3月22日にNLS耐久シリーズの開幕戦『NLS1』がドイツ・ニュルブルクリンクで開催された。SP8Tクラスでは、新たに2025年シーズンから起用した「TOYOTA GAZOO Racing」(TGR)の若手ドライバー、中山雄一選手と小高一斗選手が『トヨタ・GRスープラ GT4 EVO2』#160でアグレッシブな走行を繰り広げ、クラス2位入賞を獲得と、初戦から幸先の良いスタートとなった(総合29位/115台中)。

またNLS耐久シリーズで昨年度SP10クラスのシリーズチャンピオンに輝いた、アンドレアス・ギュルデン選手/ティム・サンドラー選手/マルク・ヘネリッチ選手がドライバーを務めるポルシェ『911 GT3 Cup MR』(991.2)#347がSP-proクラス1位(総合18位/115台中)、プロクセスブランドアンバサダーの木下隆之選手らがドライバーを務めるSP10クラスの『トヨタ・GRスープラ GT4 EVO2』#170はクラス4位(総合30位/115台中)といずれも完走を果たし、今後につながる成績を収めた。

NLS1は過酷な環境下でのタイヤ性能とドライバーやチームの総合力が試されるシリーズの初戦であり、今後のシーズンを占う上で重要なレースだ。早速NLS1の結果をレポートする。
TGRの若手ドライバー4名がトーヨータイヤへ電撃加入!ポルシェ 911 GT3Rの開発も本格スタート

トーヨータイヤの参戦チーム「TOYO TIRES with Ring Racing」ではSP10クラスと上級グレードのSP-PROクラスに加えて、今年からはSP8Tクラスにも参戦している。


SP8Tクラスの車両は『トヨタ・GRスープラ GT4 EVO2』で、TGRドライバーの中山雄一選手、ジュリアーノ・アレジ選手、小高一斗選手、小山美姫選手の4名の参戦が決まっている。レース活動を通じて得られた知見をタイヤ開発にフィードバックするとともに、若手TGRドライバーの育成をサポートしていく。NLS1では中山選手と小高選手が参戦、ピットではOBの中嶋一貴氏も顔を見せるなど、TGRとしてもニュルの本気度が一味違うと感じられる。

また、昨年2024シーズンではテストとして出場していたポルシェ911 GT3 Cup MR#347が、今年から本格的に参戦。NLS1ではワークスカラーに彩られたマシンが華々しくデビューし、将来を見据えたタイヤ開発が進められていく。
トーヨータイヤブルーに彩られたポルシェは非常に精悍な印象。選手たちの反応も好評で「クールだね!このカラーだけでも速くなったみたいだよ」(アンディ選手)。NLS1でもレースをノントラブルで走破した#347は今後の走りにも注目だ。
中山雄一・小高一斗選手に初戦の感触をインタビュー、マシンもタイヤも手応えあり

TOYO TIRES with Ring Racingとして初参戦となった中山選手・小高選手はアタックの速さやレースペースも国内トップレベルの素晴らしい快走で初戦から2位表彰台を獲得。走り終えたばかりの2人に今回の参戦経緯やNLS1の感想をインタビューした。
Q.TOYO TIRES x TGRでニュルに挑戦する経緯を教えてください

TGRでは、海外で活躍できるドライバーを育てており、私もそのメンバーに入っているのですが、中でもニュルに出るためにはパーミットの取得など前提条件が必要で、私や小高選手はそのライセンスを持っているということで挑戦の機会をいただくことができました。

また、ここで走ったことがある経験は、今後のレース人生において大きな意味を持っていると思います。トヨタさんもこのニュルを舞台にハイパフォーマンスタイヤをトーヨータイヤさんが開発しているというところで、お互いの目指していくところがマッチしたのだと考えています。
トーヨータイヤさんがこのニュブルクリンクでタイヤを鍛えてもっといいものを作っていこうという点、TGRの人を育てよう、人を育ててもっといい車作りにつなげていこうという目標、目指しているものの高さがすごくマッチしています。このレースに出られたことが私達にとっても有意義なもので、まず第1戦、このような形で終えられたことにとても感謝しています。(中山選手)
Q. 過去のニュル参戦の経歴を教えてください

ニュルブルクリンクは2018年と19年にTGRの活動でトヨタ『LC』の開発をしている時に2年間、24時間耐久レースとVLN全部で6戦出ました。(中山選手)

私は去年パーミット取得で2レース出まして、今回のNLS1と合わせて計3回です。フルパワーのGT4のマシンで走るのは今回が初めてになります。(小高選手)
Q. 今回ニュルを走った中での感想を簡単に教えてください

