「自前主義はもう限界」新型スープラ、多田哲哉CEが込めた想いと夢…名古屋オートモーティブワールド2019

トヨタ自動車 GAZOO Racing Company スープラ開発責任者の多田哲哉氏
  • トヨタ自動車 GAZOO Racing Company スープラ開発責任者の多田哲哉氏
  • GR Supra GT4
  • トヨタ スープラ 新型
  • トヨタ自動車 GAZOO Racing Company スープラ開発責任者の多田哲哉氏
  • トヨタ スープラ 新型の直6エンジン(RZ)
  • 第47回ニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦したスープラ
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トヨタとBMWは、2012年6月、電動化やエンジン供給、スポーツカーの共同開発など、広範囲な分野で提携を発表した。その結実の一つが新型『スープラ』だ。開発責任者であるトヨタ自動車 GAZOO Racing Companyの多田哲哉チーフエンジニア(CE)は、様々な機会にその苦労や、商品の魅力を語っているが、その根底には「新しいことをやる」という想い、そして多田CEの「夢」があった。

何を主張し、何を譲るか

設計実務はBMWが担当し、プラットフォームやパワートレインはBMWの新型『Z4』と共有。そしてトヨタは新型スープラを、BMWはZ4をそれぞれ独自に開発し、外観デザインや走りのチューニングも別々で行う、というのが今回の協業だ。

しかし、今から7年前、多田CEが、独ミュンヘンのBMW本社で、ピュアスポーツカーを一緒に作りたいと訴えた時の反応は、意外にも冷ややかだったという。BMWにしてみれば、Z4はスポーティかつ上質なオープンモデルであり、サーキットでタイムを競うリアルスポーツではない。また、そもそもユーザー自身もそんなものは求めていない、というのが彼らの考えだった。「いまどきリアルスポーツなんて作ってどうするんだ?とも言われました」と多田CEは明かす。「常識的に言えば、彼らの言うことの方がまっとうなんですけどね」。

「どこの会社も、特に業績のいい会社は、自分たちのやり方が一番だと思っている。でも、だからといって主張ばかりでは話が前に進まないし、かと言って譲ってばかりでは自分たちの思いが製品にならない。その加減が難しかった。最初のうちは、ひたすらミーティングを繰り返すだけで、何も決まらないまま一年以上が過ぎました」と協業の難しさを振り返る。多田CEは、それでもぶれずにピュアスポーツを追求し続けた。新型スープラは、その結果でもある。

自前主義はすでに限界

GR Supra GT4
一方で、多田CEはこう話す。「こんな古典的なスポーツカーはこれが最後でしょう。でも同時に、最先端の楽しみ方も用意しておきかった」。その思いを形にしたのが、プレイステーション『グランツーリスモ』を使って、オンライン上で世界規模のワンメイクレースを開催する「eモータースポーツ」だ。

「今どき異業種のコラボレーションって、どの分野でも重要ですよね。自前主義にこだわるのは、自動車業界くらい。これからは世界で一番優れたもの、面白いものを見つけてきて、自社製品と組わせることで新しい価値を生み出す。それが重要だと思っています」

ワンメイクレース「GRスープラ GTカップ」で使われるスープラの乗り味やエンジンサウンドは、実車とそっくりにしてある。また、リアルなワンメイクレースでは、一回のレースでグリッドに付けるのがせいぜい50台だが、グランツーリスモのワールドツアーには現在、世界中から2万人が参戦。しかもライセンスは不要で、対象も「7 to 77(7歳から77歳まで)」とあるように全年齢となっている(正確には6歳から参戦可能)。スープラのダウンロード数は、すでに45万に達しているという。

さらに、バーチャルでセッティングを煮詰めるだけでなく、アフターパーツメーカーが用意したバーチャルなチューニングキットをグランツーリスモ上で試し、購入することもできるようにした。あるいは逆に、リアルなスープラの走行データを「グランツーリスモ」上で再現することも可能だ。

「新型スープラはスポーツカーだから、毎年エンジンもシャシーもアップデートしていくつもりです。そしてバーチャルのスープラも、それに合わせてアップデートしていきます。だからGTカップに参戦しているドライバーには、走った時の不満とか良い点とか、こういうセッティングの方がいいとか、このパーツを装着した方が速くなるとか、乗り味についての印象を私たちにどんどんフィードバックしてもらって、それをリアルなスープラのアップデートにも活かしていこうと。単にレースでの勝ち負けではなく、“チームスープラ”の一員として、市販車の開発に参加していただきたいんです」と多田CEは語る。

好きなことをやっていたら、夢が現実になった


「私は子供の頃からクルマが大好きで、『オートスポーツ』の創刊号を漫画の代わりに読んでいるような小学生でした。大学で電気工学を選んだのは、高校生の時にバンドをやっていて、アンプを簡単に直せるからという不純な動機からでしたが、大学生の頃はラリーがやりたくて。卒業後にシステム開発のベンチャー企業を立ち上げたのも、ソフトで一発当ててモータースポーツをやるのが目的だったほどです。まぁ、現実にはそんな簡単にうまくいくはずもなくて、どうしようかと思っていたら、たまたまトヨタが電気系のエンジニアを募集していたんです」

1987年にトヨタ自動車に入社。1993年からドイツに駐在し、当時WRCにセリカGT-FOURで参戦していたTTE(トヨタチームヨーロッパ)でラリー用ABSなどを開発したという。だが、1998年からは商品企画に異動し、今度は『bB』、『ラウム』、『ファンカーゴ』、『ウィッシュ』などのコンパクトカーやファミリカー等の開発に携わることに。それはスポーツカーにとって長い冬の時代でもあったが、その時の経験があったからこそ、86やスープラを開発できたと多田CEは言う。

「今の時代にスポーツカーを開発するのは、想像以上に大変でしたが、自分にとっては、文字通り夢が現実になった仕事でした。でも、トヨタ自動車で実際にクルマを開発している通称「Z」という部署は、意外にその実態が世間に知られていません。そのあたりもセミナーで紹介できれば」と語っている。

多田CEは、9月18日からポートメッセなごやで開催される「第2回 名古屋オートモーティブワールド」最終日20日の『技術者応援企画 開発秘話セミナー』に登壇し、「新型スープラを造る 時代を超えた継承と創造」をテーマに講演する。

■本講演の詳細は
https://reed-speaker.jp/Conference/201909/nagoya/top/?id=AUTON

■第2回 名古屋オートモーティブワールド
自動運転、EV/HEV、カーエレクトロニクス、コネクティッド・カー、軽量化など、自動車業界における先端テーマに関する技術を持つ企業、370社が一堂に出展。今年は新たに世界中のスタートアップ企業が講演・展示する特別企画も開催。

■展示会のご入場には招待券が必要です。招待券請求(無料)受付中!
※招待券の事前登録により、入場料(5,000円)が無料になります。
https://contact.reedexpo.co.jp/expo/NWJN/?lg=jp&tp=inv&ec=AUTO

会期:2019年9月18日(水)~20日(金)10:00~18:00 (最終日のみ17:00まで)
会場:ポートメッセなごや
主催:リード エグジビション ジャパン株式会社
■第2回 名古屋オートモーティブワールド 詳細はコチラ!

《丹羽圭@DAYS》

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