そもそも世界レベルのパフォーマンスを備えているというのに『GT-R』は、さらに貪欲に速さを求めるという。「スペックV」がそれだ。
2名乗車になることなどかまうことなく、リアシートを取り払うなどしてまで軽量化を進め、さらに剛性の高いサスペンションを押し込み、ハイギアードブーストというまさに”オーバーテイクスイッチ”的な使い方を許すシステムも組み込んだ。超攻撃的マシンが「スペックV」なのである。
だからサーキットではとびきり速い。09モデルも確実に進化をしているのだが、それと比較しても、仙台ハイランドのラップタイムで約1秒の短縮を実現している。手元計測で1分57秒台を連発した。おそらくニュルブルクリンクでは7分30秒を軽々と切ると思われる。
切れ味の鋭いハンドリングが特徴だ。ボディ重量で60kgのダイエットに成功しているが、体感的にはそれ以上の軽快感がある。特にフロントの反応が俊敏だから、まさにエイペックスを突き刺すようなフットワークが得られるのだ。
ゴツゴツした硬い乗り味を予想していたのだが、サーキットではむしろしなやかに路面を舐めるような感覚だった。カーポンブレーキも効きも秀逸。強い力で締めこむような感覚であり、連続アタックでも効きが衰えない。そこに大きなメリットがある。国内最速のマシンは、ポルシェや『コルベット』と世界と対等に勝負する権利を得たといえる。
■5つ星評価
パッケージング:★★
インテリア/居住性:★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★
木下隆之|モータージャーナリスト
プロレーシングドライバーにして、大のクルマ好き。全日本GT選手権を始め、海外のレースでも大活躍。一方でカー・オブ・ザ・イヤー選考委員歴は長い。『ジェイズな奴ら』を上梓するなど、作家の肩書きも。