【ホンダ シビックタイプR リミテッドエディション 試乗】中古でも購入できれば一生モノ…片岡英明

ホンダ シビックタイプR リミテッドエディション
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ホンダのレーシングスピリットが宿る究極のロードカーが、『シビック』のフラッグシップとして設定された「タイプR」シリーズだ。レーシングカーの開発で得られた高度なテクノロジーを積極的に採用し、圧倒的なドライビングプレジャーを実現している。

タイプRの系譜は初代『NSX』に始まるが、シビックに設定されたのは1997年夏だった。「EK9」と呼ばれる6代目シビックの3ドアハッチバックをベースに設計され、エンジンは1.6リットルのB16B型直列4気筒DOHC・VTECだ。

2001年12月、7代目シビックの3ドアハッチに2.0リットルのK20A型直列4気筒DOHC・i-VTECを搭載した第2世代のタイプRがデビューする。2007年3月に登場した第3世代のシビックタイプRは唯一の4ドアセダンだった。その後、シビックは日本での販売を休止している。

NSXに始まった「タイプR」の系譜。左が初代シビックタイプR(ホンダコレクションホール展示車)NSXに始まった「タイプR」の系譜。左が初代シビックタイプR(ホンダコレクションホール展示車)
タイプRも消えたが、2015年に第4世代のタイプRが送り出された。究極のFFスポーツを掲げて開発され、発売前にドイツのニュルブルクリンクサーキットの北コースでFF車として最速タイムを刻んでいる。心臓に選ばれたのは、2.0リットルのK20C型直列4気筒DOHC・VTECターボだ。

そして2017年7月、第5世代のFK8型シビックタイプRが発表された。エンジンは進化させた2.0リットルのK20C型直列4気筒DOHC・VTECターボを搭載し、これに回転合わせを行なってくれるレブマッチシステム採用の6速MTを組み合わせている。サスペンションはフロントがデュアルアクシスストラット、リアがマルチリンクだ。2020年10月、シビックはマイナーチェンジを実施したが、このときに最終進化形とも言えるタイプRリミテッドエディションをリリースした。日本では200台だけの限定発売である。

ホンダ シビックタイプR リミテッドエディションホンダ シビックタイプR リミテッドエディション
発表と同時に完売してしまったが、乗って見るとタイプRの標準車と印象は大きく異なるものだった。熱狂的なファンが多く、中古車になっても引く手あまただろうから、ツインリンクもてぎの南コースを走ったときの印象を述べてみようと思う。

強烈な加速Gを存分に楽しめるVTECターボ

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心臓は、排気量1995ccのK20C型直列4気筒DOHC・VTECターボだ。最高出力は235kW(320ps)/6500rpm、最大トルクは400Nm(40.8kg-m)/2500~4500rpmと、タイプRの標準車と変わっていない。だが、1370kgの車重には十分すぎるパフォーマンスを身につけている。

デジタル表示の速度計の外側にフルスケール8000回転のタコメーターが装備され、判読性は文句なしだ。ターボは3000回転あたりから猛々しさを増し、分厚いトルクが湧き出してくる。1速ギアではすぐにレッドゾーンの7000回転に飛び込んでしまった。ターボでありながら応答レスポンスはシャープだし、高回転の伸びも素晴らしい。VTECの作動により高回転では音色も変わる。遮音材を減らし、軽量化を図っているため、エンジンサウンドも耳に心地よかった。

ホンダ シビックタイプR リミテッドエディションホンダ シビックタイプR リミテッドエディション
6速MTは剛性感たっぷりだ。手に馴染む形状で、ストロークも適切だから素早い変速でも気持ちよく狙ったギアに入れることができた。クラッチの踏力もそれほど重くない。シフトダウン時の回転合わせも上手だ。ジムカーナ場のようなミニサーキットなので3速以上にギアが入ることはなかったが、強烈な加速Gを存分に楽しむことができる。短時間の試乗でも、このエンジンの実力の一端を知ることができた。

標準タイプRとは段違いのハンドリング性能

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標準のタイプRと大きく違うのはハンドリング性能だ。足元はサーキット走行を余裕でこなすミシュラン製パイロットスポーツ・カップ2で、245/30ZR20というファットなタイヤを履いている。このハイパフォーマンスタイヤに合わせ、アダプティブ・ダンパーシステムを最適にセッティングし、パワーステアリングも専用チューニングとした。

走り初めから乗り心地はハードと感じる。コーナリングではロールが抑えられ、意のままにクルマが向きを変えた。足だけでなくボディもシャキッとしている。標準車が頼りなく感じられるほど、スパルタンで強靭な印象だ。

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パワーステアリングは一段とダイレクトな操舵感で、身のこなしも軽やかなので狙ったラインを外さない。スポーツマインドは際立って高く、タイトコーナーやS字コーナーでも意のままの走りが可能だ。タイヤに熱が入ると接地能力は驚くほど高く、限界レベルは標準車のはるか上にある。

当然、コーナリング限界も高いから横Gのかかり方はハンパではない。だが、専用設計のホールド性に優れたスポーツシートとアルカンターラを巻いたグリップ感のよいステアリングにも助けられ、狙ったラインに難なく乗せることができる。速いスピードで駆け抜けると、段差や継ぎ目で姿勢を乱すことがあった。が、修正はラクだ。

新車での購入はもう叶わないが

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スポーツ性は際立って高く、ワインディングロードはもちろん、サーキットでも刺激的な走りを存分に楽しめる。550万円と安くない価格だが、納得のいく仕上がりだ。新車での購入はもう叶わないが、中古車でなら手に入れられる可能性が残されている。一生モノのパートナーになる魅力的なホットハッチだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

片岡英明|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

《片岡英明》

片岡英明

片岡英明│モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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