レクサスの新型『IS』プロトタイプの全モデルをテストしたが、3.5リットルを搭載する「IS350 Fスポーツ」にだけ次世代レクサスの強烈な自我意識を感じた。愚直な開発陣が抱く“あと一歩”の不満を、電子デバイスの数々がまるで彼らの心を読み取るかのように、そっと補完しているからだ。
50~60km/hでワインディング路をさらりと流すだけでもニンマリ。飛ばさずとも楽しい。だから、自然と欲望は満たされる。人と会話する術を新型ISはつかんだようだ。
みっちりと詰まったエンジンを支える高剛性ボディと、そのボディに安心して身をゆだねるサスペンション。先代ISのFスポーツが目指した硬さとは無縁の世界を、新型では後輪操舵(DRS)を含むLDHが現実のものとした。
走りはべた褒めだが、そのほかでは荒さも目立つ。左手で操作するリモートタッチやエアコンスライダーと、右手がメインとなるステアリングスイッチやクルーズコントロールレバーの類は明らかにHMIのフェーズがずれている。また、生産技術はすばらしいが『LFA』と同じ構造のスライド式メーターリングによって制限を受けた情報表示エリアは狭く、明らかに飽和状態だ。
ほかにも、ステアリング角を3度立てヒップポイントを20mm下げて手にしたドラポジや、一体感を強調したインパネデザインは好印象ながら、ステアリングコラム上部に当たった外光が、そのままメーターパネルに反射してしまうため、せっかくのドラポジが活かせない。この現象は、テスト車がプロトタイプであったことによるものだと願いたい。
■5つ星評価(350Fスポーツ)
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
西村直人|交通コメンテーター。1972年東京都生まれ。クルマとバイク、ふたつの社会の架け橋となることを目指す。得意分野は人間主体のITSとHMIの検証だが、近年は次世代のモビリティ形態として世界中から注目されている「パーソナルモビリティ」を中心に、交通インフラを含めた取材活動を積極的に行なう。