【ルマン24時間 2015】タイヤも特異なNISSAN GT-R LM NISMO、「なるべく細く、空気圧は低く」

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日産23号車(GT-R LM NISMO)
  • 日産23号車(GT-R LM NISMO)
  • ミシュランのNissan GT-R LM NISMO用タイヤ
  • 展示用車両のタイヤ。FFのため、前31/71-18、後20/71-16という前が太くて後ろが細いサイズ。
  • 展示用車両のタイヤ。FFのため、前31/71-18、後20/71-16という前が太くて後ろが細いサイズ。
  • #21 Nissan GT-R LM NISMO C
  • 日産22号車(GT-R LM NISMO)
  • ミシュランのタイヤサービスの様子(ルマン2015)
  • ミシュランのタイヤサービスの様子(ルマン2015)

フロントエンジン前輪駆動というユニークなレーシングカー『NISSAN GT-R LM NISMO』は、タイヤも当然のことながら特異なものとなる。同車へタイヤを供給するミシュランのレーシング・テクニカル・ディレクター、ニコラ・グベール氏に、ルマン決勝中に話を聞いた。

最初に日産がFFでやりたいと聞いたときはどう思ったのだろう。「それは驚きました。でもベン・ボウルビー氏(日産LMP1チーム代表)にコンセプトを聞くうちに面白い、やりがいがあると思いました。彼らはイノベーションがしたい。我々にとっても、レースに参戦するもっとも意味は、市販車へフィードバックできる開発の場であるということですから、イノベーションに共感しました」。

FFのタイヤはどういった特徴があるのか? 「FFは前に大きな荷重がかかり、後は軽い。日産からのリクエストはリアタイヤをなるべく細くすることでした。どこまで出来るのか? 何度もディスカッションして決めました。それと、空気圧は低めで使いたい。あまりリム径を大きくすると、空気圧を高くしなくてはなりませんし、小さくしすぎると意味がありません」。

F1のタイヤは長年13インチが使われてきたが、それはエアボリューム大きく、低い空気圧で使えて、性能が出しやすいからだ。ただし、今や市販車でそんな小さなリム径のタイヤはごく少数であり、フィードバックできる技術開発を考えると「意味がない」ということだ。

「そこで、意味のあるミニマムサイズということで16インチを想定しました。ところが、日産は当初、エネルギー回収システムをあまり大きくできず、そのかわりにローター径の大きなブレーキを採用する必要があるとのことで、フロントタイヤは18インチになりました。それでフロント18インチ、リア16インチという組み合わせになっています。太さはフロントが31センチ、リアが20センチです」。

実際に走らせてみて、性能は想定通りに出ているのか? ウエットのテストではコンペティティブなタイムを記録してもいるが。

「まだテストの量が十分ではないので、なんとも言えません。ピークのパフォーマンスを使えているかどうか見極められていない段階ですから。ウエットも悪くはなさそうだと予想はしていましたけど、もう少し経験してからじゃないと判断できないですね」。

決勝レースでは、リアタイヤのライフが長く、フロントタイヤを2回交換する距離を1回交換で済んでいる。レギュレーションではタイヤのトータルの使用本数に制限があるので、これは有利に働くし、省資源とみることもできる。

「我々はレースで耐久性が高く、周回を重ねても性能の落ち込みが少ないタイヤを開発しています。それを市販車にフィードバックできれば、省資源になるからです。リアタイヤのライフがフロントタイヤの2倍だというのは、たしかに省資源にも思えますが、もしかしたらもっと細くできるということかもしれませんね。

日産の挑戦はまだ始まったばかりで、我々も学んでいるところです。でも凄くいいことだと思いますね。市販車の多くはFFなんですから、フィードバックできる技術をたくさん蓄積できるでしょう」。

最後にルマン特有の難しさを聞いてみた。

「普段は公道ですから、テストがほとんど出来ないのが難しいところです。レース前に一日走れるだけですからね。我々はそれなりにここでの経験を持っていますが、それでも新しいタイヤを開発したときに、実際にどうなるか確認ができない。とくに路面温度が下がったナイトセッションで、チームはタイヤ交換を減らしたいと考えるのですが、本当にいけるかどうかの確認をとるのが大変です。

もう一つは、ストレートが長いことですね。コーナーのほうがタイヤに厳しくストレートは楽なんじゃないかと思われるかもしれませんが、ダウンフォースが効くクルマで300km/hオーバーで走る時間が長いですから、タイヤに大きな荷重がかかります。それが厳しいのです」。

《石井昌道》

石井昌道

石井昌道|モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストに。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイクレースなどモータースポーツへの参戦も豊富。ドライビングテクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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