【東京モーターショー2017】自動運転レベル4のデザインとは…アウディ エレーヌ[デザイナーインタビュー]

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アウディA.G.デザインインテリアインターフェイスGUI UI/UXデザイナーのアーノルド・ キーファレ氏
  • アウディA.G.デザインインテリアインターフェイスGUI UI/UXデザイナーのアーノルド・ キーファレ氏
  • アウディ・エレーヌ
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アウディ『エレーヌ』は、2019年にヨーロッパで、アジアには2020年に投入が予定されているコンセプトモデルで、自動運転のレベル4を想定して開発されている。

◇アウディの新時代を表現するインテリア

----:早速ですがエレーヌのインテリアデザインの特徴を教えてください。

アウディA.G.デザインインテリアインターフェイスGUI UI/UXデザイナーのアーノルド・ キーファレ氏(以下敬称略):このクルマはアウディの新しいインテリアデザインランゲージを想定しています。特に、パネル類に有機LEDを採用し、つなぎ目などを全くなくし、完全にフラットにすることでインテリアに融合させています。これがインテリアのハイライトです。

また、メーター周りのバーチャルコックピットも新しいデザインを採用しています。センタークラスターの情報はフラットでモダンな形で表示。あまり重要性のないものは排除して、シンプルに表示するようにしています。

ステアリングホイールも新しいデザインを採用しました。また、通常パドルシフトはギアシフトを行なうものですが、エレーヌは、回生レベルを調整できる役割もあります。バトルで回生モードを軽めにしたいか、たっぷり回生するかということを調整できるのです。

タッチフィットバックも備えました。スクリーンのスイッチを触るとフィードバックがありますので、運転している時に直接指で触れて、反応したかどうかがわからないと危ないですからね。シフトレバーも実際に触ってみると、指だけで感度が高く、かつソフトに操作が出来るようにしています。

◇レベル4に向けたインテリアとは

----:このエレーヌは自動運転のレベル4を想定して開発されています。その点を踏まえインテリアではどういう機能が搭載されていますか。

キーファレ:自動運転する時には色々なことが出来ますよね。まず前を見ていると“AIラップ”と呼んでいるランプが点灯します。これは自動運転をしてもいいゾーンに入るとクルマが表示で教えてくれるものです。そこで“AIボタン”を押すとAI モード(レベル4の自動運転モード)になりますので、シートがリラックスモードになります。そして、メーターなどに表示される情報は最小限になり、航続距離のレンジとスピードだけが基本的に表示されます。そうして映画を見たり、YouTubeを見たり出来ます。130km/hまで自動運転が可能ですので、その速度の間であれば、本当に色々なことが出来るのです。

----:将来的には完全自動運転にもなるのでしょうが、その時には室内はもっと色々なことが出来ますね。例えばシートは普通に前を見ている必要はないでしょう。アウディとして、そういったことは今以上に考えていくのでしょうか。

キーファレ:そうですね。まずレベル4ですと、自動運転も出来るし、自分でも運転が出来ます。レベル5ではもうステアリングホイール自体もなく、クルマの中で色々なことが出来るようになりますので、そこが大きな違いです。他のショーカー、例えばアウディ『アイコン』などを見ると、レベル5を想定していますので、ステアリングホイールもなく ディスプレイが前に大きく表示されているだけです。それはまだ2020年では実現はしませんが。

----:当然そこに至るまでには過渡期があり、交通が混在することが考えられます。その時の安全性の確保、例えばシートが色々な方向に向いていた時に、危険をどう回避するのかなど、インテリアデザインとしてはどのように考えていくのでしょう。

キーファレ:そういう問題は技術でサポートすべきです。新しいクルマは様々なアシスタンスシステムがついています。さらにレベル4、レベル5だとクルマ同士がコミュニケーションが取れます。もちろん100%完全にアシストさせるのではなく、自分でもある程度運転することを考えても、アシスタンス機能の技術を借りればある程度安全は確保できると思います。

これから10年、15年先、色々開発も進んでくるでしょうが、これからはステップバイステップで少しずつ進んでいきますから、色々な技術を開発して、アシスタンス機能を使いながら、危険を避けることが出来るでしょう。

◇自由を考え、楽しめるインテリア

----:助手席の前の辺りのデザインはとても特徴的ですね。ここはどういう意図を持ってデザインされているのでしょう。

キーファレ:力強いラインを上下に取り入れています。水平基調がアウディではとても大事にしており、フロントウインドウ下のラインは包み込むようにリアにまでつながっています。その雰囲気は高級なヨットのようなイメージです。このインテリア全体で、“自由”を表現したかったのです。

また、センターコンソールの下にも多くのスペースはありますが、そういったところにスペースを十分にとって色々なことを楽しんで出来るようにと心がけました。鞄を置いたり、実際に自分で運転する時に、 ipad やラップトップを近くに置いておきたいという時がありますよね。自動運転の時にそれを使いたいでしょうから、そのためのスペースを確保しています。

◇エアアウトレットも近未来的!?

----:助手席の前のデコレーションは何の意味があるのでしょう。

キーファレ:これはデコレーションではなく、ここから風が出る、ベンチレーションです。実はインテリアデザインとしてここから“風が出てる感”を出さないようにデザインするのがチャレンジでした。もちろん冷却も必要。涼しくしなければいけませんので、そこはきちんと考えてデザインしています。

今回、色々な人がこれは格好良いといってくれましたし、とてもユニークで特別なデザインです。通気口はどうしてもスペースをとってしまいますので、もっとデザインとしてうまく融合できないか、モダンに出来ないか、今までとは違うデザインをどうしたらいいかと苦労しながら作っていきました。

通気口にスペースをとられて、しかも穴があるというのはデザイナーにとって大きな問題です。どうやって解決したらいいのだろう、なるべくセクシーに、なるべく整然とデザインするにはどうしたらいいと考え続けた結果です。

なぜそこまでこだわったのか。なぜならディスプレイも新しいデザインになり、色々なコントロールも新しい技術を取り入れているのですから、通気口も新しくしなければいけないでしょう。

----:生産も考えなければならないので、苦労したことも多かったのではありませんか。

キーファレ:それほど苦労はなかったですよ。このクルマのプロジェクトチームは、皆が未来の仕事をしているということで、色々なアイディアを持っていましたし、自分のアイディアを発表するのもとても楽しかった。例えばデジタルミラーは私のアイディアです。このアイディアはリアシートに座っている人でも同じ絵を見られるようにしています。これはデジタル機能でないと出来ないもので、今はショーカーでしか採用していませんが、安全面でも役に立つ機能なのです。

そのほかにもデジタルユーザーエクスペリエンスの機能、操作して楽しいと感じるものを色々提案しました。やはり使っていて楽しくないといけませんよね。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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