰氏
  • レスポンス編集長 三浦和也
  • オンラインセミナー「ジャパンモビリティショー VS IAAモビリティ 日独自動車ソフトウェア出展比較 「失敗が許されないSDVシフト、2025年とその次」(『EdgeTech+ 2023 オートモーティブ ソフトウエア エキスポ』開幕直前SP)
  • IAAモビリティ2023
  • コンチネンタル(IAAモビリティ2023)
  • ボッシュ(IAAモビリティ2023)

11月1日、オンラインセミナー「ジャパンモビリティショー VS IAAモビリティ 日独自動車ソフトウェア出展比較 「失敗が許されないSDVシフト、2025年とその次」(『EdgeTech+ 2023 オートモーティブ ソフトウエア エキスポ』開幕直前SP)が開催された。

同イベントでは“自動車ソフトウェア”という視点でいち早くジャパンモビリティショー2023プレスデー取材の様子を速報。自動車ジャーナリストの川端由美氏とナノオプト・メディア代表取締役社長 大嶋康彰氏、モデレーターとしてレスポンス編集長の三浦和也が登壇している。三者ともに訪問したIAAモビリティ2023(ドイツ・ミュンヘンにて9月頭に開催)と比較しながら、日独OEM+サプライヤーのSDV(ソフトウェアデファインドビークル)、自動車ソフトウェアに関する取り組みの最前線を議論した。

ミュンヘンと東京、ソフトウェアに対するアプローチの違い

CASE/MaaS時代の訪れにより、自動車ソフトウェアの立ち位置、重要性が変わりつつある昨今。より多くのソフトウェアが自動車に必要となる中で、川端氏は「従来の“機械に対してソフトウェアを乗せる”というところから、“ソフトウェアがうまく動くようにハードウェアを設計してあげようという考え方、時代に移行する”というのが、ソフトウェアデファインドといわれる今の変化である、と捉えている」という。

乗車中に様々なソフトウェア、いわゆるスマホのアプリのようなものが稼働することで、カーライフを充実させる体験を提供する。ハードとしての車だけではない、移動+αの価値を持つ存在へと変わりつつある。

IAAモビリティ2023とジャパンモビリティーショー2023でもソフトウェアに対するアプローチが紹介されていた。

川端氏はIAAモビリティについて、「SDVという言葉を口にしない人がいないくらいのショーだった」と振り返る。

「自動車メーカーもほとんどがそこに触れており、『ティア1からティア0.5になる』と宣言しているような巨大なティア1メーカーが、ほとんどのプレゼンテーションでSDVの話を中心に置いて、関連のソフトウェアや開発環境の話をしていた。この傾向は前々回のIAAモビリティでも既に現れていたが、その時点ではまだコンセプトだった。今回は、ソフトウェアデファインドの世界がより現実味を帯びて見えるようになっていたという印象」(川端氏)

IAAモビリティ2023IAAモビリティ2023

一方でジャパンモビリティショーでは、「ソフトウェアの話というより、実体としてのコンセプトの提示」という要素が多かったと感じたという。

それに対し、三浦も産業的に自動車ソフトウェアを語っていたIAAモビリティに対し、SDVになったらこういうことができるという世界観を語るジャパンモビリティショーという違いがあったと述べ、大嶋氏も「ビジネスの話と一般消費者向けの切り分けが、IAAモビリティの場合はすごく綺麗にされているところがあった。そういう意味ではジャパンモビリティショーはそこまで切り分けられていないと感じた」と同意した。

ジャパンモビリティショーは一般公開ありの10日間開催というイベントなので、IAAモビリティのオープンスペースとの共通点が多い。三浦は「IAAモビリティのメッセ会場の方はB2Bという位置付けではないか」と分析している(※)。

※ IAAモビリティ2023では、市街地でのオープン展示と、ホール内の展示の両方で開催された。ミュンヘン市内中心部に設けられたオープン展示エリアでは、各出展者が消費者向けの車両展示やイベントを開催し、ホール内展示ではブース展示と共にカンファレンスやセッション、ネットワーキングイベントなどB2B関連の展示やイベントが開催された

