レクサスにもホンダ四輪にも採用、ヤマハの「パフォーマンスダンパー」でバイクの走りはどう変わる?

始まりは2001年の『クラウンアスリートVX』から

ダンパーが動く量はわずか1mm以下

セローで比較試乗!ハンドリングは安定志向に

高速道路を利用するツーリングライダーへ特にオススメ!

初代パフォーマンスダンパーと、ヤマハ発動機 AM事業部 原田豊二さん(左)とモビリティ技術本部 飯倉雅彦さん(右)
  • 初代パフォーマンスダンパーと、ヤマハ発動機 AM事業部 原田豊二さん(左)とモビリティ技術本部 飯倉雅彦さん(右)
  • トヨタ『クラウンアスリートVX』(2001年)に搭載されたヤマハのパフォーマンスダンパー
  • ヤマハ発動機 CS本部の鶴谷知弘さん
  • ヤマハ発動機 モビリティ技術本部 飯倉雅彦さん
  • 最新のバイク用パフォーマンスダンパー。このサイズでも効果はてきめんに現れる。
  • ヤマハのパフォーマンスダンパー。下の3つがクルマ用、上の3つがバイク用。
  • パフォーマンスダンパーを装着したヤマハ セロー に試乗。明らかに乗り味が新車のように変わる
  • パフォーマンスダンパーを装着したヤマハ セロー

始まりは2001年の『クラウンアスリートVX』から

走りにこだわりを持つ人であれば、「パフォーマンスダンパー」という名を聞いたことがあるかもしれない。

最近ではレクサス『CT200h(Version L/C、F SPORT)』『RX450h/350 (F SPORT)』『NX(F SPORT)』といったいわゆるトヨタ系だけにとどまらず、ホンダ『ヴェゼル』『ステップワゴン』、日産『フェアレディZ NISMO』などにも採用されている。

このパフォーマンスダンパーは、バイクメーカーであるヤマハ発動機が開発したもので、もともとクルマ(四輪)向けに開発が進められた。最初に搭載されたのは2001年のトヨタ『クラウンアスリートVX』。構造がシンプルでかつ取り付けやすい上、操縦安定性と乗り心地がともに向上するのみでなく、振動騒音も低減できることが広く認められ、純正採用車種は拡大している。

アフターパーツとしてもトヨタ系のTRDでも展開するほか、ドイツ車のチューニングを得意とするCOXと連携し、フォルクスワーゲン車やアウディ車向けにも供給している。あらゆるジャンルの車種で、その効果が認められていることの現れといえるだろう。

最新のバイク用パフォーマンスダンパー。このサイズでも効果はてきめんに現れる。
そして、本命ともいうべきか、ヤマハのバイクへの採用も拡大している。ワイズギヤより『セロー』や『SR400』、『MT09』、『トレーサー900』、『XSR900』など向けにリリースされ、最近は装着する車両も少しずつ見かける機会が多くなった。バイクの車体側面左側、フレーム同士を繋ぐように取り付けられたショックアブソーバのようなこの装置。一体どういうものなのか。

開発エンジニアである飯倉雅彦さん(ヤマハ発動機 モビリティ技術本部)、原田豊二さん(ヤマハ発動機 AM事業部)、鶴谷知弘さん(ヤマハ発動機 CS本部)が詳しく教えてくれた。

ダンパーが動く量はわずか1mm以下

トヨタ『クラウンアスリートVX』(2001年)に搭載されたヤマハのパフォーマンスダンパー
クルマの車体は走行時、ごくわずかな変形(1mm以下)と振動が絶えず生じているが、パフォーマンスダンパーはこれを穏やかにするものだ。

高圧窒素ガス封入オイルダンパーをベースに開発されたが、発想の起源はタワーバーにあった。車は一見シャープなハンドリングを得たように感じるが、シャープさゆえに収束性のアンバランスを生ずるうえ、乗り心地はゴツゴツと硬い。

ならばタワーバーの代わりに、ごく微小な変位1mm以下に効く減衰要素を用いれば、車体はゆっくりと変形し、落ち着くのではないだろうかとイメージしたのだった。

取り付け位置は、さまざまなパターンを試みた。サスペンションタワー間、バンパーリーンフォースメント、リアシート取り付けフロア部、サイドメンバー間、サイドメンバー前後方向、結論から言ってどこに取り付けても効くことがわかり、車種によってもっとも効果的で最適な場所・減衰力で装着されている。

パフォーマンスダンパーを装着したトヨタ86に試乗
筆者はトヨタ『86』とBMW『3シリーズセダン(340i)』で装着前と装着後を比較試乗(厳密には、パフォーマンスダンパーの“効き”をオンオフできるテスト車にて比較)させてもらったが、ドアを閉める音やオーディオのサウンドからしてもうパフォーマンスダンパーありの状態は引き締まっていて、ハンドリングもずいぶんシャープに変わるから驚いた。

細かい振動やノイズも消え、乗り心地が向上。揺すられていた下りのヘアピンでも、しっとりとした接地感とともに落ち着きが増し、まるでクルマのグレードが1ランク上がったような感覚だ。

