【アウディ Q4 e-tron 新型試乗】後輪駆動のアウディが示すEV観の変化の兆し…南陽一浩

後輪駆動のアウディEVはエントリーモデルなのか

マカンオーナーも嫉妬する?ルーミーな内装

2100kgという車重がもたらすもの

アウディとしてのインターフェイスが守られた実用的EV

アウディ Q4 e-tron 40 Sライン
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2022年はこれまでないほど、新車試乗でEVにあたる機会が多かった。とてもとても、すべてのニューモデルEVに試乗し切れている訳ではないが、日産『サクラ』/三菱『ekワゴンEV』のような身近な軽自動車カテゴリーから、欧州B/CセグメントのSUV/SUVクーペ辺りまで、今年は一部のハイエンドやEV専の新興メーカーだけでなく、日欧のスタンダード・クラスが続々EV化してきた。乗り手の使用環境さえ許せば、もはやEVが特別な選択肢ではなくなってきた証左でもある。

というわけで今回のアウディ『Q4 e-tron 40 Sライン』については、先行する『e-tron』『e-tronスポーツバック』『e-tron GT』に対する期待感とは少し異なるそれを抱いて、八王子での試乗会場に赴いた。

◆後輪駆動のアウディEVはエントリーモデルなのか

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そもそもe-tronである前に通常のQシリーズとして『Q3』と『Q5』の間に割って入るネーミングの論法からして、ICEとEVという「2軸ラインナップの結節点」といえるモデルだ。また直前にVWから『ID.4』が発売されて好調な滑り出しを見せている以上、グループ内の同じMEBプラットフォームをシェアするモデル同士としても、「フツーの選択肢」たるべきID.4に対し「アッパーミドル」相当であるはずのアウディQ4 e-tronが、どのように棲み分けてどう仕上がっているか、気になるのは当然だ。

4590mmという全長は、いわゆる欧州CとDのいずれにも分類しづらい+α的サイズ感ではある。他社を見渡せば『DS 7 クロスバック』と同じ数値で、全幅1865mmと全高1615mmについては、DS 7 クロスバックより30mmスリムで、20mm低い。コンパクトさに加え、しかもQ4 e-tron 40 Sラインは後輪駆動なので、前輪の切れ角確保による小回り性を高めてきたかと思いきや、最小回転半径5.4m自体はDS 7 クロスバックと同等。それよりも前面投影面積を削って、チャージ1回での航続距離を伸ばす効率化、そちらの意味合いの方が強そうだ。

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Q4 e-tronのWLTCモード576kmという最大レンジ目安は、今回試したわけではないがe-tron GTの534kmをも凌ぐ。駆動用バッテリー容量は82kWh(グロス値、ネット値は77kWh)と、e-tron GT(グロスで93.4kWh、ネットで84kWh)より1割ほど下回るにも関わらず、だ。ちなみにQ4 e-tronの空力は、地を這うようにロー&ワイドなe-tron GTのCd値0.24に迫る0.28を達成している。

それもこれも、電動開閉式の冷却エアインレットにフロントスポイラー両端の垂直ディフレクター、テールゲート周りやリアスポイラー、さらにはホイールディフレクターやドアミラーのハウジングまで、最適化を究めたがゆえ。SUVのシルエットとして例外的に見事なエアロダイナミクスと同様、パワートレイン制御も相当に磨き込まれているだろう。

とまぁここまで観察した限りでは、Q4 e-tronの2駆モデルとは、電費アタッカーかつ航続距離の長さ=チャージ頻度を遠ざけることでEVへの参入ハードルを低くするタイプではないかと、先入観をもって眺めていたことは白状しておく。走らせて見事に裏切られた印象は、後ほど詳報する。

◆マカンオーナーも嫉妬する?ルーミーな内装

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外観に続いて内装にも触れておこう。ホイールベースはたっぷり2765mm。電気モーターならではの効率的かつ有効に広げられた室内空間、そんなルーミーな内装は、Q3やQ5、あるいはポルシェ『マカン』辺りのオーナーから嫉妬を買いそうだ。平たくいってQ4 e-tronの室内は、前列と後列それぞれのシートに座った際の肘to肘の幅、座面から天井までの高さ、荷室フロアの幅に至るまで、Q5に対して指1本分ほど差はあるものの、2本分とは言い切れない、それほどにまで迫っている。

しかも後席の足元スペースはフラットフロアの恩恵がもっとも出たところといえ、感覚的だが拳2コ分ぐらいQ4 e-tronが下剋上してしまった感すらある。ボディ外寸はQ5より全長が10cm近く短く、全幅は3cm近く短いにも関わらず、だ。

