こんな時代になにやっているんだと経済記者に突っ込まれ、上層部がしどろもどろ会見になった『フェアレディZ』の発表会。
しかし、しどろもどろの本当の理由は、おまえみたいなクルマの楽しさがわかんないヤツに言われたかねーよ、という気持ちの表れだったに違いない。乗ってみろ、経済記者。そして感じてから質問しろ。フェアレディZは、そういうクルマだ。そしてそのロードスター。ちょっとおデブなんじゃないの? というデザインの違和感がすっきり解消され、実にクールな仕上がりになっている。
ロードスターになっても、重いパーツをセンターに集め、操縦性のリニア感を追い求めた重量バランス。パワーを受け止め地面を蹴り、ボディを支えるサスペンションは、低速で走っていても懐の深さにうっとりする。でも、なによりZの真骨頂はエンジン+ミッションだと思う。7速ATの変速の速さとなめらかさ。アクセルに対して見事に期待にこたえる加速感と音の調和。
でも、せっかくZに乗るのなら、絶対MTを選びたい。ヒール&トゥを代わりにやってくれるシンクロレブ・コントロールの楽しさったらありゃしない。特に3速から2速へのシフトダウン。シフトレバーをいじるだけで、絶妙のエンジン回転数で受け入れさせるその見事さと爽快感は、それだけで体温が0.3度は確実に上がる。
悪かったわね、こんな時代にこんなクルマで。しかもロードスターまで出しちゃって。でも、こういうバカさ加減が世界をハッピーにさせているんだと、私は思うんだよね。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト
1962年横浜市出身。いま一番購買力があるとされるアラフィー世代を代弁する軽妙な論調に定評あり。交通安全啓蒙に力を注ぐほか、子供たちに命の大切さを伝えるノンフィクション作家としても活動。近著に『ハチ公物語 - 待ちつづけた犬 -』(講談社青い鳥文庫)。