函館本線の鉄道貨物、国と北海道が協議へ…沿線では函館-新函館北斗間の存続に焦点か 北海道新幹線の並行在来線問題

函館と新函館北斗を結ぶ『はこだてライナー』。同区間は北海道新幹線の着工同意と引き換えにJR北海道が電化を行なった経緯があるが、電車運行のコストが仇となり、気動車運行による道南いさりび鉄道よりも大きな経費を要することが懸念されている。
  • 函館と新函館北斗を結ぶ『はこだてライナー』。同区間は北海道新幹線の着工同意と引き換えにJR北海道が電化を行なった経緯があるが、電車運行のコストが仇となり、気動車運行による道南いさりび鉄道よりも大きな経費を要することが懸念されている。
  • 道南いさりび鉄道を走るEH800形電気機関車牽引の貨物列車。仮に函館本線の長万部以南が廃止されれば本州~北海道間の鉄道貨物が寸断され、そのアプローチを担う同鉄道も収益の大半を占める貨物調整金を失ない、死活問題になりかねない。

斉藤鉄夫国土交通大臣は9月20日に開かれた定例会見で、北海道新幹線新函館北斗~札幌間の並行在来線について記者の質問に答えた。

並行在来線のうち、函館~長万部間については、8月31日に開かれた北海道新幹線並行在来線対策協議会の第9回渡島ブロック会議で、沿線自治体(函館市、北斗市、七飯町、鹿部町、森町、八雲町、長万部町)が全線の第3セクターによる鉄道存続に厳しい認識を示し、財政面でさらに精査する必要があるとされている。これを受けた各種報道では同区間の鉄道存続が事実上、断念とされているが、その場合、本州と北海道を結ぶ鉄道貨物が寸断され、北海道の農業や経済に多大な影響を与えることが懸念される。

これについて斉藤大臣は「農産品の輸送など北海道と本州を結ぶ貨物鉄道輸送を担う重要な路線であると認識しており、北海道と本州の間の物流を着実に確保していく観点から、北海道庁やJR貨物、JR北海道などの関係者と必要な対応を検討していく必要がある」と重要性を認めた上で、北海道物流のあり方、国全体の物流のあり方というふたつの観点から国と北海道が共同で議論していくことが重要だと述べた。

一方、鈴木直道北海道知事は9月13日の定例会見で重要性を認識しながら「今後の進め方については現在検討中であるとお伺いしているところであります」と述べるに留め、国の出方を待つ態度を示していたが、今回の国交相の発言により議論を行なう方向で固まったようだ。

なお、函館~長万部間のうち、北海道新幹線の連絡列車『はこだてライナー』が運行されている函館~新函館北斗間については、8月31日の渡島ブロック会議で工藤壽樹(くどうとしき)函館市長が第3セクターによる存続を要望しているが、その場合、隣接する北斗市も関与することから、池田達雄北斗市長は、現在、関与している道南いさりび鉄道(五稜郭~木古内)を例に出し「運行距離だけを申し上げますと、函館・新函館北斗間というのは(道南いさりび鉄道の)半分なんですね。半分の運行距離なんですが、単年度の収支というのは逆に大きな金額になっていると。この辺はかなり検討する余地は私はあるのではないかと考えております」と述べ、さらなる精査を求めている。

最終的な結論は、当初のロードマップでは3年後の2025年までに出すことになってはいるものの、盛田昌彦鹿部町長は町民への説明があるとして、前倒しを主張。また、岩村克詔(いわぬまかつのり)八雲町長は「我々、新函館北斗駅から函館駅の議論に入っても、なかなか発言といっても難しい発言なので」と述べており、地域事情が対立する長大線区ならではの問題が改めて浮き彫りになっている。


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《佐藤正樹》

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