◆スバルラリーチームUSAドライバーのトラビス・パストラーナ選手

2003年から4輪ラリー活動をスタートさせ、2006年にスバルラリーチームUSAに加入した。2008年には、ラリーアメリカで3度目のドライバーズタイトルを決めるなど、現在もスバルモータースポーツUSAで活躍中。命知らずのチャレンジャーとしても知られ、2輪による宙返りなど、さまざまなギネス記録を持つ。
◆フルカーボン製ボディのワンオフモデル

開発にあたっては、ラリー、ラリークロス、ヒルクライム、ロングジャンプでの経験を生かしながら行われた。その目的は、従来の『ジムカーナ』シリーズとは異なるスタントを実行することにあったという。
WRX STIのワンオフモデルでは、車体をフルカーボンに変更した。ワイルドに見えるカーボンファイバー製のボディパネルは、風洞実験で検証された。これは、『ジムカーナ』シリーズ向け車両としては初めての取り組み。
空中での安定性を確保するとともに、地上で最大のダウンフォースを獲得するのが狙いだ。大型のアクティブリアウィングも、空中ジャンプスタントのシーンで、車両の姿勢を保つことに貢献したという。
◆車両重量は1190kgと市販モデルに対して360kg以上軽量化

スバルモータースポーツUSAチームのラリークロスプログラム向けをベースにカスタムビルトされたブロックとヘッドが使用され、最大出力は862hp、最大トルクは91.8kgmを引き出す。このエンジンは8000rpmまで許容する。
高速ジャンプでの離着陸や、mm単位のドリフトコントロールを可能にする幅広い調整機能を備えたロングストロークサスペンションは、数十年に渡るスバルのラリーでのノウハウが生かされているという。
車両は、ホワイトボディにロールケージを組み込む手法で組み上げられ、車両重量は1190kgに抑えられた。市販モデルのWRX STIに対して、360kg以上の軽量化を果たした。この結果、パワーウェイトレシオは1.38kg/hpを達成している。
◆2017年にパストラーナ選手が打ち立てた記録を16秒以上短縮
この最大出力862hpのWRX STIに乗るトラビス・パストラーナ選手が、ワシントンヒルクライムで5分28秒67の新記録を打ち立てた。道幅が狭くて、傾斜が急な全長およそ12.2kmのマウントワシントンオートロードを、トラビス・パストラーナ選手は2位に45秒以上の差をつけて優勝した。2017年に同選手が打ち立てた記録を、16秒以上短縮している。
3年ごとに開催されるワシントンヒルクライムは、北米で最も古いヒルクライムレースだ。その長い歴史に加えて、東海岸で最も標高の高い山は、予測不可能な天候で知られる。ドライバーは、ターマックからグラベルに突然変わる路面に対応し、登りの途中で変化する路面のグリップレベルと戦う必要がある。
トラビス・パストラーナ選手は、「この車は新記録を打ち立てるのに最適なマシン。幸いなことに、今年は天気が良かった。ワシントンヒルクライムはとても楽しいし、次回が待ちきれない」と語っている。