初のフルモデルチェンジ
『イヴォーク』が初のフルモデルチェンジを迎えた。と言っても一見してどこが変わったの?というレベル。
そりゃそうだろう。先代モデルのデザインの完成度が高いのは言わずもがな。無理矢理手を入れてもいい方向には行かないばかりか、かえって酷評を得ることになりかねない。その意味イヴォークはもはや『ミニ』や『Gクラス』、『ラングラー』の領域にあるかも、である。
とはいえ、中身は大きく変わる。採用されたのは、プレミアム・トランスバース・アーキテクチャー。将来のEVを見据えたプラットフォームである。これまでよりホイールベースを20mm延ばし、ユーティリティを向上させている。
目玉は「300ps エンジン」+「マイルドハイブリッド」
レンジローバー イヴォーク 新型(R-DYNAMIC HSE P300 MHEV)
試乗したのは、「ファースト・エディション」というグレードで、エンジンは2リットル直4ターボとなる。最高出力は249ps。トランスミッションはこれまで同様ZF社製の9速ATと組み合わせる。目玉は同エンジンを300psにスープアップしマイルドハイブリッドを搭載したモデルだろう。ランドローバー初の48Vマイルドハイブリッドだけに注目度は高い。今回は残念だが機会があればロングドライブでテストしたいものだ。
それはともかく、走らせた印象は思った以上に良かった。イヴォークはデビューから毎年のように手が入り走りのクオリティが上がっていたので昨今のモデルに不服はなかったが、今回はその上。走らせるとすぐにボディ剛性が上がったのを感じたし、その先のハンドリングの向上もしっかり体感できた。一つの塊として動く様はスポーツカー的だ。
レンジローバー イヴォーク 新型(R-DYNAMIC HSE P300 MHEV)
なので、乗り心地は少し硬め。サスペンションは前後とも新設計で、味付けはスポーティに振ってあるようだ。ロールを抑えたコーナーでの安定感はあるが、舗装が悪い路面だと急にドンドン跳ねるシーンもあった。試乗車が21インチというのも関係するだろう。20インチも走らせてみたい。
そんな走り味だが、新型のコンセプトは高級感だと思う。インテリアの質感もそうだし、静かなキャビンもそう思わせる。デザイン性の高さはレンジローバーを名乗る兄達を彷彿する。
あるといいな、が具現化された「グラウンドビュー」
レンジローバー イヴォーク 新型(R-DYNAMIC HSE P300 MHEV)
新型の特徴としてクローズアップしたい装備がある。「グラウンドビュー」というモニターに映し出される映像だ。これは装備されるカメラを駆使してつくるボンネットが透けて見えるバーチャルな世界。要するにフロント下の視界をバッチリ見渡せるというものだ。
世界中のオフロードコースを経験してきた身においてこれは画期的。フロントアンダーカバーにヒットするか否かがわかる。それと見落としそうな溝も。あるといいな、が具現化された。もちろん、ランドローバーというブランドからして真骨頂なのは間違いない。今後すべてのモデルに波及されることであろう。
と言ったのが今回のファーストコンタクト。限られた条件でのドライブだったが、仕上がりは思いのほか良さそうだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。『Car EX』(世界文化社 刊)副編集長、『アメリカンSUV』(エイ出版社 刊)編集長などを経験しフリーランスに。その後メンズ誌『LEON』(主婦と生活社 刊)副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの"サーフ&ターフ"。 東京・自由が丘出身。