OEMの日野自動車が物流シェアリングサービスに取組む理由…NEXT Logistics Japan代表取締役社長CEO 梅村幸生氏[インタビュー]

OEMの日野自動車が物流シェアリングサービスに取組む理由…NEXT Logistics Japan代表取締役社長CEO 梅村幸生氏[インタビュー]
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なぜ自動車メーカーの日野自動車が、物流シェアリングサービスを行うNEXT Logistics Japan(ネクストロジスティクスジャパン)を作ったのか。その理由についてNEXT Logistics Japan代表取締役社長CEO 梅村幸生氏に聞いた。

梅村氏は、 2月18日開催セミナー「MaaS×物流」の最前線に登壇し、幹線輸送シェアリング NEXT Logistics Challengeをテーマに講演する。

ドライバー不足に加え積載率が40%を切っている

梅村氏:物流業界の課題は、「ドライバー不足」に加えて、盲点になっているのが「積載率の低下」です。積載率が40%を切っているのです。

昔は、商品の種類が少なかったので、同じ商品のものをトラックいっぱいに詰めました。しかし、ライフスタイルの多様化により、商品が非常に多種多様になりました。このため、同じ商品でトラックをいっぱいにすることが、できなくなったんです。いろいろな種類の荷姿の異なるものを運ぼうとすると、積載率が自然と低下します。

---:以前は、メーカーごとに決まった目玉商品があって、数が少なかったように思います。飲料、美容、菓子など、昔に比べると、種類が非常にたくさん増えましたね。

梅村氏:また工場のIoT化により、何時何分に、必要な部品を1つから運んで欲しいといったニーズに応えなければいけない時代です。こうした流れも、積載率の低下を助長しています。

このように、自社で高い積載率を維持できない会社が増えてしまっています。このままの状況では、物流業界が衰退し、日野自動車の商品をお使い頂いているお客様のビジネスも危うくなってしまうでしょう。

個社の努力では限界がある

梅村氏:2024年は大きなターニングポイントになりそうです。トラックの運送業界は、これまで三六協定などの労働時間管理の適応除外だったのですが、これから適応されます。これによりトラックドライバーが、さらに3割減る可能性が出てきています。

このような物流業界の危機を打破するには、個社の努力では限界があるため、商用車メーカーである日野自動車も課題解決に取組むべき、と強く思います。

---:長く同じ課題を物流業界は抱えています。解決できない理由は何でしょうか。

梅村氏:同じ業種間での共同配送は取組まれています。例えば飲料メーカー間など。しかし同じ業種間の共同配送では、競合他社であり、需要期が同一で集中し、思うように運用出来ません。また、飲料は重いため、重量制限がいっぱいになって空間が空いている状況で走るケースもたくさんあります。

このような課題を解決するためには、業種業態の垣根を越えて、一緒に考える必要があると考えます。日野としては、機会を提供する「場」を提供出来ればと思っています。

---:世界的にみても業種業態を超えて、物流を考える取組みは珍しいかと思います。

物流業界の課題に自らの身を投じて考える

日野は、これまでトラックやバスの「良い商品づくり」に加えて、稼働時間を最大化する「トータルサポート」に注力してきました。これからは、クルマを作るだけではなく、情報ネットワークや物流ネットワークの構築などにより社会課題を解決する「新領域」に力を入れて、運送会社や荷主の課題に対してソリューションを提供していきたいと考えています。

弊社は、「輸配送」「倉庫物流」などを手掛けたことがありませんでした。お客様と同じフィールドに立って考える必要があると感じ、クルマを作る以外の物流全般を自らも参画することを始めました。

東京モーターショー2019においても、自動車業界のキーワードである「CASE」にPlatform(多様なサービスに変幻自在に対応)とPeople(生活者やお客様の目線で寄り添う)の「P」を加えて"SPACE(スペース)"を提案しました。トヨタグループの一員として、ハードに加えて、使っていくユースケース、場の創出にも取組んでいく方向です。

高速道路での隊列走行の課題が山積

ドライバーの人手不足を解決する方法の一つとして、自動運転技術の活用が挙げられます。高速道路においての隊列走行の実証も行っています。

日野自動車でも自動運転時代を見据えて、"幹線輸送シェアリングサービス"の絵を描いていますが、現実はインフラ整備やビジネスモデルの検討には、未だ課題がたくさんあります。

例えば、輸送力が上がっても、個社でトラックを満積できる会社も無いなど、自動運転技術をどのように活用していくのか、具体的な準備が必要となります。

こうした現状を鑑み、2018年6月に、NEXT Logistics Japanを設立しました。

高速道路の隊列走行に向けた環境づくり

梅村氏:まず車両ですが、2019年1月から規制緩和された全長25mのダブル連結トラックの活用です。1台より多くの荷物をたくさん積めるため、ドライバーの数を2名から1名に減らすことができます。しかし、全長が25mあるため、走行場所が限定されたり、積載率が高い状況で共同配送や重軽混載が行えるように荷詰めする場所(クロスドック)が必要となります。

さらに、トラックの積載量を確認するために、3Dセンサーを活用した、荷室の中の視える化の取組みもはじめました。

---:3Dセンサーを活用した視える化も海外含めて、まだ珍しいのではないでしょうか。

梅村氏:アイデアは昔からありますが、実用化しているのは珍しいと思います。2019年12月から、これらの構想を具現化する取組みをはじめました。クロスドックを兵庫県の西宮と神奈川県の相模原の2つと、ドライバーの労働環境に配慮して愛知県の豊田にリレー拠点を設けます。さらに、荷主には、重い荷物のアサヒグループホールディングス、軽い荷物の江崎グリコに参画頂き、運送に千代田運輸とユーネットランス、物流運行のトランコムによる体制を作りました。

---:業種業態を超えた共同配送での積載率を上げる取組みや自動運転の環境整備が進むと、倉庫内や商品の重量管理のデジタル化、荷姿のある程度の標準化など、なかなか進んでいない物流改革のきっかけ作りになるかもしれませんね。

梅村氏:トラックの自動運転の活用にあたって、どのように社会課題を解決し、それをサービスとして提供するための、ビジネスモデルをどう描くかが求められています。
実際のユースケースの中で、自動運転の環境整備が進むことで、実用化に向けて新たなフェーズへと移行できたのではないかと感じています。

---:今後の動きは?

梅村氏:この取組みはオープン&シェアであり、いろいろな荷主や運送事業者の方に、参画して頂きたいと思っています。

梅村氏が登壇する 2月18日開催セミナー「MaaS×物流」の最前線はこちら。

《楠田悦子》

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