2010年3月に発売して以来、空冷エンジンならではの味わいや端正なスタイリングなどで、ベテランライダーを中心に人気を博すホンダ『CB1100』。2014年2月発売の改良新型では、これまで5速だったミッションを6速化し、さらにトラディショナルな造形美を追求したバリエーションモデル『CB1100EX』をラインアップした。
集合マフラーやキャストホイールを採用するスタンダードのCB1100に対し、EXでは2本出しマフラーにワイヤースポークホイール、そして3リットルほど容量の大きい燃料タンク(17リットル)を装備。それぞれにABSの有無が選べ、さらにグリップヒーターやETC車載器を装備する受注生産車「ABS E Package」も設定された。
CB1100EXに乗ってまず気がつくのが、シート高がスタンダードよりも若干高いこと。タックロール調のシート表皮で、クッションも厚め。この座り心地は“往年のCB”のイメージを求めていた人には違和感がないはずで、むしろ嬉しいだろう。
排気音にもこだわりを感じる。集合マフラーは抜けのよい高周波音が気持ちいいが、2本出しのEXでは低く乾いた音。これは好みが分かれそうだ。
エンジンは低中速からトルクがしっかりあって、一般道なら高めのギヤでゆったり流すのが気持ちいい。もちろん高回転までしっかり回せば、加速は充分すぎるほど。見た目はジェントルだが、走りが大人しいというわけではない。
6速が加わったことで、高速道路でもゆったりと走れるように。3000rpmも回っていれば100km/hクルージングができ、追い越し時もシフトダウン不要で、そこからアクセルをひと開けすれば、しっかり加速してくれる。
ハンドリングは安定志向で、70年代のCBのようなヒラヒラとした感覚ではなく、落ち着いていて安定志向のもの。13kgの重量増が影響してか、スタンダードと乗りくらべれば若干の重さを感じるが、さほど気になるものではない。
そんなことよりも、このシンメトリーな美しさ。若い人には新しく見えるかもしれないし、かつてのCBを知る人には懐かしさを感じるはず。いずれにせよ飽きがなく、長くつきあえそうな1台だ。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
快適度:★★★★
タンデム:★★★★
オススメ度:★★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。国内外のモーターサイクルカルチャーに精通しており、取材経験はアメリカやヨーロッパはもちろん、アフリカや東南アジアにまで及ぶ。自らのMXレース活動や豊富な海外ツーリングで得たノウハウをもとに、独自の視点でオートバイを解説している。現在、多くのバイク専門誌、一般誌、WEB媒体で活動中。