「ロータリーを作り続ける」MX-30 e-SKYACTIV R-EV…オートモビルカウンシル2023

マツダ MX-30e-SKYACTIV R-EV(欧州仕様)
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マツダは、2023年1月に開催されたブリュッセルモーターショーで初公開されたロータリーエンジン搭載のPHEV、『MX-30 e-SKYACTIV R-EV』をオートモビルカウンシル2023で日本初お披露目した。このクルマの概要についてマツダに話を聞いた。

マツダ MX-30e-SKYACTIV R-EV(欧州仕様)マツダ MX-30e-SKYACTIV R-EV(欧州仕様)

◆好意的に受け止められたロータリー復活

---:ヨーロッパで初お披露目をしましたが、その反響はいかがでしたか。

マツダコーポレートコミュニケーション本部コミュニケーション企画部の小宮山裕介さん(以下敬称略):私自身もその場に居合わせたのですが、想像以上にロータリーエンジンに対するお客様の期待の高さを感じました。ロータリーエンジン車に慣れ親しんだ世代の方達だけでなく、より若い方々にも思った以上に興味を持って頂けていることを肌身で感じましたので、それはすごく嬉しかったですね。

---:つまり、全体として好意的に受け止められたということですね。

小宮山:そうですね。幸いなことにロータリーエンジンを載せるということで関心を持って頂いていますし、それをきっかけにMX-30が持っている全体の商品性のところにも、関心を抱いて頂けているかなと思っています。

◆REはちょうど真ん中

---:MX-30のモデルラインナップは、このe-SKYACTIV R-EVを入れて3つとなりました。それぞれどういうお客様に買って欲しいと思っているのでしょうか。

小宮山:まずバッテリーEV(BEV)の「e-SKYACTIV EV」は環境に対する貢献意識が高く、比較的シティコミューターに近い使い方が中心の方々だと思っています。

ハイブリッドモデルの「e-SKYACTIV G 2.0」は内燃機関モデルですので、普段使いから遠出までお使いになる方。技術的に環境貢献はできつつも、そういったカーライフを変えずに乗り続けて頂けたいと思われている方々に向けたクルマです。

そしてe-SKYACTIV R-EVはちょうどその間に来るイメージです。いまEVシフトが進んでいく中で、環境貢献はしたい。けれどもまだ航続距離や充電環境が気になる。特に日本ではマンションの方も多いでしょうから、なかなかBEVに踏み切れないという方が多くいらっしゃいます。まさに過渡期の状況ですよね。そういった方々に、EVとして使いながら、不安を払拭できる新しい選択肢になるパワートレインとして今回追加を決めました。

マツダ MX-30e-SKYACTIV R-EV(欧州仕様)マツダ MX-30e-SKYACTIV R-EV(欧州仕様)

◆コンパクトなREだからこそのメリット

---:そこで議論となるのが、あえてロータリーを搭載したということです。当然レシプロエンジンもありますので、それを使うという選択肢もあったでしょう。ここであえてロータリーに踏み切ったのはなぜですか。

小宮山:どんな形であってもロータリーエンジンを作り続けるということは、我々の大事な使命だと思っています。いま世の中としては少しずつEVに移り変わっていくのが現実ですし、環境貢献の意識もどんどん高くなっていく中で、EVとしてできるだけ使っていただける環境を整えたい。そうするとなるべくEVとして使える領域(電動での走行範囲)を広げていきたいわけです。

e-SKYACTIV R-EVの場合、17.8kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載していますので、ヨーロッパでいうと85kmくらいは発電のためにエンジンを稼働させず、ピュアなEVとして走行できます。日常的に考えると、日々の通勤やお買い物であれば、だいたいピュアなEV走行で済むと思います。ですので、お出かけする前に満充電になっていたら、EV走行だけで行って帰ってこられるでしょう。そして、夜中のうちに充電しておけば次の日もそのままEVとして使えるわけです。

マツダ MX-30e-SKYACTIV R-EV(欧州仕様)マツダ MX-30e-SKYACTIV R-EV(欧州仕様)

そして、もっと長距離を走りたい時にどうするかというと、何らかの形で発電と充電をしなければいけません。その時に、パワーソースとしてエンジンを使いタイヤ駆動するパラレル式も考えました。しかし、よりEVとして使ってもらえるように、モーターだけで動くようにしたいですよね。

