縁あって? ホンダ『S660モデューロX バージョンZ』を購入することにした---待つ時間も愉し!

エイプリルフールではないが、2021年4月1日、筆者はホンダ「S660 ModuloX VersionZ(モデューロX バージョンZ)」を購入することにした。

2021年3月下旬。一年後の2022年3月にホンダ「S660」の生産終了が発表されて以後、注文が殺到。発表から1ヶ月も経たずに、新たな受注は打ち切られた。

終売の発表後、筆者は「ダメもと」でホンダ・ディーラーに話を聞きに行ったところ、数台の生産枠を押さえていて、かねてから購入を検討している人に声をかけている、とのこと。

こんなに早く終売を迎えるとは思っていなかったホンダ「S660」。迷ったら行け。コロナ禍の暮らしからそんな気持ちになっていたことも影響しているかもしれない
話はそれで終わらなかった。モデルのラストを飾るべく設定された「moduloX VirsionZ」の生産枠を1台だけ確保していて、筆者が商談を申し込んだ3月下旬の段階で、車両を押さえておいた、と聞かされたのだ。

筆者に「選択の余地」はそうそう用意されているようには感じられず、購入を決意した、というのが主な経緯である。


◆待たされるのも、悪くない?

生産能力を超えた受注を受けたクルマなどでは、しばしば「半年待ち」「1年待ち」など、納車までにとても時間がかかる。

ゆえに筆者は、そこまでしても欲しいものなのだろうか? とか冷めた眼差しで見てしまっていたところがあったのだ。

今回、筆者が署名捺印した時点で「S660」の予定納期は10ヶ月と告げられた…。こんなに待つクルマを、筆者は今まで購入した経験がないわけだが、契約書(正確には注文書)に署名捺印してからおよそ1ヶ月。実は、なかなか充実の日々を過ごせているのだ。

この時間も装備の一つなのではないか? 待たされるのも、悪いものではないなあ。と思ったので、その想いを書き記しておきたい。


◆「S660」の魅力とは?

取材でも何度か試乗したホンダ「S660モデューロX」。高い直進安定性やフラットな乗り心地。全てのフィーリングに妥協のない作りが印象的だった。ミニマムだが完成度の高い一台だと感じた

少しオーバーかもしれないが…。車体重量800キログラムそこそこで、最小限の動力で、ひらりひらりとワインディングと会話をしながら風景と戯れながら走ることができるマニュアルトランスミッション車を「新車」で購入できる機会は、人類史上これが最後ではないか? と筆者は思っている。

初めは、荷物の置く場所もなく、なかなかハードルは低くないなあ。と及び腰だったものの、幸運にも取材で何度か「S660」に試乗させて頂き、都内から三重県伊勢市の伊勢神宮まで一走りすることは “ 苦 ” ではなかった。

フラットで快適な乗り心地と、直進安定性も併せ持っていることは確認済み。2022年頃までにある程度、現金を貯め「月々の固定費を増やさない範囲で購入しよう!」というところまで、筆者の心は動いていた。

取材だったとはいえ、つい伊勢神宮まで足を伸ばした。35リットルの燃料タンクで埼玉県から無給油とはいかなかったが、東名阪道まではノンストップ。実用燃費も不満はない。しかし伊勢神宮に行った車種。自分で購入することになるとは「お導き」を感じないでもない

そんな矢先、2022年3月に生産終了するというニュース…。「ハードルは低くないが、生産終了となれば、自体は穏やかではないので止むを得ない」という、潜在的な購入希望者が一気に注文。半月ほどの内に、例年の年間生産台数レベルの注文が入ったとなればメーカーもちょっと焦ったに違いない。

このタイミングで購入した人の気持ちもわかるし、注文をストップしたメーカーの事情も、手にとるようにわかるというものである。


◆愛車の「長期納車待ち」は…

筆者の元に「S660」が納車されたら、当然、支払いが開始される。なるべく月々の固定費を増やしたくないので、できるだけ頭金を多く入れ、月々の支払いは抑えたいと筆者は思っており、「かかりすぎる納期」は購入を決心できた理由の一つだったのだが…。

今回はじめて「長い納車待ち」を経験し、筆者の行動が少しずつ変わっていった。

街で同じクルマ(S660)を見かけると、無意識に立ち止まり「いいなぁ」と眺めるようになった。自分が購入した車種と違うカラー、グレード、装備などを見て「あんなのも良かったかもなあ。あれは付けようか。後で購入できるのだろうか? こんな道を走ったら気持ち良かろう、せっかく久しぶりにくる新車だし、幌もあるからコーティングはした方がいいだろうか」などなど…。

まだ車体番号さえ割り振られていない、来るべき愛車に、気づけば思いを馳せてしまっていたのだ。

今回、筆者が購入するのは、特別仕様車の「S660 ModuloX VersionZ(モデューロX バージョンZ)」。エクストラな内容に加え、装備がほぼフルで盛り込まれているので、決して割高ではないものの、高価であるとは思う。

だが、今回はじめて知った「愛車を待つ時間」が標準装備であることを思うと、お買い得かもしれないと今は思っている。

納車待ちの時間…。それは現車など、まだ手元に来ていないのに、ひとり悶々と、ニンマリできる時間。ハンコは押したものの、支払い開始前にそんな充実した境遇を堪能できるのだ。誰に咎められるわけでもなく、誰かと群れる必要もない。心待ちにできるクルマがあること、それ自体、クルマ好きにとっては幸せそのもの。

もし気になるクルマがそういうクルマなら、絶対に購入すべきなのではないか。ハンコを押した日から1ヶ月強経って、そんなふうに思いながら日々過ごしている。

納車待ちの間に「S660」の人気がさらに加熱し、納期のかかるクルマ全体への認識自体が少し改まった。むしろ、待ち時間のあるクルマを買おうか買うまいか迷ったら『買った方がいい!』。そう強く提案したい。

ホンダ「S660」のカタログや注文書の入ったファイル。いつも持ち歩いていて、暇さえあれば眺めている。納車されたら何をしようか、どこへ行こうか。この待ち時間こそが最大の価値なのではないか?と思うほど。毎日が希望に満ち楽しい。必要書類や希望ナンバーのメモ欄は空欄のまま。ラインオフが相当先で車体番号もまだ確定していないからである。仕事も頑張らねば、そう鼓舞してくれているようだ

最後に「S660」に関して、少し触れておきたい。筆者が商談したホンダ・ディーラーでは「S660 ModuloX」は全て完売。モデル全体に先駆けて受注ストップになっていたはずの「S660 ModuloX VersionZ」を、1台だけ生産枠を押さえてもらえていたので、筆者は購入することができた。

通常モデルα、βのマニュアルであれば、カラーなども含め「あと数台はお受けできるかも」と、ディーラー担当者は話していた。全体の残り生産台数的にも少数派のようだが、CVTモデルはあと1台のみ、とのことだった。

その話を聞いてから、およそ1ヶ月ほど経過しているわけだが。筆者が購入を決めたあの時は、公式の受注停止アナウンスがあった後だったので、もしまだ「S660」のことが気になっている方は、ダメもとでいくつかディーラーに問い合わせてみることをオススメする。

《執筆・撮影:中込 健太郎/編集︰カーケアプラス編集部@金武あずみ》

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