【トヨタ グランエース 新型試乗】ありそうでなかった「4人のVIP」のための上級送迎車…まるも亜希子

トヨタ グランエース G(4列8人乗り)
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「働くクルマ」というと、まず思い浮かぶのはダンプカーや消防車、ショベルカーといった姿だが、トヨタは今回、そこに「上級送迎」という新たな「働くクルマ」としてグランエースを誕生させた。ホテルや旅館、葬儀場やゴルフ場といった、少数のお客様を大切に運ぶ、おもてなしとして送迎をするという、今までにもあったようで、実はなかなかそこにドンピシャでハマるクルマはなかったジャンルだ。

以前、近所の葬儀場が送迎車としてメルセデスベンツ『Vクラス』を使っていてなるほどと思ったが、やはりこのグランエースはVクラスをベンチマークとしつつ、それを超える快適性、ユーティリティを目指して作られたという。全長5.30m、全幅1.97mという巨体はVクラス(エクストラロングを除く)を上回るサイズながら、最小回転半径は5.6mとVクラス同等を実現。取り回しを犠牲にせず、豪華なシートが並ぶ3列シート6人乗りの「Premium」、4列シート8人乗りの「G」をラインアップしている。

デカさに圧倒!フロアの高さにも理由がある


実車を目の前にした印象は、まずありきたりだが誰もが「デカイ!」と圧倒される。フロントマスクはそれなりにイカつい存在感を持ちつつも、『アルファード』/『ヴェルファイア』ほど好き嫌いの分かれにくい、万人受けしそうな上品さがあると感じる。サイドビューで際立つのは、クッキリと腰を貫くキャラクターラインと、大きな窓。リアはL字型の大きなリアコンビネーションランプや、U字型のメッキガーニッシュで低重心感を加えつつ、きっちりと四隅まで引っ張られたカクカクのルーフにはやや商用感がただよっている。

そしてスライドドアを開け、玄関口をイメージしたというステップへ。最低地上高は175mmでシティ派SUV並みだが、なぜかフロアがかなり高く、二段になっているステップの一段目がとくに高い。小学生~大人ならグリップを使えばヨイショと登れるが、幼児は大人の手助けが必要だ。


実はこの高いフロアの理由は、上質感を求めるグランエースと、海外向けに作る商用バンの双方の必須要件を叶えようと画策した結果だった。世界中どこでも普及していて、耐久性があり、たとえ少し故障しても走行可能で、修理もすぐにできる技術という条件を満たすサスペンションとして、採用したのがリジッドアクスル。それがバウンドするスペースが必要だったことと、通常それを受け止めているゴムがもしちぎれて無くなっても、フロアに当たるようなことがないよう、マージンを取る必要があった。それらを考慮してフロアをフラットにしようとすると、この高さになってしまうのだという。

とはいえ、それは開口部の大きなグランエースに必要な剛性感、乗り心地向上を叶えるためにはチャンスだったと、技術者は語る。一般的なミニバンはフロアを下げようとするため、骨格を曲げなければならないが、グランエースにはまっすぐで強固な骨格を通すことができ、しっかりラダーを組んで上屋にも骨を通す「環状骨格構造」としたことで、操縦安定性がかなり高められたとのことだった。

「4人のVIPを同等にもてなす」3列シート車の心地よさ

トヨタ グランエース Premium(3列6人乗り)の3列目シート
そんなフラットなフロアを持つ室内を「Premium」から見ていくと、ふっくらと分厚いクッションで大きく豪華なエグゼクティブパワーシートが2列目・3列目にゆったりと4座並び、その光景は飛行機のファーストクラスのよう。パワーオットマン、快適温熱シート、ドリンクホルダーが各席に備わっているので、まさに「4人のVIPを同等にもてなす」シーンにぴったりだ。

座ってみるとほどよく身体にフィットしつつ、ホッとリラックスできる余裕の大きさ。ヘッドレストの左右が少し折れ曲がっているのがまた秀逸で、頭をあずけて眠る時に最適だ。頭の大きさによっては、やや窮屈に感じる人もいるようだが、背中までホカホカと温まるシートでついウトウトしてしまうほどだった。

そして4列シートの「G」は、2列目のみエグゼクティブパワーシートが2座、3列目に手動操作となるリラックスキャプテンシートが2座、4列目にはベンチタイプの6:4分割チップアップシートが備わり、さすがに3列目以降はややタイトな空間。2列目から順に座ってみると、4列目の座面が薄いことが如実にわかってしまうのは致し方ないところだが、3人掛けでなく2人掛けなので横方向のゆとりは予想以上にある。ドリンクホルダーも4列目までしっかり備わっている。

