【ホンダ インサイト 新型】「セダンの本質を知っている人に選んでほしい」、変わりつつあるHVの価値に新提案…デザイナーインタビュー

ホンダ インサイト 新型
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  • 内田智氏
  • 和田陸氏
  • 村山亘氏
  • 唐見麻由香氏
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新型『インサイト』は、しっとりとして落ち着いたたたずまいを見せる。ハイブリッドだからという特別な演出はなく、セダンとしてのフォーマルさを重視したシックな装いだ。これはどのような意図でデザインされたものなのだろうか。

インサイトのデザインを担当したデザイナー陣に聞いた。

パッケージングデザインの要件は「シビックを守ること」

----:プラットフォームは『シビック』『アコード』用がベースということですが、2700mmというホイールベースはシビックと共通。となるとパッケージングデザインはシビックとどう違い、どこが特徴なのでしょうか?

内田智氏(デザイン室テクニカルデザインスタジオ研究員、以下敬称略):実は乗員のレイアウトは、シビックと同じなんです。ですからそのパッケージを守りながらバッテリー搭載位置を確保した、というのが特徴ということになりますね。開発スタート前には「ホイールベースを延長しようか?」という話も出たようですが、実際は「シビックを守ること」を命題として開発しています。

----:ハイブリッドシステム用のバッテリーだけでなく、通常の12Vバッテリーもレイアウトを変え、センターコンソール内部に移しています。これはシフトスイッチにしたことで実現できたんですね。

内田:実はハイブリッド化でハードウェアのレイアウトは大幅に変わりましたが、基本的に乗員と荷室の空間は守っています。だからパッケージング担当としては、エンジニアたちに「守ってくれ!」と頼んで回るのが仕事という感じでした。ハードウェアの担当者たちは苦労したはずですよ。

エクステリアはオーセンティックさを重視

----:いっぽうで全長はシビックより25mm大きくなっています。これはスタイリング上の理由によるものですか?

和田陸氏(デザイン室1スタジオ研究員、以下敬称略):はい。「しっかりとしたオーセンティックさ」に正面から向き合った結果として、デザインに合わせた寸法を使わせてもらうことになりました。

----:オーセンティック(正統、真っ当)というのは、セダンとして重要ですね。ハイブリッド専用モデルとして、エクステリアのスタイリングで空力性能や環境性能を表現するという方向性は考えなかったのでしょうか?

和田:「i-MMD」がもたらす上質な走りや運転する歓びを、見た目にも表現することが狙いでした。ただ「これからのハイブリッド車はこうあるべき」という姿勢を見せるという意味では、歴代のインサイトと同じと言えるかもしれませんね。

----:もはやハイブリッドであることをスタイリングで主張する時代ではない、と。

和田:新型でも、空力について語れることはいくらでもあります。でもスタイリングで時間をかけたのは、全体の空気流をコントロールすることで、オーセンティックなセダンに見えながら厳しい空力要件をクリアした造形にする、という部分でした。

----:だからボディサイドではフェンダーがゆるやかな連続性に寄り添った抑揚をもっているし、フロントエンドにはしっかりしたグリルがあるんですね。

和田:ハイブリッドといえば、いままでは燃費に際立って注目が集まっていました。これにたいして現在は走りの上質さとか、そういったものに注目点が変わってきているのではないでしょうか。だから、そうした部分の違いをわかっていただける人がターゲットです。わたしたちが新たにハイブリッド技術を中心として届けたいと思っている価値に響いてくれる人、そうした人の美意識や価値観に応えようとスタイリングしました。

本質的な価値を追求したインテリア

----:室内の空間構成はシビックと同じということですが、車種のキャラクターは大きく異なります。インサイトとしての世界観は、どう表現しようとしたのでしょうか?

村山亘氏(デザイン室1スタジオ研究員、以下敬称略):シビックよりもやや上級の商品として、満足感を得られるものにしようということでデザインをスタートさせました。シビックでは加飾などで元気のよさを表現していますが、インサイトでは大人っぽさや上質感を表現しています。

----:落ち着いた雰囲気にするという方向性ですか?

村山:買おうと思ってくれるのは、初めて新車を手に入れる人ではなく、新車購入を何度か経験している人だと考えました。そうした人たちが「戻ってくる場所」として、「やっぱり、クルマってこうだよね」と思える本質的な価値を追求しています。そこで、しっとりとした艶のある上質感を大事にしてデザインしました。

----:いろいろな経験や体験をして、本質に回帰してきた人ということですね。ソフトパッドが広い面積で使われているのも、上質感に貢献しているようです。

村山:ドライバーの「ドライビングの高揚感」と、助手席に座った人が満足して得る高揚感は異なるものです。この価値の異なる両者を繋ぐものとして、ソフトパッドを使っています。インパネ形状も、どちらかといえば運転席を取り囲んだコックピット感覚を狙ってはいますが、スポーツカーのような囲まれ感とは違ったものを目指しました。

----:メーターがオーソドックスな2眼に近いグラフィックなのも、本質の表現でしょうか?

村山:モチーフとしてはオーセンティックですね。デジタルで情報を伝えるという現代のニーズに応えつつ、そうした情報伝達機能と、計器としてのメーターの価値を両立させようとしました。

造形テーマと歩調を合わせたカラーデザイン

----:ボディカラーは無彩色が主体ですね。全体的にはちょっと地味かな、という気もするのですが…。

唐見麻由香氏(デザイン室3スタジオ研究員、以下敬称略):インサイトの色と素材は「いいモノ」を知っている人たちに向けて、シンプルだけれどちょっとしたこだわりや品の良さを感じられる、というところを大切にしています。エクステリアカラーはボディサイドの面の豊かな形状を活かす、質感高く美しく見える色をラインアップしています。

----:造形を引き立てる色を選んだらこうなった、ということですか?

唐見:ボディサイドには、前後を貫くキャラクターラインがありません。全体的にゆるやかに変化を続ける豊かな表面を持っているので、「ハイライトからシェードへの色の移り変わりが美しく見えることを重視しています。

----:インテリアでも、ブラックのみというのは思い切った設定ですね。

唐見:インサイトの世界観をしっかり伝えたかったんです。ただ、ひとくちにブラックと言っても、表面の材質によってトーンの違いがあります。インテリア全体でブラックの階調があるようにすることで、人の息づかいや温かみといったものを感じられる空間にしました。シートファブリックのパターンも、整然としたものではなくゆらぎを持たせたり、ウルトラスエードにも“モトリンク”という加工を施すことで表面に動きをつけ、人と手の温もりを感じるような風合いにしています。

----:素っ気ないようでいて、よく見るとさまざまな味わいがある。内外装でテーマやコンセプトは同じなんですね。

唐見:エクステリアもインテリアもわかりやすい価値ではなく、いろいろなものを見てきた人が違いに気づき、いいと思ってもらえるというところを狙っています。これはカラーだけでなく、スタイリングでも同じです。

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《古庄 速人》

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