ビークルOS、VWとトヨタの動向

ジャパンモビリティショーにおいて、SDV時代の到来についてプレスカンファレンスで言及していたのがトヨタだ。「佐藤恒治社長はアリーンOSという構想も含めて、きちんと語っていた」(三浦)

そのアリーンOSを開発するウーブンバイトヨタは、9月に大きな人事異動を発表している。三浦は、VWが子会社カリアドでのOS開発を中止し、ボッシュのプラットフォームを使用してVW OSとして展開するとした発表を引き合いに出し、アリーンOSの開発が順調かどうかを現場で担当者に尋ねた。

その回答は「アリーンOSの開発は以前の計画から変更はない」というもの。当初の計画通り2025年にアリーンOSベースのモデルが、2026年にアリーンOSをフルで使った次世代EVが発表される予定とのことだが、注目すべきは佐藤社長のプレゼンにもあった「車がソフトウェアになるだけでなく、街とつながる」という構想だ。

ユーザーのベネフィットや街とつながる価値、顧客側の楽しみを全て内包しているのがアリーンOSとし、それが2025年の春に登場する。「トヨタ担当者は、最初から完璧なものが出てくるわけではなく、アップデート可能なソフトだから、そこで順次機能が追加されると話していた」(三浦)

トヨタ(ジャパンモビリティショー2023)トヨタ(ジャパンモビリティショー2023)

一方、VW OSを担当するボッシュは「今やハードはボッシュの一面でしかない」とし、ソフトウェア関連の取り組みを盛んにアピールしている。街とのつながりといったモビリティサービス、エネルギーの利用・課題解決の方法などとビークルOSが連携することを含めて、SDVではなく「ソフトウェアデファインドモビリティ」であると語る。

「街とのつながり」というキーワードから感じられるのは、SDVのトレンドがシフトしてきているのではないかということだ。この背景には「電動化・BEV化によるエネルギー問題」があるのではないかと三浦は語る。「メルセデスベンツが世界中に充電スポットを展開するなど、インフラ作りにもOEMが関わるようになってきた。街とモビリティが一体化しないと新たにBEVを買う人の利便性やベネフィットが十分得られないという考え方になってきている」(三浦)

川端氏も「IAAモビリティの取材時に『moveID』(※)というコンセプトを知ったが、(そのプロジェクトでは)データをGoogleのようなところが全部まとめているのではなく、データが非局在化していて、充電ネットワークと車がつながることによって今ある充電ネットワークをもっと使いやすくできないかということを考えている。そのmoveIDは、旗振り役でボッシュの人が出ていたり、街中でのモビリティのあり方や、街の価値を上げるモビリティなど、そういう観点の施策もしていた」と話す。

※道路交通における分散型デジタルIDの活用を目指すプロジェクト。「Gaia-X 4 Future Mobility」プロジェクトの一環としてボッシュがリーダーシップをとる。ミュンヘン市内で実証実験が行われており、IAAモビリティ2023では、ピアツーピア方式(クラウドを介するのではなく、機器同士が互いに通信する方式)で提供されている駐車場とEV充電ポイントを検索や予約するデモが行われた。

カギとなるAIの活用

もう一つ、ソフトウェアのトレンドとして挙げられるのが「AIの活用」だ。自動車開発の現場やSDVの環境で、AIはどのような影響を与えるのだろうか。

川端氏は「特に自動運転の開発はAIによってさらに加速する」と見ている。自動車関連企業とIT産業とのつながりが強まり、IAAモビリティではコンチネンタルとGoogleの提携が発表された。そのGoogleに対しては、「AIを自動車開発環境やアプリケーションに使う際は自動車ならではの制約があるが、その部分もきちんとサポートする体制ができている」と評価する。

コンチネンタル(IAAモビリティ2023)コンチネンタル(IAAモビリティ2023)

