【MINI クーパーSD 新型試乗】輸入車ベストセラーの理由は「フツーのクルマになること」だった!?…南陽一浩

MINI クーパーSD 5ドア
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意外なほどに、BMWから乗り換えても違和感がないことに驚いた、といったら大袈裟だろうか? 昨年、マイナーチェンジを果たしたMINI(ミニ)『クーパーSD 5ドア』のことだ。

小さな車格ながらアクセルペダルは床から生えたオルガン式だし、例のインフォテイメントを操るジョグダイヤルも、かなり低い位置で素材は樹脂っぽいとはいえ、シフト手前のセンターコンソールに認められる。ステアリングのグリップも太いし、かなりの「ミニBMW」ぶりだ。『1シリーズ』、『2シリーズ』とFFプラットフォームを共有することでミニにもたらされる恩恵も小さくないのだろう。

侵しがたいまでの「ミニ結界」

MINI クーパーSD 5ドアMINI クーパーSD 5ドア

マイチェンによる最大の特徴は、LEDヘッドライトのおかげでフォグランプを省くことができ、フロントバンパー両脇が縦スリットになったこと。他にもガーニッシュやインテークのカタチがよりモダンでエッジの効いたカタチに変わった。とはいえ5ドア化されても、その外観は周囲の空気感を変えてしまうアイコン的デザイン、侵しがたいまでのミニ結界が、そこに出現する。

個人的にはミニの5ドア化と前後して『ニュービートル』がフェイドアウトしたことは、象徴的に感じられた。たとえアイコン的存在でも2ドアでなく、5ドア・ハッチバックという実用性・日常性重視の車型、つまり「フツーのクルマ」を演じるか、そうならざるをえないのだ。

BMWにとってミニは外から得た新しい血統だったからこそできた芸当で、そうではなかったフォルクスワーゲンには「タイプI」の車型を5ドアにするのは想像の埒外だからこそ、ID.で『ブリー』ことワーゲンバスを復活させようとしているのだろう。アイコンも派生や味変が求められる今や、日産『フィガロ』や『Be-1』、『パオ』や『ラシーン』にトヨタwill辺りも、切らさず続けていたらどうなっていただろうか。

レトロ風情どころか未来感すらあるインテリア

MINI クーパーSD 5ドアMINI クーパーSD 5ドア

話が逸れたが、クーパーSD 5ドアのリアシートに乗り込んでみた。背面上部と座面先端にパーフォレーションでアーガイル柄のあしらいは前席シートと同じで、英国好きには統一感として悪くない。リアドア開口部は狭く、乗り込むと足元もギリギリだが、はまり込むように着座しさえすれば、後席で大人2名はそこそこ快適に過ごせる。ただ5名が乗車定員とはいえ、センターコンソールとフロアが張り出し、リアシート中央はそこを跨ぐ姿勢にはなる。あくまでエマージェンシー用のようだ。

前席ダッシュボード周りもかなり変更が加えられている。インフォテイメントは往年のセンターメーター風意匠だが漫画のズーム効果線のような模様で囲まれ、アナログメーターから液晶表示のデジタルメータークラスターパネルとなった。ステアリングホイール上のスイッチ類もフラット化されてヘッドアップディスプレイまで備わり、レトロ風情どころか未来感すらある。ミニ・ワールドな丸モチーフの連続は激しいが、ドライビングポジションや操作系はむしろオーソドックスで、夢の国に連れて来られたお父さんみたいな狼狽はない。

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脇腹に伝わってくるゴーカート・フィーリング

実際、走り出すとクーパーSD 5ドアの動的質感には感服させられる。1350kgという車重はBセグ・ハッチバックとしては重いが、1500rpmから360Nmもの最大トルクが効き目あらかたで、弾けるような加速感だ。WLTCモードは18.9km/リットルが公式スペックだが、今回は試せなかった高速道路モードでは20km/リットルを超えるらしく、ディーゼルに期待されるアシの長さは確保されているようだ。ちなみに最高出力は170psで必要十分。

しかも、これ見よがしのミズスマシ的ハンドリングではなく、路面へのアタリのしなやかさと、短いながらもストロークの感じられる足まわりだ。操舵した分だけリニアに生じる横Gは、腹斜筋を深々と覆うシートサポートからグッと入ってくる。手元ではなく、脇腹に伝わってくるゴーカート・フィーリングなのだ。従来はいかにも「ミニらしさ」にこだわって過剰にコスメティックに感じられた動的質感が、いい意味でフツーにミニらしい、そんなスイートスポットに収まった。

“革命的なフツーのクルマ”になりつつある

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正直、初代ニューミニが登場した当初、Aタイプ・エンジン搭載のミニしか知らない身としては、2代目3代目以降がどうモデルチェンジされるのか、疑問に思っていた。5ドアハッチバックのディーゼルという、およそオリジナル・ミニからもっともかけ離れた仕様に、こうも感じ入ることがあったとは。ニューミニもついにオリジナル同様に“革命的なフツーのクルマ”になりつつある。だからこそ輸入車で登録台数ナンバーワンの座にあるのだろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★

南陽一浩|モータージャーナリスト
1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

《南陽一浩》

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