アウディ『Q3』が仕様変更されて新登場した。変わったのは外観の小変更ならびにエンジンである。外観ではシングルフレームグリルに手直しを受けたほか、前後バンパーとヘッドライトなど。一方エンジンはクワトロ用の2種の2リットルエンジンがともにパワーアップされ、従来170psだったベースグレードは、10psアップされて180psとなった。今回試乗したのはこの180ps版。一方高性能版は9psアップされて220psとなっている。都会的センスでまとめ上げられた外観は、クロスオーバーとして街中を走っていても何ら違和感を感じないほど溶け込め、それでいながらノーマルモデルでは170mmもの最低地上高を持つから、ちょっとしたオフロードなら何の心配もなく入っていけそうだ。ただし、今回試乗したのは「Sラインパッケージ」と称するスポーツサスペンション装備車で、最低地上高は150mmとなる。一般道ではかなり引き締まった印象を与える足回りだが、それでいながらしっかりとフラット感を演出し、硬さを感じさせるシーンはほとんどない。このあたりの足の煮詰め方がヨーロッパ車、特にドイツ車は非常にうまい。おかげでほぼどのような状況でも快適さは損なわれず、スポーツシート(Sラインに標準装備)のサポートの良さと相まって、クルージングからファン・トゥ・ドライブの領域の走りまで、文句なしの心地よさを提供してくれる。これが「乗って良し」。「走って良し」は、高速でのクルージングでのスムーズな走りから、少し気合いを入れたワインディングでの走りまで、相当に鞭を入れてもクルマの方が即答してくれるレスポンスの高さ。そして1.6トンの車重にもかかわらず、軽快な走りを持っている点。例え非力な180ps仕様でもパフォーマンスは十分である。最後の「でもね…」については、必ずしも100%の満足感が得られなかったことに起因する。それは費用対効果に関しては少しがっかりな部分があるからだ。まず素の車両本体価格は469万円とまあ、このセグメントのクロスオーバー車としてはそれなりの価格。前述したSラインパッケージを含む試乗車のオプション価格合計は124万円。これだけでほぼ、スズキ『アルトRSターボ』が買える値段だが、それは置いておいて、これだけの投資をするわけだから、ラグジュアリーカーに求められるすべての要素は一応取り揃えておいてもらわないと困る。例えばクルーズコントロールなどはすべてオプションで標準装備されない。しかもオプション設定されるクルーズコントロールにしてもいわゆるACCではない。今時国産コンパクトカーでも標準装備があるクルーズコントロールがつかず、しかもVW『ポロ』でも設定のあるACCはこの値段で設定すらないのはいかがなものかと思うわけだ。他にもやはりVWならほぼ標準装備されるいわゆるシティーエマージェンシーブレーキなどはその設定すらない。これが「でもね…」の最大の要因だ。■5つ星評価パッケージング ★★★★インテリア居住性 ★★★★★パワーソース ★★★★フットワーク ★★★★★おすすめ度 ★★★中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
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