一方、マイクロソフトは、WindowsやOfficeに出資先であるOpenAI、ChatGPTの機能を組み合わせており、自動車開発における動きにも注目が集まる。

その他、EV自動運転スタートアップのチューリングの取り組みや、自動車部品を中心とした老舗サプライヤー矢崎総業のブースにおける提案など、AIに関連する事例を取り上げ意見を交わした。

ソフトウェアの注目企業・団体が集まる「オートモーティブ ソフトウエア エキスポ」

このように自動車ソフトウェアへの注目が高まる中、11月15日から17日にかけてパシフィコ横浜で開催されるのが『EdgeTech+ 2023 オートモーティブ ソフトウエア エキスポ』だ。ナノオプト・メディアが企画・推進する組み込みシステム技術の展示イベント「Edge Tech+」の特別企画として、初めて実施される。

大嶋氏は同イベントについて「組込みソフトは家電にもスマホにも入っているが、やはり自動車は、日本が誇るものづくりの最後の砦のようなところがあると考えている。その自動車業界が100年に一度の転換期を迎えるということで、これからの自動車開発を皆で考えるという場が必要だと考えた」と話す。「自動車業界でもB2Bの展示会はいくつかあるが、ソフトウェアにフォーカスしたものは今までなかったと思う」とし、今がそのタイミングであることを強調した。

Edge Tech+の展示会場の中にオートモーティブ ソフトウエア エキスポ専用エリアを用意し、ソフトウェア技術に特化したセミナーを行う会場を設ける。そこでは、基調講演をはじめ34のセッションが行われる予定だ。

「ソフトウェアをテーマにしたセッションを34も集めたイベントは今までなかったと思うので、非常にユニークな展示会になるだろう。初回にしては参加企業も多く、内容的にもタイムリーだと賛同をいただいているので、いい形で盛り上げていきたい。

基調講演にはトヨタ、テスラを始めとした国内外のOEMの方、ティア1やメーカーの方々にも登壇いただく。デンソーの林田 篤 Chief Software Officer(CSwO)の講演でも、まさにSDVに向けた取り組みの話を伺うことができると思う。その他、イベントに先駆け川端さんに取材していただいたマイクロソフト(インタビュー記事はこちら)、その記事の中で登場するオープンソースの団体・Eclipse Foundation、ボッシュなど、本当に豪華なメンバーが登壇される」(大嶋)

それだけの企業、キーマンが集まるということは、やはり日本には自動車開発者が多いということだろう。世界で走っている車の3分の1が日本車で、そのほとんどが日本国内で開発されている。それらがSDVとして革新していくというそのインパクトを象徴しているということではないだろうか。

OTAのトピックや、コネクテッド時代に欠かせないサイバーセキュリティをテーマとしたセッションも用意されている。また、展示会でも40社の取り組みが様々な形で紹介される。他業界のソフトウェアエンジニアにとっても、自動車業界のエンジニアにとっても有意義な場となるはずだ。

「従来の組み込み系で活躍されているエンジニアにとっては、ソフトウェア資産が使えなくなるかと心配や疑問があると思うが、ここで直接話せるというのは良い機会」と川端氏。

大嶋氏は「是非色々な方に集まっていただいて、色々なディスカッションをしていただけるような場になればいいと思っている」と思いを語った。

オートモーティブ ソフトウエア エキスポ公式HPはこちら

■EdgeTech+ 2023 オートモーティブ ソフトウエア エキスポ
会期:2023年 11月15日(水)- 17日(金)
会場:パシフィコ横浜
主催:一般社団法人 組込みシステム技術協会
企画・推進:株式会社ナノオプト・メディア
※11月2日現在。最新情報は展示会HPをご確認ください

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セミナーでは本記事で触れていない、アップデートで進化する車への見解、クリエイターを惹きつけるソニー・ホンダモビリティ『アフィーラ』、日本のコンテンツの価値などについても議論が交わされている。

セミナー動画本編はレスポンスYouTubeチャンネルにて公開中! 下記をご覧ください。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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