トヨタ グランエース G(4列8人乗り)の4列目シート
そんな4列目までのアクセスは、3列目をスライドさせれば、小柄な人ならなんとか乗り降りできるスペースがあるのだが、やはり送迎中のトイレ休憩などで、4列目の人だけが降りたい時でも、2列目・3列目の人をどかさなければならないのは、ちょっと気が引けてしまうところ。

その点では、「Premium」なら3列目の乗り降りはセンターウォークスルーを使えばなんとかできなくもないが、もしかすると長距離走行の場合は、最も偉い人を3列目に座らせる方が失礼がないのではないか? などと、実際に使っていくうちに様々な発見がありそうな予感でいっぱいだ。

商用車とは全く違う!品の良さが感じられる走り


さて、グランエースのパワートレーンは、2.8リットルクリーンディーゼルエンジン+6速ATを搭載。117ps/450Nmと、低回転から太いトルクで力強い走りを引き出すことが狙いだ。「Premuin」「G」ともに、スタートボタンを押して聴こえてくるアイドリング音は静かで振動も小さく、室内にいればディーゼルっぽさは薄い。走り出しもはひと踏み目からシャキッとしたレスポンスの良さ、自然なステアリングフィールが好印象。

加速フィールにガサツさはまったくなく、力強い中にも丁寧な穏やかさが感じられるところは、商用車とはまったく違う、品のいい乗用車の趣だ。市街地でのストップ&ゴーでも、落ち着いたブレーキングと小気味いい発進加速で、ストレスを感じることがない。カーブを曲がる時にもガッシリと安定しているので、ついつい全長の長いクルマだということを忘れてしまいそうだ。

同条件で乗り比べてみると、やや「Premium」の方が発進のレスポンスが俊敏なように感じたのだが、足回りもタイヤにも違いはなく、開発者いわく「個体差かもしれない」とのこと。ただ、「Premium」の方が車両総重量が140kgも軽いため、そのせいかもしれない。


そして市街地を走っている分には、上質感があって乗り心地もよく、Vクラスを超えた! と思われたグランエースだったが、高速道路に入るとそれはやや変わってくる。ボディの剛性感はしっかりとあるのだが、路面のウネリなどでステアリングに入力があったり、横風に煽られるとその影響を受けやすく、常に自分で修正舵を入れながら走ることになってしまう。

もう少し、ドッシリと安定して高速走行ができるといいのだが、開発者に聞けばこれにも理由があった。それはやはり、フロア高と同じで耐久性に優れ、パーツの調達、修理が世界中どこでも簡単にできることを重視し、ステアリングを油圧式にしたことだ。Vクラスのように電子制御を駆使すれば直進安定性は上がるが、グランエースはあえてそこは詰めず、油圧式ならではの切り始めの自然さ、穏やかな動きだしを残したとのことだった。

使い方は未知の可能性を秘めている

トヨタ グランエース Premium(3列6人乗り)の2列目シート
乗り心地は、懸念していた「G」の4列シートでもなかなかに快適でビックリ。「Premium」の3列目の方がやや硬いかな? と感じるくらいの出来栄えだ。とはいえ、どの席でも後席に座っている分には高速道路でもまったく不快な思いをすることはなく、運転席と4列目でも普通に会話ができる静粛性も素晴らしい。会話明瞭度で測るとアルファードと同等というのも納得だ。

また、フロアが高いゆえに、天井もミニバンとしては1290mmと低く、ホンダ『N-BOX』の1400mmにもかなわないのだが、とにかく窓が大きくて見晴らしがよく、とても開放感がある。これなら、移動と観光を兼ねて走るようなシーンにもピッタリだと感じた。

こうして見てきて膨らんだイメージは、6人乗りの「Premium」は、ラグジュアリーミニバンとして定着しているアルファードをもう一歩進め、生活感を徹底的に排除した「4人のためだけのアルファード」というもの。そして、最後までどんな人に似合うのか悩ましかった8人乗りの「G」は、観光タクシーとして活躍するイメージが浮かんできた。

通常のミニバンは後席にいくほど見晴らしが悪くなるが、グランエースならどの席でも外がよく見えるのが強みだ。ただ、まだまだ他にも新しい使い方がありそうで、未知の可能性を秘めているクルマだと感じる。

とはいえ、年間600台の販売目標に対し、すでに950台以上の受注を抱えるグランエース。その7割が「Premium」だそうだが、3割の「G」ユーザーはいったいどんな使い方をするのか、これから目撃するのが楽しみだ。

トヨタ グランエース Premiumとまるも亜希子さん

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト
映画声優、自動車雑誌『ティーポ(Tipo)』編集者を経て、カーライフ・ジャーナリストとして独立。 現在は雑誌、ウェブサイト、ラジオ、トークショーなどに出演・寄稿する他、セーフティ&エコドライブのインストラクターも務める。04年・05年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

《まるも亜希子》

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