マツダのエレガンスの原点、『S8P』がオートモビルカウンシル2025に登場

マツダ S8P
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マツダはオートモビルカウンシル2025に、カロッツェリア・ベルトーネに在籍していた時代にジョルジェット・ジュジャーロ氏(主催者表記)が手掛けたコンセプトカー、マツダS8P』を出展した。そしてその横には『ヴィジョンクーペ』が置かれていた。

マツダ S8Pマツダ S8P

マツダ(当時は東洋工業)は1960年頃からピラミッドビジョンを作成。これは乗用車市場を開拓していくために、土台となる低価格の軽自動車からスタートし、そこから少しずつ排気量や車体サイズ、車格が上がるに連れてピラミッドの頂点へ向かい、その頂点には富裕層や法人向けの高級車が位置付けられるフルラインナップ構想だった。

また当時、マツダ初の乗用車、『R360』や三輪や四輪トラックは小杉二郎氏という嘱託デザイナーが担当していたが、1959年12月に機構造形課造形係という設計部門のひとつの係としてデザイン部署が設立され、社内でのデザインや人材育成に努めるようになった。

マツダ キャロルマツダ キャロル
マツダ CHTA型三輪トラックマツダ CHTA型三輪トラック

そこで、ピラミッドビジョンの頂点に位置する上級クラスのクルマのデザインをイタリアのデザインに学ぼうということでカロッツェリア・ベルトーネに依頼。当時、プリンスはカロッツェリア・ギア、日産はカロッツェリア・ピニンファリーナなどイタリアのカロッツェリアに学ぶ気風があったようだ。

そして完成したのが1963年に開催された第10回全日本自動車ショーに出展された『ルーチェ1000』であった。しかし、世の中の動きが激しく、さらに大型車を望む声が大きかったこともあり、よりサイズの大きいクルマのスタディをしたのが今回展示されたS8Pだと伝えられている。

マツダ S8Pマツダ S8P

このクルマにはロータリーエンジンを縦置きで搭載し、駆動方式はFFが予定され、それを踏まえたデザインとなっていた。しかし当時FFはまだマツダでも実績がなく、そこにロータリーエンジンを搭載するのは冒険だということから、標準的な4気筒FR駆動のルーチェ(1966年)がデビューすることになる。当然デザイン面でもフロントを低くすることができないなど変更が加えられていた。

因みにS8Pのエンブレムは、他のロータリーエンジン搭載車と同じ三角形にmの文字が加えられていることからも、ロータリーエンジン搭載が見据えられていたことが分かる。このデザインは標準的なマツダロータリーのエンブレムと若干異なっているので、ジョルジェット・ジュジャーロ氏がデザインしたのではないかと憶測を呼び、それをマツダの関係者が本人に尋ねたところ「覚えていない」との回答だったそうだ。

マツダ S8Pマツダ S8P

一方、マツダはロータリークーペシリーズを作るべく、1967年に『コスモスポーツ』、1968年には『ファミリアロータリークーペ』をデビューさせており、続けてコンセプトモデル名『RX-87』、1969年に登場した『ルーチェロータリークーペ』が登場する。まさにこれが、S8Pをクーペにしたようなイメージだ。ここからは想像だが、既にS8Pがロータリーエンジンを搭載しFF駆動というコンセプトのもとにデザインされていることから、この案がベースになったのではないだろうか。

マツダ ルーチェロータリークーペマツダ ルーチェロータリークーペ

さて、このS8Pは日本に来て以来、暫く倉庫の片隅でほこりをかぶって眠ることになる。再び日の目を見るのは広島市交通科学館(現ヌマジ交通ミュージアム)に2011年7月に展示された時だ。しかし残念なことに、その後マツダ社内に返却されると再びほこりをかぶってしまう。そしてようやく10回目を迎えるオートモビルカウンシルで復活を遂げたのである。

今回のマツダブースのテーマは「デザインの歴史」とされた。このS8Pはマツダのエレンガンスの原点と位置付けられ、それを現代解釈したモデルが、隣に並んだヴィジョンクーペなのだ。この2台が並ぶことで、マツダデザインの流れが見えてくるようにと考えられたレイアウトだったのだ。

マツダ ヴィジョンクーペマツダ ヴィジョンクーペ
《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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