インドネシア二輪市場に異変、電動バイクのエコシステムに日本メーカーは【藤井真治のフォーカス・オン】

世界3番目のインドネシア2輪車市場

日本ブランドの独壇場だが新興勢力による電動バイクが浸透しつつある。

ユニコーン企業など巻き込みながらバイク物流の電化エコシステム構築を図っっている。

電動バイクのバッテリー交換ステーション
  • 電動バイクのバッテリー交換ステーション
  • インドネシア電動バイクのエコシステム
  • ジャカルタを走るゴジェックとグラブバイク(現在はほとんどがガソリン車)
  • バッテリー交換ステーション
  • ワンタッチでバッテリー交換
  • コンビ二前のバッテリー交換ステーション
  • スワップの電動バイク
  • 脱着式のバッテリー採用するホンダの電動スクーター

コロナ禍でも着実な成長を維持している人口2億6000万の国インドネシア。世界3番目の二輪車新車市場である。その規模は中国、インドに次いで年間600万台レベル(昨年はコロナ禍で517万に留まる)と実に日本の14倍の大きさである。ホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキで市場の95%を占め自動車市場と同じく日本ブランドの独壇場となっている。

そのインドネシアの二輪車市場で異変が静かに起こっている。「電動バイク」である。

ただしそのメインプレーヤーは日本ブランドではない。台湾や中国の技術や部品あるいは資本を使いインドネシア政府の支援も得たローカルブランドなのである。また製造や販売へのリソース投入に加え、電動バイクに欠かせないバッテリーの充電インフラ整備、メインユーザーであるオンライン配車・配送サイト等との連携が事業戦略の核となっている。業種を超えた連携によるエコシステムの構築という日本メーカーの不得意な市場参入戦略を取っている。

ジャカルタを走るゴジェックとグラブバイク(現在はほとんどがガソリン車)ジャカルタを走るゴジェックとグラブバイク(現在はほとんどがガソリン車)

電動バイクを核とするエコシステムと参画するプレーヤー

最近ナスダックへの上場を果たした台湾本社のゴゴロ社(Gogoro)。インドネシアのオンライン配車・配送サービス大手のゴジェック(Gojek)や国営石油・ガス会社のプルタミナ(Pertamina)との提携により電動バイク事業を展開中である。ローカルブランドであるエレクトラム(Electrum)ブランドのゴゴロ社製電動バイクが現在500台、バイクタクシーやフードデリバリー用としてジャカルタを試験走行している。

バッテリーは脱着式でプルタミナのガソリン給油所の脇にある交換所でフル充電したものと数秒で交換できる。時間が勝負のゴジェックのバイクの運転手にとって、充電に時間を取られることもなく大変ありがたいシステムとなっている。運転手に聞いたところ、給油で並ぶ必要もなく燃料費はガソリン車より安くすむようだ。今後は5000台の本格導入が計画されていると言う。

ユニコーン企業であるゴジェックはすでに昨年のゼロエミッション宣言によって2030年に4輪も含めた全ての使用車両のEV化を宣言している。加えて台湾の電子機器メーカーの最大手鴻海(ホンハイ、FOXCON)もこのゴジェック&ゴゴロの事業参入者として名乗りをあげエコシステム構築に向けての覚書をインドネシア政府と交わしている。交換式バッテリーやバイクのインドネシア本格生産も計画されている。

バッテリー交換ステーションバッテリー交換ステーション

ゴジェックと並ぶもう一つのオンライン配車大手グラブ(Grab)と手を組んだのがインドネシア資本のスムート社(SMOOT)。台湾ゴロロと同様のバッテリー交換方式の国産電動バイクの生産と販売をスタートさせ(中国製部品の利用と思われる)、グラブがそれを使うというものだ。こちらはバッテリー交換ポイントをコンビニのアルファマートに設置しゴゴロ-ゴジェックよりも広範囲なインフラ整備を狙っている。8500台の販売が見込まれているという。

一方、コロナ禍で急拡大する通販ビジネスに伴う宅配物流。インドネシアで一日1億個の荷物が配達されると言われているが、戸口までの配達にはバイクが欠かせない。この分野では前述のゴジェックはすでにオンライン通販のユニコーン企業と合併しており、今後の通販物流との連携拡大も期待できる。またスムートのエコシステムには、中国アリババ資本のインドネシア通販ブランドが参入表明している。ジャカルタ市内を通販グッズの配達にひた走るバイクのバッテリー交換にSWAPポイントが頻繁に利用されるという筋書きだ。

まさに電動バイクを核とするインドネシアの2つのエコシステムにユニコーン企業や世界的に有名なブランドが参入し、両者一騎打ちの様相を呈しているわけだ。

インドネシア電動バイクのエコシステムインドネシア電動バイクのエコシステム

日本ブランドから「コト」作りは生まれるか

エコシステムのプレーヤー達の目線は「バイクの電動化」ではなく、「バイク物流の電化」と言ったほうがいいだろう。電動バイクはあくまで脇役かもしれない。

一方「我が世の春」を謳歌しているガソリンバイクの日本メーカー。この動き手をこまねいて見ているわけでもない。ホンダもヤマハも「モノ」としての電動バイクやバッテリー開発は進行中でプロトタイプはもう出来上がっている。しかしながら、3月末から実施されているモーターショーのブースを見る限り、旧来型エンジンモデルの高級化路線やばかりが目立ち電動バイクはあくまで添え物のような感じは否めない。

バイク市場全体から見ればゴジェックやグラブといった配車大手の使う数は10%程度で、しかも低価格モデル。儲からない。新興ブランドはあくまでベンチャー企業のビジネスモデルで商品やアフィターサービスなど事業自体の信頼性に乏しい。資金調達や上場のための大きなアドバルーンであってビジネスとして成立するか不透明。政府の環境政策や投資政策プロパガンダに表面上乗っただけ…などなど正論ばかりがまかり通るのは容易に想像できるのだが。

新ビジネス機会の宝庫であるインドネシア。日本ブランドのバイクの地位は不動であることは間違いないのだが、「コト」作りのアクションも欲しいといころである。

充電式バッテリーを採用するヤマハ のE01充電式バッテリーを採用するヤマハ のE01

藤井真治
(株)APスターコンサルティング代表。アジア戦略コンサルタント&アセアンビジネス・プロデューサー。自動車メーカーの広報部門、海外部門、ITSなど新規事業部門経験30年。内インドネシアや香港の現地法人トップとして海外の企業マネージメント経験12年。その経験と人脈を生かしインドネシアをはじめとするアセアン&アジアへの進出企業や事業拡大企業をご支援中。自動車の製造、販売、アフター、中古車関係から IT業界まで幅広いお客様のご相談に応える。『現地現物現実』を重視しクライアント様と一緒に汗をかくことがポリシー。

《藤井真治》

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