シビックタイプRの走りが変わった…スポイラーの裏側に施された“ギザギザ”の秘密

「実効空力デバイス」なるテールゲートスポイラーを装着した、ホンダ シビックタイプRに試乗
  • 「実効空力デバイス」なるテールゲートスポイラーを装着した、ホンダ シビックタイプRに試乗
  • 「実効空力デバイス」なるテールゲートスポイラーを装着した、ホンダ シビックタイプR
  • ホンダ シビックタイプRの「実効空力デバイス」なるテールゲートスポイラー
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ホンダアクセスから「実効空力デバイス」なるテールゲートスポイラーが発売された。しかも新型ホンダシビックタイプR』専用のパーツ(純正アクセサリー)である。

◆スポイラーだけを交換

これは、テールゲートスポイラーは標準でも装着されているのだが、マウントステー部はそのままにメインウィングとなるスポイラーだけを交換するもの。「実効空力」とは何を指すのかというと、日常の速度域でも体感できる空力効果のことで、ホンダアクセスではエアロダイナミクスの開発キーワードとなっているのだ。

標準仕様のテールゲートスポイラー(上)とホンダアクセスが手掛けた「実行空力デバイス」なるテールゲートスポイラー(下)標準仕様のテールゲートスポイラー(上)とホンダアクセスが手掛けた「実行空力デバイス」なるテールゲートスポイラー(下)

さて、試乗会が行われたのは群馬サイクルスポーツセンター。道路幅も狭く降雪地帯でもあることから路面はサーキットとは全く異なりアンデュレーションの連続。しかもいたるところに上り下りのコーナーがあり、その多くが見通しの悪いブラインドコーナーだ。もちろん筆者は試乗会で何度も走っているのでコースそのものは大体頭に入っている。とはいうものの、走るたびに緊張するし恐怖も覚える。裏返せばクルマのスタビリティを判断するには絶好のコースと言える。コーナリングの安定安心感をジャッジするにはうってつけなのである。

◆滑らかな空力特性を生み出す“ギザギザ”

ではホンダアクセスが開発した実効空力デバイスなるテールゲートスポイラーとはどんなものなのか? まずドライカーボンによって製作されているので軽量化されている。断面形状は「NACA4412」をベースにしている。

NACAとはNASAの前身にあたる国家航空諮問委員会のことで、4412はNACAで解析的に定義された翼型のこと。つまり抵抗と揚力のバランスがとれた理想的断面形状と考えられている。テールゲートスポイラーの形状は両翼から持ち上げられ、メインエレメント下部の空気の抜けをしっかり確保している。またAピラーと重なるように翼端板の位置が決められていて、サイドのエアの流れも計算された形状になっている。

ホンダ シビックタイプRの「実効空力デバイス」なるテールゲートスポイラーホンダ シビックタイプRの「実効空力デバイス」なるテールゲートスポイラー

スポイラーのメインエレメントは後端が持ち上がるガーニーフラップの形状が採用されている。ガーニーフラップはフォーミュラマシンのリヤウィングなどのウィング後端にL字型のアングルを付けてダウンフォースを増強する装置で、ダウンフォースが上がっても抵抗が比例して大きくなりにくいとされている。

そしてこのスポイラーのメインテーマが、実効空力を生み出すスポイラーの裏側に施されたシェブロンと呼ばれる鋸歯形状のデバイス。この鋸歯形状のギザギザは、ジェットエンジン内部の空気の流れをスムーズにするために採用されている形状という。これをスポイラーの裏側に施して滑らかな空力特性を生み出しているのだそうだ。

ホンダ シビックタイプRの「実効空力デバイス」なるテールゲートスポイラーホンダ シビックタイプRの「実効空力デバイス」なるテールゲートスポイラー

◆低速域から感じられる効果

ということでさっそく試乗してみる。もちろん新型シビックタイプRで、まずは標準仕様のスポイラーでの走行。ドライブモードはスポーツとコンフォートの2通りを試す。ここ群馬サイクルスポーツセンターではスポーツモードはもちろんのこと、よりダンパー減衰力の弱いコンフォートモードにしてもそれなり突き上げショックは大きい。バウンシングが収まりにくくスポーツモードではかなり跳ねる。

そこで実効空力デバイスのリヤスポイラーに取り換えてみる。まずスポーツモードで走り出す。走り出し50km/hレベルの速度で流してみるが、何となく直進性が良くなったように感じる。リヤの落ち着き感が増したように感じるのだ。そしてどんどん速度を上げていく。恐怖感や緊張感がさっきよりも小さい。相変わらず突き上げ跳ねるけれども、全体に落ち着きがあるのだ。

「実効空力デバイス」なるテールゲートスポイラーを装着した、ホンダ シビックタイプR「実効空力デバイス」なるテールゲートスポイラーを装着した、ホンダ シビックタイプR

そこでコンフォートモードに変更して速度を上げる。コンフォートモードにすることでサスペンションがスムーズに動き、突き上げ感も少なくなるのだが、このスポイラーに変えてからは明らかに突き上げ感が激減。とにかくリヤが落ち着く。ただダウンフォースが上がっているのであれば、コーナーでアンダーステアー傾向が強くなるはずだがコーナリングもよりニュートラルなフィーリング。操舵角も減っていいるのだ。それでいてリヤは落ち着いてグリップしている。

「実効空力デバイス」なるテールゲートスポイラーを装着した、ホンダ シビックタイプR「実効空力デバイス」なるテールゲートスポイラーを装着した、ホンダ シビックタイプR

エアロダイナミクスに関してはランボルギーニがALAという独自のデバイスを開発しているが、この鋸歯形状のシェブロンと呼ばれるデバイスはALAほど複雑でもなくとてもシンプル。しかも低速域から効果を感じるその性能に感心した試乗だった。

ホンダ シビックタイプRと松田秀士氏ホンダ シビックタイプRと松田秀士氏
《松田秀士》

松田秀士

成仏する直前まで元気でクルマを運転できる自分でいたい。「お浄土までぶっ飛ばせ!」をモットーに、スローエイジングという独自の健康法を実践する。これまでにINDY500に4度出場し、ルマンを含む世界4大24時間レース全てに出場経験を持つ。メカニズムにも強く、レースカーのセットアップや一般車の解析などを得意とする。専門誌等への寄稿文は分かりやすさと臨場感を伝えることを心がけている。

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