無論、質感も従来のICEモデルにひけをとるところは無い。内装テーマは見慣れたSラインだけあって、操作類の配置やメーターパネルの表示ロジックなども、ICEのラインナップと地続きのまま。ただし11.6インチのセンターディスプレイはダッシュボードと一体感を増し、シフトコンソールはリアに向かってフライング状に突き出ていて、その下の大型収納と相まって、視界や手元の広さを強調する。

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他には、ステアリングが4本スポークで上側もD形状にフラット化され、10.25インチのバーチャルコクピットによるメーターパネルの視認性も改善されている。さらにオプションでARヘッドアップディスプレイも選べ、速度や警告表示、ADAS作動やルート表示まで映し出すことも可能だ。

シフト左側の電源スイッチは、ドライバーの重量を感知するセンサーと連動していて、シート上に座った状態でないとONにはならない。ウィーンとかツーンといった電気音もほとんど室内に侵入せず、表示だけが通電を知らせてくる感覚だ。握りは太いが、低速域ではさらりさらりと、軽めの応力で切れていくステアリングの手ごたえは、いつも通りのアウディらしさだ。

◆2100kgという車重がもたらすもの

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市街地でも平滑な路面なら、2100kgという車重はしっとりした乗り心地に作用している印象だ。ノーマルモードであればアクセルを強めに踏んでも310Nmのトルクがドーンと炸裂するでもなく、RWDとはいえ強烈に蹴り上げてドライバーの背中を小突くでもなく、適度に丸められたラグのないトルクが供給される。鈍重とはいわせない、歯切れいいドライバビリティも手伝い、タウンスピード域ではとても「市民的」な印象だ。Dレンジ走行中でシフトレバーでBレンジに入れずとも、手元のパドルを左>右>左>左の順に引くと、3段階ある回生ブレーキをすぐさま最強段階に、しかもステアリングから手を放さずに操作できる点も、小気味いい。

ただし平滑な路面ではなく、交通量の多さによる轍で洗濯板状に小さな凹凸が波打つような交差点に差し掛かると、途端に低重心とはいえシートの下で巨大なものがうごめくような、ユサユサと小刻みに揺すられる感覚を覚える。2100kgというEVならではの車重はさすがに、とくに50km/hにも満たないような低速域では隠しづらいようだ。

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ところがワインディングめいた郊外路に出て速度域が上がると、Q4 e-tronの足まわりは俄然、しなやかにストロークし始める。ヨーを受け止めてじわりと沈み込む前輪と、柔らかいが力強く地面を掻く後輪の感触が、代わるがわる繊細に訪れてくる、その感覚をハイレベルといっていいほどの静粛性と堅牢なボディ剛性の中で味わえるのは、EVのアウディならではと感じた。

じつは欧州ではすでにアウディ伝統のAWDたるQ4 e-tron 50クワトロがラインナップされているが、FFでもないリア2駆の雑味のないドライバビリティを備えたアウディという意味でも、40は貴重な存在かもしれない。例によってドライブモード切替で「ダイナミック」にも設定できるが、車のキャラが過激に変化するというよりは、手元・足元の操作に対する敏感度が増すぐらいの変化だ。

◆アウディとしてのインターフェイスが守られた実用的EV

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もうひとつ感心したのは、夕刻から夜にかけての暗い時間帯の試乗だったが、シフトの手元をほんのり照らす灯りからアンビエントライトまで、照明の灯し方がいい意味でEV臭くない。平たくいってバッテリー残量を気にしてケチくさくなった雰囲気の車内照明ではない。

ひとつ惜しむらくは、当初125kwと発表されていたCHAdeMOの急速充電時の対応容量が、最大94kWに落ち着いたこと。だが優に500kmを超える航続レンジがある以上、30分の急速充電の機会はやり様によって遠ざけられることは確かで、日常的に普通充電の効率を優先する範囲なら、致命的な問題とはならないはずだ。

何よりQ4 e-tron 40 Sラインのアドバンテージは、ICEから乗り換えてもアウディとしてのインターフェイスがキチンと守られていて実用的EVでありながら、プレミアムに相応しいふくよかな乗り味を、ある程度路面を選ぶとはいえ、キチンと確保した点にある。

これまでの新興メーカーの普及EVほど衒(てら)った新しさはないかもしれないが、ビート感が希薄でドライな乗り味とはまったく対照的な、しっとりした余韻は優れて身体的。普及EVだから味気なくても致し方なし、そんな偏見や先入観がいよいよアップデートされるべき時が来た、ということだろう。

アウディ Q4 e-tron 40 Sラインアウディ Q4 e-tron 40 Sライン

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

南陽一浩|モータージャーナリスト
1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

《南陽一浩》

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