【青山尚暉のわんダフルカーライフ】軽商用車はドッグフレンドリーカーの新たなる選択肢

スズキ スペーシアベース
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これまでこの「青山尚暉のわんダフルカーライフ」では、愛犬とドライブするのに相応しいドッグフレンドリーカーとしてミニバン、プチバン、ステーションワゴン、SUV、そして軽自動車にして室内大空間&スライドドアを備えたスーパーハイト系軽自動車を取り上げてきた。

しかし、そこに新たなるドッグフレンドリーカーとして認められるジャンルが加わることになった。それが軽商用車である。といっても、すべての軽商用車というわけではない。その代表格が、今年8月に登場したスズキの『スペーシア ベース』だ。

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◆軽乗用車を基本としたこだわり

これまでも、ホンダNシリーズの1台、軽商用車の『N-VAN』といった、軽商用車でも一般ユーザー向けのグレードを用意することはあった。N-VANで言えば+STYLEシリーズだ。

ホンダ N-VANホンダ N-VAN

G、Lグレードといった、いかにも“働くクルマ”な見た目とは異なり、趣味のクルマとしてのデザイン性や使い勝手を備え、荷室から助手席部分までをフルフラットにアレンジすれば、最大スペース長2635mmという、長身の大人が横になっても余裕綽綽なベッドスペースを稼ぎ出せるため、“軽キャン”と呼ばれる軽自動車をベースにしたキャンピングカーのベース車両としても重宝されているのである。愛犬とアウトドアを楽しむのにもってこいの1台と言えたかもしれない。

ダイハツの『アトレー』も、アウトドア向け軽乗用車『ウェイク』なき後を引き継ぐような、軽商用車にしてアウトドア、趣味のクルマとして荷物の積載性だけでなく、走行性能や最大14種類もの予防安全機能=スマアシまで完備(全車速追従機能付きACCやレーンキープコントロール、ブレーキ制御付き誤発進抑制機能などを含む)した、かなり軽乗用車方向に振ったキャラクターが与えられた1台である。

が、スペーシア ベースの最大の特徴は、税金面で有利な4ナンバーの軽商用車にして、実は、基本部分はスーパーハイト系軽自動車の『スペーシア』ほぼそのものということ。詳しく説明すれば、プラットフォーム、NAのみとなるエンジンはスペーシアであり、当然、エクステリアデザイン(ほぼ)、大開口スライドドアといった部分もしかり。精悍かつ迫力満点のフロントグリルは標準のスペーシアではなく、なんとマイナーチェンジ前のスペーシアの上級モデルのスペーシアカスタムのもの。さらにフロントグリル、フォグランプベゼル、ドアミラー、ドアアウターハンドル、リヤガーニッシュ、ホイール(XFグレード)が贅沢にも上級感あるブラックパール塗装されているという凝りようなのである。

その上で、スペーシアのクロスオーバーモデルという位置づけとなる『スペーシア ギア』からルーフレールと撥水機能のあるシート表皮を譲り受け、スペーシアカスタム、スペーシア ギアのいいとこ取りをした仕様となっているのだ。

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◆ギア感を便利さとともに演出

もちろん、室内後部は4ナンバーの商用車仕様で、後席が格納前提の簡易シートとなるのはお約束として、その背後に格納した後席部分とフラットにつながる広大な荷室を備えている。しかも、スペーシアのリアクォーターウィンドウ部分はボディパネル張りとなり、その内側にリヤクォーターポケットと合計10カ所のユーティリティナットが配置され、ギア感、道具感を便利さとともに演出。

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さらに、スペーシア ベースの特筆すべき特徴となるのが、全グレードに“標準装備”される「マルチボード」。上中下段にセットでき、マルチボード固定用アタッチメントとマルチボード固定用ネットを使うことで、様々なアレンジ、使い勝手が可能になる。そのマルチボードは、なんと縦にもセットでき、TVCMの大型犬登場シーンのように、キャビン背後を仕切ることで、前席の飼い主+犬+荷物のスペースを完全にパーテーションすることが可能。車内で愛犬と荷物を同居させると、動く荷物によって愛犬が落ち着かなくなるものだが、そんな心配がないのもマルチボードの便利さということになる。