絶大な効果を発揮し、四輪ではメーカーの垣根を超えて採用されていくパフォーマンスダンパー。今度はバイクで、その存在感を高めつつある。

セローで比較試乗!ハンドリングは安定志向に

パフォーマンスダンパーを装着したヤマハ セロー
バイク用は「ヤマハパワービーム」と名付けられ、2011年4月『TMAX』用として最初に発売された。現在は、四輪と同様に「パフォーマンスダンパー」として展開している。

開発初期段階では自転車でもテストし、動き出しから効果があることを確認した。飯倉さんたちは言う。「あらゆる乗り物で効果が期待できますよ」と。ヤマハにはマリン、スノーモビルなどさまざまなヴィークルがあるから、他のセグメントでももう開発が進んでいてもおかしくない。

パフォーマンスダンパーを装着したヤマハ セロー に試乗。明らかに乗り味が新車のように変わる
さて、筆者の本業であるバイクでも体感しようと、セローで装着前と装着後を乗りくらべた。段差を越えたときの衝撃の伝わり方や収束性などその差は歴然。ガタついていたペダルの震えが収まるし、前後輪の接地感も高まった。スピードを上げずとも、低速走行時でも車体に落ち着きが出て、効果を感じるのだった。

たわみの多いフレームの剛性がシャキッとし最適化されたことで、前後サスペンションもしなやかに動き踏ん張りが効くものとなり、ブレーキのコントロール性向上にもつながっている。

タイヤもサスもくたびれたままだが、見違えるような働きをしてくれるから舌を巻く。小さいパーツながら取り付けた際に感じる違いは多々あり、ステアリングフィールはヒラヒラとした軽快感が薄れ、安定志向となったことも報告しておこう。

チューブに取り付けるだけでも効果あり、ベストな位置で最大のパフォーマンス

ヤマハ発動機 CS本部の鶴谷知弘さん
バイク×パフォーマンスダンパーの効果の秘密、そして今後の展開について飯倉さん、原田さん、鶴谷さんに話を聞いた。その様子を以下にインタビュー形式でまとめた。

----:ダンパーと聞くと、動く姿が見えるのかなと思いますが、実際はかなり硬いですね。

鶴谷さん:1mmも動きませんが、振動をしっかり抑えてくれます。

----:TMAXではフレームの左右ダウンチューブ間を繋ぐような配置でしたが、セローやSR、MT09系にラインナップされているパフォーマンスダンパーは車体の左側だけにちょこんとつくだけ。フレームどうしでもっとガッチリ装着しなくてもいいのだろうかと、素人だと思ってしまうのですが……。

振動の減衰を確かめるためのデモ用機材。パフォーマンスダンパー を装着したものは、手に伝わる振動がまったくなくなる。
鶴谷さん:フレームの剛性をただ単に高めるのが目的ではなく、振動を減衰させるためのダンパーなので、じつはフレーム間を渡さなくともチューブに取り付けるだけでも効果が得られます。ただし、ベストな位置を探すと、こうしたフレーム間を渡すカタチになるのですけどね。

----:フレームのねじれ剛性を高めるものと説明を聞いたことがありますが、単純ではないようですね。

鶴谷さん:ねじれるスピード、収束を変えることで、入力に対する応答性が上がります。SRなどは特にそうで、スッと曲がって狙ったラインを思う通りにトレースできます。

----:TMAXからスタートしたのも、よりモーターサイクルらしい軽快で安定した乗り味を出すためだったんですね。

高速道路を利用するツーリングライダーへ特にオススメ!

ヤマハ発動機 モビリティ技術本部 飯倉雅彦さん
飯倉さん:その後、進化は進んでコンパクトになり、現行サイズになっています。

鶴谷さん:ついにエンデューロ競技専用車の『YZ250FX』用も発売することができました。

----:オフロードでも効果は高いのですか?

鶴谷さん:最初は舗装路での効果が高いと考えていたのですが、セローなどでもオフロードでの走破性が格段に上がることがわかったのです。

原田さん:日高2デイズエンデューロにセローで参戦した鈴木健二選手が装着し、「もう外せない」と言っていました。

ヤマハ発動機 AM事業部 原田豊二さん
----:現状、新車から標準装備せず、後から選んで装着できるパーツとなっていますが、どんなユーザー層につけてもらいたいのでしょうか?

飯倉さん:高速道路に乗ってツーリングへ出掛けるようなライダーさんですね。

----:やはり目指す方向はコンフォート性であったり直進安定性なのでしょうか。

飯倉さん:そうですね、ふられを解消したりできると思います。

----:セローやSRの苦手な部分を補ってくれるというわけですね。どうしてシングルモデルからラインナップされたのか伺おうと思っていましたが、合点がいきました。

パフォーマンスダンパーを装着したヤマハ セロー
フレームの剛性はとてもシビアで、レースの世界ではエンジンハンガーに小さな穴を開けたりしてライダーの好みに合わせることもある。これだけのものが備われば、走りは激変するはずで、リーズナブルな価格(しかも取付簡単)で乗り味を大きく変えられるのだから、もし愛車の走りを向上させたいと考えるなら試さない手はないだろう。

《青木タカオ》

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