その場合EVモデルで培ってきたモーター駆動の制御技術はそのまま使えるのですが、欧州を視野に入れると最高速140km/hくらいまではモーターだけで走らせるようにしたい。そのためにはモーターの出力を上げないといけないので、モーターを大きくしないといけない。そこに加えてエンジン、例えば4気筒や3気筒のレシプロエンジンを乗せると、MX-30の中に納まらなくなってしまうのです。ここでロータリーエンジンのコンパクトさが効いてくるわけです。ですから、このロータリーエンジンは直接タイヤを駆動することはなく、あくまでも発電用で、e-SKYACTIV R-EVはプラグインハイブリッドという位置付けです。

---:ロータリーエンジンを搭載するにあたり、技術的なポイントはありましたか。

小宮山:一番大きいのはロータリーエンジンとして初めて直噴化したことでしょう。そうすることで自分たちが燃焼室の中に一番吹きたいタイミングで、一番吹きたい場所に効率的に燃料を吹くことで、一回の爆発で綺麗に急速に燃すようにしています。圧縮比も上げ、結果として最大で25%ぐらい効率が上がってます。

マツダ MX-30e-SKYACTIV R-EV(欧州仕様)マツダ MX-30e-SKYACTIV R-EV(欧州仕様)

同時に排ガスもきれいになりますので、環境の要件に適合させつつ、日常的にはEV走行をしますので、EVシフトが進む過渡期の中でうまくロータリーエンジンのポテンシャルを引き出せているのです。

---:MX-30のラインナップの中で、このe-SKYACTIV R-EVが一番やりたかったことですか。

小宮山:MX-30で一番やりたかったのは、電動化のパワートレインをきちんと揃えることでした。どうしても国や地域によって電動化のレベルに差異が出てしまいますし、お客様のクルマの使い方も、道路環境などで変わってきます。それぞれの使い方、環境規制に合わせて、それぞれ違うクルマを市場ごとに作ることはとても大変なことです。それをマツダの考え方で実現をしていくために、同じボディ形状で、3つのパワートレインを、しかもMX-30の場合は全て電動化しているのです。そういうことをきちんとやっていくのが、まさに我々がずっといっているマルチソリューション戦略を体現するひとつの証となっていると思います。

◆欧州との仕様差はなし

---:日本市場に投入する際、仕様などで差はありますか。

小宮山:仕様はほとんどヨーロッパのままの予定です。もちろん認証のモードが違うので、そういうところでのスペックの差が出てくるでしょうが、ハード的にはほとんど変わらない予定です。

日本はEVとマイルドハイブリッド、このe-SKYACTIV R-EVの3つが揃いますので、自分のライフスタイル、クルマの使い方に合わせて選んでいただけるような仕様や価格としてデビューさせるのが重要なポイントだと考えています。

---:内外装で、他のMX-30との変化点はありますか。

小宮山:基本的には共通ですが、例えばフェンダーとリアにオーナメントや専用エンブレムが取り付けられることや、給油口と給電口が左右のリアフェンダーに配されます。それから、ホイールが専用となりより空力を意識したものになります。

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今回展示したクルマは特別仕様の「Edition R」ですので、ボディーカラーが黒とマルーンルージュのツートーンになっています。このマルーンルージュは『R360クーペ』のルーフ色を復刻したものです。またシートのヘッドレストにエンボス加工が入ってます。それから、フロアマットにもオーナメントを入れたほか、そこにあるタグもスペシャルです。白い線がロータリーエンジンのアペックスシールの幅と同じになっています。

マツダ MX-30e-SKYACTIV R-EV(欧州仕様)マツダ MX-30e-SKYACTIV R-EV(欧州仕様)

マツダ国内営業本部国内商品マーケティング部の岩本麻美さん:もうひとつ大きなこだわりがあります。それはキーフォブです。MX-30のチーフデザイナーの松田(マツダデザイン本部チーフデザイナーの松田陽一氏)がデザインしました。その思いは、とにかくロータリー好きの方にロータリーを愛でていただきたいというものです。

でも実際にローターは触れられないですよね。そこで、ローターのアールとキーフォブの面のアールを合わせています。また、サイドのスリット部分はアペックスシールの幅と合わせています。このように手の中でロータリーを感じていただけるようにあえて専用に作りました。ロータリーがお好きな方に少しでも楽しんでいただけるようなちょっと細工を施しています。

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小宮山:EVにシフトする過渡期ですので、まだEVに踏み切れない方々がたくさんいらっしゃるでしょう。そういった方に向けて、EVの使い方をより拡張した、そういう新たな選択肢としてぜひこのクルマを選んでいただけると非常に嬉しいなと思っています。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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