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◆飼い主の快適性にも配慮

とはいえ、そうしたアレンジ、アイテムは、他の軽商用車でもないことはない(他車でのオプションを含め)。では、どうしてモータージャーナリストにしてドッグライフプロデューサーの肩書を持つ筆者が、スペーシア ベースに感動し、ドッグフレンドリーカーの新たなジャンルの1台として認めたかと言えば、それは荷室の使い勝手の良さや愛犬の乗せやすさといった点以外の部分にもあるからだ。

それは、飼い主にも優しいところ。例えばN-VANの場合、前席はまさに働くクルマ仕様で、もっとも酷使される運転席はかけ心地より耐久性を重視。助手席はズバリ、簡易シートといった仕立てなのである。2人乗車で愛犬を広大かつフラットなスペースに乗せて遠出する…のは、飼い主の快適性という意味では微妙なのである。

一方、スペーシア ベースはすでに説明したように、中身のほとんどが軽乗用車のスペーシア。前席もまた軽乗用車のスペーシアとほぼ同じシート、かけ心地であり、走行感覚、乗り心地もまた軽乗用車に準じているため、軽商用車ながら驚くほど快適なのだ。ちなみにタイヤはスペーシア用ではなく、より発売が新しいワゴンRスマイル用のエコタイヤを使用。その空気圧を2.4kgf/平方cmから2.6kgf/平方cmに高め、最大積載量に対応している。最大積載量と言えば、軽商用車では350kgが一般的。が、スペーシア ベースではあえて、というか、自社の軽商用車の実際の積載量を調査した結果から、200kgで十分、としている。それもまた、スペーシア ベースの乗用車感極まる乗り心地や操縦安定性に貢献、寄与しているはずである(最大積載量が多くなれば、リヤの足回りを固めなければならないゆえ)。

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◆ジャックラッセルのララを乗せてドライブ

で、実際にわが家の自称自動車評論犬(!?)ジャックラッセルのララをスペーシア ベースに乗せてドライブをしてみた。大型犬であれば、後席をフロアに沈み込ませるように畳み、フラットフロアにして、マットレスなどを敷いて乗せることになるのだが(マルチボードを立てれば荷室と仕切れる!)、小型犬のジャックラッセルのララの場合は、実測で座面長420×座面幅1000mmの簡易的な後席をそのまま使い、DOG DEPTのドライブベッドを2本のベルトでシートバックに固定し、ナイロンの7倍の強度があるというコーデュラ素材のリード&ハーネスセットを前席ヘッドレストに固定して安全快適に乗車させることに。

ジャックラッセルのララジャックラッセルのララ

都合のいいことに、前席はスペーシアのセミベンチシートに対して、スペーシア ベースは左右が離れたセパレートシートになるため、前席の飼い主と後席~荷室にいる愛犬とのアイコンタクトが可能になり、お互い安心できるとともに、エアコンの風も届きやすくなるメリットもあったりする。

そうそう、スペーシアには後席天井部分にサーキュレーターが用意されているのだが、スペーシア ベースはそこをオーバーヘッドシェルフとして活用。愛犬のグッズなどをしまっておくのにぴったりの収納となる。そのほかにも、ドライバーの動線にこだわった運転席側パワースライドドアなど、こだわりの装備が満載なのである。

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とくに純正アクセサリーの外部電源ユニットは、家や電源付きキャンプサイトから車内のAC100V/1500Wコンセントに電源を引くことができる装備で(コードを取りまわすために窓やバックドアなどを少し開ける必要なし)、車内でコーヒーメーカーや簡易電子レンジなどの使用が可能になり、ララは、「車内がどこでもドッグカフェになるわん」と喜んでいる。後席を畳み、マルチボードを上段にセットすれば、畳んだ後席が椅子になり、マルチボードがテーブルになるわけで、雨の日だって車内を窓際(リアウィンドウのこと)のカフェスぺ―スにアレンジできるのだから楽しすぎる!

つまり、飼い主と愛犬がともに満足できる、コンパクトで扱いやすく、走りやすく、経済的で近所のドッグランやドッグカフェ、そして動物病院に通うにもうってつけのドッグフレンドリーカーの1台が、このスペーシア ベースということだ。軽乗用車(スペーシア)そのものに近い走行性能から、実際に体験した高速走行も楽々快適。ちょっとした遠出もできそうなのだから万能ではないか(各種先進運転支援機能、ACCまで備わる)。スペーシア ベースのような進化した軽商用車を、これからのドッグフレンドリーカー選びの新たなる選択肢として、ぜひ加えてほしい。

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《青山尚暉》

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