リチウムイオン電池の“父”が語った「クルマの電動化は世界を変える」…第10回 二次電池展-バッテリージャパン- 2月27日開幕

リチウムイオン電池を発明した旭化成の名誉フェロー 吉野彰氏
  • リチウムイオン電池を発明した旭化成の名誉フェロー 吉野彰氏
  • リチウムイオン電池を搭載するEV・PHEV(参考画像)
  • EVを蓄電池として利用するV2Hの例(リーフ to ホーム)
  • 旭化成の名誉フェロー 吉野彰氏
  • トヨタプリウスPHVのリチウムイオン電池ユニット(参考画像)
  • 旭化成の名誉フェロー 吉野彰氏

スマートフォンやゲーム機器など、持ち運びのできる電子機器にはリチウムイオン電池が欠かせない。そして今、次世代の自動車の電動化に向けたコア技術としてリチウムイオン電池の開発競争が過熱している。

世界の人口が今世紀中には100億に達するといわれる今日、快適で幸せな生活を続けるには電気の力が不可欠だ。我々の必需品となったモバイル機器には二次電池(バッテリー)が内蔵され、軽くて大容量な電池への期待は今後も衰えることはない。そして今、より身近に大きな需要が見込まれているのが自動車の分野だ。世界的な電動化に向けた潮流(=EVシフト)は留まるところを知らず、二次電池の向上が行方を左右する。

そんな中、2019年2月27日から3日間、東京ビッグサイトでは世界最大級の専門展『第10回[国際]二次電池展 -バッテリージャパン-』が開催される。国内だけでなく世界各国から電池関連の企業が結集し、電池を構成する部材から、製造・検査装置、そして完成品まで、まさに二次電池の「今とこれから」を見てとれる国際商談展となる。

同展の目玉のひとつでもある専門セミナーには、二次電池の代表である「リチウムイオン電池」を世界に先駆けて発明した旭化成の名誉フェロー、吉野彰氏が登壇する。現代人の生活、世界を変えたリチウムイオン電池の父は今、二次電池を取り巻く環境、需要、そして来るべき自動車の電動化の未来をどのように見据えるのか。開発秘話を交えながら、語ってもらった。

リチウムイオン電池はいかにして生まれ、普及したのか

旭化成の名誉フェロー 吉野彰氏
----:リチウムイオン電池はどのようにして生まれたのでしょうか。改めて、その発明当時の様子をお聞かせください。

吉野氏:そもそもの研究は、1981年にはじまっています。ただし、はじめからリチウムイオン電池ということではありませんでした。当時、後にノーベル賞を受賞される白川英樹教授のポリアセチレンが、電気の流れるプラスチックとして非常に話題になっておりました。

電気化学的にはイオンが出入りする機能があるので、電池の負極材に利用できるだろうと思い至りました。その後、この負極材に合う正極材の発見に難航しましたが、テキサス大学の研究者が示したコバルト酸リチウムの正極と組み合わせたところ、それまでのニッカド電池に比べて3分の1ほどの軽量な電池が出来ました。

しかし市場のニーズを聞くと、軽量化より小型化を求められました。残念ながらポリアセチレンはプラスチックなので、体積はそれまでのニッカド電池とあまり変わりません。様々な材料で試行錯誤を重ねている中で、旭化成の別のグループが研究している特殊な結晶構造の新しい炭素繊維に出会いました。試しにポリアセチレンに替えて炭素繊維を負極にしてみましたら、よい評価が得られました。それが、現在のリチウムイオン電池です。

----:製品化に到るまでには、どのような苦労があったのでしょうか。

吉野氏:研究開発には3つの段階があります。第一段階は、先に述べた新しい現象を見つける基礎研究です。第二段階は量産へ向けた開発研究です。安全性やコストなど、技術を市場のニーズに合わせるための研究を経なければ世に出せません。

三段階目は、製品として出来上がっても、それが売れるかどうかです。その頃、ソニーの8ミリビデオ用バッテリーとして採用されれば100万個/月の量産が見込め、採算が合うと踏んでいました。ところがちょうど同じ時期、Windows95が世界的にヒットして新たにPCという新しい市場が誕生しました。これを転機に二次電池の需要も急速に拡大しました。今日では、携帯電話の普及を含め、市場規模が当初の500倍に拡大しています。この先、クルマの電動化が進めば5000倍になるでしょう。

電池市場がここまで来たか!というのが率直な思いです。

自動車への搭載は、世界を変える

----:世界的な環境意識の高まりや、CO2削減が叫ばれる中、再生可能エネルギー(再エネ)への転換を含め電力の効率的な利活用が求められています。電力を貯蔵し、必要な時に使うためにはいわゆる「蓄電池」の普及も課題となりますが、今後のリチウムイオン二次電池の発展性についてどうお考えでしょうか。

吉野氏:EVが普及すれば、それを蓄電池として利用することでインフラストラクチャー(社会基盤)への二次電池の普及にもつながります。定置型の二次電池、つまり蓄電池の普及がEVの普及によって進むということが肝心なのです。電池をクルマに搭載することは、これまでのITモバイル以上に、「世界を変える要素がある」と考えています。
EVを蓄電池として利用するV2Hの例(リーフ to ホーム)
予測では2025年に市場の15%がEVになっているといわれていますが、その蓄電量は500ギガWhと計算できます。これは原子力発電500基分の電力量に相当します。つまりEVに蓄電池という発想を加えれば、インフラ投資ゼロで電力網を構築できるのです。

一方で、IoT(ものがインターネットでつながる)により情報の共有が進むと、クルマは所有するものから利用するものへ変わります。マイカーが不要になり、個人がクルマを利用する際の負担は7分の1に減るでしょう。自動運転やシェアリングが、電動化と共に鍵を握っているということです。つまりクルマがどうあるべきかが、改めて問われています。

----:二次電池全体の将来は、どのように展望されるのでしょうか。

吉野氏:今あるモバイルIT社会は、電源が無ければ実現しません。また、クルマの電動化にもエネルギー源が必要です。二次電池は地味な技術かもしれませんが、世の中になければならないものだと思います。

他の技術は、例えば液晶など、ある期間を過ぎると製品寿命が終わってしまうのが一般的です。そういう意味では、二次電池は必要とする市場が次々に現れる面白い技術だと、つくづく思っています。

旭化成の名誉フェロー 吉野彰氏

吉野氏は2月27日から東京ビッグサイトで開催される「第10回[国際]二次電池展 -バッテリージャパン-」の専門セッション『EVの未来像を語る』に登壇し、「未来の車AIEVと求められる電池」をテーマに講演する。AI技術により生み出される無人運転の電気自動車が、どのような新しい車社会を創出するのか、ぜひ会場へ足を運んでご聴講いただきたい。

>>> 第10回 二次電池展-バッテリージャパン-の詳細はこちら!

■第10回[国際]二次電池展 -バッテリージャパン-
会期:2019年2月27日(水)~3月1日(金)10:00~18:00(最終日のみ17:00まで)
会場:東京ビッグサイト
主催:リード エグジビション ジャパン株式会社
招待券申込み(無料):https://www.batteryjapan.jp/inv/

《御堀直嗣》

編集部おすすめのニュース

特集