シトロエン『2CVコンセプト』にアルピーヌPS1こと『A310ヴィジョン』、また次世代の電動『A110』の彫刻やルノー『ゴルディーニ』(R8ではない)、さらにプジョーは『E-T16コンセプト』と『RCZコンセプト』を、DSは『DS F3ver』を発表するなど、パリモーターショーことモンディアル・ドゥ・パリ2026では「レトロの嵐」が吹き荒れた。
◆レトロデザインはタブーだった

元ネタとなる過去モデルは、大衆車からスポーツカー、若手登竜門的ワンメイクのベース車両からグループBマシンまで多岐にわたる。ひと昔前なら「レトロ」は、歴史やそれにまつわるモノは好きだが進歩史観がやたら強いフランスならびにフランス車においては、禁じ手とまでいわなくてもタブーに近かった。
それがタブーでなくなり、各メーカー&ブランドが足並みを揃えたように昭和あるいは平成期の懐かしい車種を本歌取りして、次世代BEVを突如提案するようになったのは、まさしくパンドラの箱が開いた感がある。それはようやく日本にも導入されそうなルノー『5 E-TECH』の本国での大成功、およびアルピーヌ『A290』のスマッシュヒットに負うところが大きい。
2000年代後半、シトロエンが1954年のオリジナル「DS」に基づきつつも『DS 3』を世に問うた時、さらにDSが独立ブランド化した時、「アヴァンギャルド」を掲げた。当時「レトロ」は、文字通り後ろ向きなキーワードと捉えられかねなかった。だから2026年の「レトロ」っぽく見えるコンセプトカーも、決して過去コピーではなく、あくまで今の時代に沿ったカタチで考え方を再解釈したもの、このロジックが要る。ある意味、DS F3verは非SUV的シルエットで、近い将来の『N°3』と初代DS 3を結び合わせている。

いずれにせよ、まだデザイン・コンセプトというか車としての考え方、アイデア提案の段階で、逆にいえば商品化できるかどうか、各社が観測気球を上げている側面もある。価格帯の言及にまで踏み込んでいたのはシトロエン2CVコンセプトぐらいで、プジョーの2台はインテリア内装をも披露していたが、ゴルディーニとA310コンセプトはうっすら透けて見えるのみ。後者は4.5m強の全長からいっても2+2クーペの可能性、つまり2座のスポーツカー以外も展開しうるアルピーヌ・パフォーマンス・プラットフォームことAPPのポテンシャルを、仄めかすに留めた。
それでいて、各車とも魅力的なアイデアやエクステリアの提案という初期段階で、多大な反響を集められたことはきわめてポジティブといえる。
◆日本仕様の実現に立ちはだかる「3つのボトルネック」

フランス車メーカーには大抵、「synthèse(サンテーズ)」と呼ばれる顧客周りの声を拾い集める担当がいる。これは「SAV(service après vente)」と呼ばれるお客様相談室ではなく、マーケティング部の管轄下で、次に異動するとしたら商品企画で開発プロジェクトのまとめ役、つまりプロダクト主査コースだ。平たくいえば、コンセプトをできるだけ忠実な市販プロダクトにまとめる職種がいる分、期待はできる。ちなみに見るべき市販モデルとしては、プジョー『E-208 GTi』、アルピーヌA290やA390の新しい内外装トリムといったところだった。
だがこの先、気になるのは今回のコンセプトのいずれもがBEVであること。ICE搭載の可能性を否定しないメーカーもあるが、市場動向や情勢によりけりで、あくまでそうした条件付きだ。すると、これら魅力的なコンセプトが日本仕様となるまでに心配すべき現実的なボトルネックが、3つほどある。