去年、IMSAでスープラGT4で戦った経験もありますし、国内のレースもGT4で走ったこともあるので、想像はついていたのですが、ニュルの過酷なコースでどんなパフォーマンスを発揮するのかは分からず、ちょっと不安でした。今回初めてこのレーシングカーでニュルを走った印象として、かなり限界領域まで攻めてもしっかり応答してくれると感じています。
またGRスープラで開発を続けてきたタイヤということもあって、特に北コースを限界まで攻めた時に何か不安を覚えるような怖い思いをする挙動というのはなく、グリップの限界まで攻めることができたので、車両とタイヤのマッチングもかなり高いレベルで進んでいるという印象を受けました。(中山選手)

私は普段日本でGT3に乗っていて、GT4の経験がなく、去年ニュルへパーミットを取りに来た際、GT4に初めて乗りました。GT4はGT3に比べるとちょっと重いのかなと思っていましたが、ダウンフォースが少ない印象でした。去年ここで走っていたので、今回はスムーズに入ることができました。(小高選手)
Q.今回のレース(NLS1)を通じて感じた『PROXES Slicks』(ニュルブルクリンクスペック)の感触はどうでしたか?

GT4の車両が半年ぶりということもあって、ドライバーとしては普通に不安になるんですよね。これだけ過酷なコースなので、どんなタイヤ・車両であっても初めてなのでどういう挙動をするのかわからないので。
GT4のGRスープラに乗ったことはあると言っても、チームが違えば全く違う車にも感じるので、グリップの限界まで攻めた時にどう挙動するのかはわからず、それがニュルというところですごく不安はあったのですが、タイヤとしてはすごくよかったです。

例えば夜の北コースはクラッシュする車両もいれば、コースアウトによって砂が出たり、走れば走るほど路面のコンディションが変わり、コーナーごとにグリップが全然違うのですが、そういったところでも安定したポテンシャルを持っているなという手応えを感じました。

走れば走るほど、車の限界を追い求めて、もっと速いスピードでコーナーに入ろうとしていくと、全開では車は曲がりきれないので、いろんな問題が起こります。今まで国内で培ってきた自分の経験を元に、より攻めこんでいったのですが、すごく怖さを覚えるという感触はなかったです。
最後はタイヤが助けてくれるという安心感があり、もっと早く走りたい、もっと高い次元で車を操縦したいと思うので、フィードバックと改善を図り、今日出したタイムを更新できたら嬉しいなと思います。(中山選手)

中山選手も言った通りですが、今回初めてトーヨータイヤを履いて、トラブルもなくしっかり走りきれたというところは良かったなと思っています。

これから一緒に開発するというところで技術スタッフをはじめタイヤメーカーの方が近くにいながら常に進化できる状態にいることは、ある意味伸びしろしかないと思いました。(小高選手)
Q. 次戦に向けての意気込みをお願いいたします

これからジュリアーノ選手、小山選手も同じクルマへ乗ることになるのでまた新しいフィードバックももらえると思います。今回、しっかり自信を持って走れる感触を得られたので次回はもう少し早いタイミングからいいパフォーマンスを出していけるなという自信があります。
チームとも常に情報をシェアしながら、安定した走りを見せたいです。とにかく本当にいろんなことが起こるのがニュルですから。気を引き締めて、もっと速く走るために何が足りないのかというところをフィードバックしていけたらいいなと思っています。(中山選手)

まずは今回出た課題をしっかり次に向けてクリアできるように、自分たちもそうですし、タイヤとしても進化をできる何かをまた見つけられる時間になればいいなと思っています。中山選手も仰ってましたが、ドライバーが増える中で、私たちとはまた違うコメントも出るでしょうし、もし、同じコメントが出れば、信憑性が増すと思うので、よいタイヤづくりに貢献できるのかなと感じています。(小高選手)
ニュル24時間耐久レースへ向けた4連戦に突入、熟成したGRスープラ GT4 EVO2でのクラス優勝に期待

6月に開催を控えたニュル24時間耐久レースだが、この4月末から5月にかけてなんと4レースも開催される。4月26日にNLS2、5月11日にNLS3、5月24日から25日にニュル24時間予選レース(第1レース、第2レース)を戦い抜いた後に、いよいよ6月22日から23日にニュル24時間耐久レースの本戦を迎える。

つい先日開催されたNLS2ではSP-proのポルシェは残念ながらDNF、SP10クラスでは不運にも序盤のレーシングインシデントでピットインを余儀なくされる中、木下選手の怒涛の追い上げもあり最終的にはクラス3位でのフィニッシュを果たした。

昨年のニュル24時間では天候にも翻弄され、本来の力を発揮する前にレースが天候悪化で終了してしまったトーヨータイヤ陣営。5年分の雪辱を果たすべく、この4連戦で着実にマシンとタイヤのアジャストが進められていく。次回はニュル24時間耐久レース直前の2連戦をレポートするので、トーヨータイヤのニュル挑戦を応援しよう!
TOYO TIRES『PROXES』の製品ラインアップはこちら《取材協力:トーヨータイヤ》