【池原照雄の単眼複眼】202X年、高速道自動運転へ第一歩「Futureアイサイト」

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次世代アイサイトのデモンストレーション
  • 次世代アイサイトのデモンストレーション
  • 富士重工 岩瀬勉 プロジェクトゼネラルマネージャー
  • 富士重工業 次世代アイサイト技術発表会
  • 運転支援システム、アイサイト(参考画像)

自動ブレーキに注目、国内で15万台突破

富士重工業(スバル)が自動ブレーキ機能をもつ運転支援システム「アイサイト」の次世代版技術を発表するとともに、2020年代には高速道路での自動運転技術の確立を図る方針を示した。20数年に及ぶ開発実績がある車載用ステレオカメラ技術を核に、まずは高速道というより現実的なフィールドでの自動運転をめざしていく。

現在、富士重工の登録車のほとんどにオプション設定されているアイサイトは2008年に、ステレオカメラや制御装置による衝突被害軽減ブレーキや全車速追随クルーズコントロールなどの運転支援技術として登場した。センサーはステレオカメラのみという運転支援技術は世界でも初めてだった。

その2年後の10年には「バージョン2」と呼ぶ現行タイプを発売した。自動ブレーキ機能の向上で相対速度約30km/h以下なら前方の車両などとの衝突を回避する「ぶつからないクルマ」として、反響を呼んだ。国内では9月までの3年半で搭載車は累計15万台に達し、最近ではオプション設定車の約8割のユーザーが購入しているという人気ぶりだ。

次世代版は自動運転への「第一歩」

「バージョン3」となる次世代版は、14年発売予定でまったく新規に開発している「新コンセプト車」から順次採用する。ステレオカメラの視野角と視認距離をともに40%拡大させるとともに画像をカラー化し、センシング機能を大きく向上させた。これによって、自動ブレーキによる衝突回避の相対速度も約50km/hに引き上げている。また、クルーズコントロールを作動中に走行車線の中央部を維持するよう自動操舵する「レーンキープアシスト」などの新機能も追加した。

注目されるのは、この次世代版を「自動運転技術への第一歩」と位置付けたことだ。アイサイトの開発を担当する岩瀬勉プロジェクトゼネラルマネージャーは「スバルはドライバー責任での自動運転をめざしており、アイサイトを軸にまずは高速道での技術確立を図る」と言う。同社は、来年に実用化する次世代版のさらに先の技術を「Futureアイサイト」とし、「202X年」つまり20年代には高度な自動運転技術を実現したいと展望している。

「自動運転」というと、行き先をセットすれば無操作で人やモノを運んでくれるというのが究極の姿ではあろうが、20年代にそこまで行くのは難しいとの見方が一般的だ。20年をめどに「革新的な自動運転技術」を複数の市販車に搭載するという日産自動車も「(20年までの)ある日、完全無比の自動運転車が登場するということではない」(技術開発本部長の浅見孝雄常務執行役員)と“注釈”する。

「ドライバー責任」を前提に開発する

当面は、ドライバーがいざという時には介入して安全を確保するという技術から入っていく。そして走行路には基本的にクルマとバイク以外は存在しないという高速道や自動車専用道での運用導入が現実的だ。それでもドライバーの負担は大きく軽減され、効率運行による省エネ、そして何より事故の飛躍的な減少というこの技術の最大の狙いにおいても成果が期待できる。

富士重工が来年投入する次世代版アイサイトでは、前述のようにハンドルを自動操舵するレーンキープアシストが新たに加わる。車線内の中央部走行を維持しながら先行車を追随したり、走行レーンからの逸脱を抑制したりする機能をもっている。速度が65km/h以上の時に、専用スイッチで作動するが、ドライバーがハンドルを操作する状態にないのを感知すると、機能はキャンセルする仕組みにもなっている。

このほかの自動ブレーキの機能向上なども勘案すると、「高速道でのドライバー責任による自動運転技術」としては、まさに「第一歩」と言ってよいのではないか。その完成の域に向けては、自車の前方だけでなく周囲の状況を把握するためのセンサーの追加や制御システムの機能向上などが必須となる。それは「Futureアイサイト」によって202X年での実現を目指していくことになる。


《池原照雄》

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