【岩貞るみこの人道車医】「スイッチひとつで自動運転」日産よ、“きっちり説明”は嘘だったのか

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日産は「スイッチひとつで自動運転」をうたうが…
  • 日産は「スイッチひとつで自動運転」をうたうが…
  • 日産リーフの「プロパイロット」作動イメージ
  • 日産リーフ新型発表会
  • 日産リーフ新型
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  • 自動運転車を体験し笑顔を見せるカルロス・ゴーン氏
  • 日産の自動運転試作車
  • 「プロパイロット」をいち早く採用した日産セレナ
【車】「スイッチひとつで自動運転」

日産リーフのTVCMのセリフである。私は、夢のある演出は嫌いではない。逆に「これはCM上の演出です」と、わざわざ画面に入れるのは、そんな及び腰でどうするんだとすら思う。でも、「スイッチひとつで~」は、やはり、アウトだと思わざるをえない。

被害軽減ブレーキが装着されはじめたころ、自動車メーカーは、ユーザーが誤解して過度に期待しないようにと、名称を丁寧に考えたはずだ。あくまでも「運転支援技術」。「被害を軽減するだけであって、事故を起こさないよう完璧に止まるわけではない」からだ。どうか、きちんと使ってくれますように。自動でなんでもかんでもやると誤解して、事故など起こしませんように。おそらく、担当者たちは、祈るような思いでこの技術をリリースしたはずだ。

けれど、日産は違う。最初から派手に「自動」という言葉を使いまくり、消費者にインパクトを与えるという戦略に出たのだ。たしかに、「被害軽減ブレーキ」より「自動ブレーキ」と呼んだほうがわかりやすい。理解されれば販売にもつながる。せっかく世の中に出すのだから、使ってもらってこそという気持ちはわからないでもない。それはそうなのだが、ほとんどの人に免疫のない時期、いきなり「自動」をふりかざすのは、あまりにも乱暴だったと思う。

◆「説明責任を果たす」ということ
日産リーフの「プロパイロット」作動イメージ
一方、日産のアグレッシブな行動に対し、頑なに「被害軽減ブレーキ」という言葉を使ったメーカーは、逆にユーザーに理解されず、「御社のクルマには、自動ブレーキがないんでしょ。技術力ないのね」と言われ、悔しい思いをしたことは一度や二度ではないはずだ。このように臍を噛む思いをしたメーカーが、「自動」という言葉を使うのはいかがなものかと、疑義を唱えるのは当然の流れである。ユーザーが誤解するような表現は、国で禁止してはもらえないのか。そう声を上げたのである。しかし、この声に対し国交省の答えはこうだ。

「自動という言葉を使うことによって、技術が認識されるなら禁止はしない。国交省は、安全に寄与する技術の普及は応援したい。」

なにかというと「国交省が許してくれない」といわれるほど厳しい国交省にしては(本当はそんなに厳しくなく、ちゃんと許すべきものは許しているのだけれど。この話はまた後日)、実に寛大な返答である。いや、寛大すぎて、びっくりである。でも、それには理由がある。自動運転の開発は、国家戦略である。国交省としても、欧米との自動運転技術の開発合戦のなか、この流れの妨げになるわけにはいかないのだ。とはいえ、もしも誤使用で事故など起こったら、自動運転の開発は一気に逆風が吹く。特に「わからないもの=怖い」と感じやすい日本人では、事故は致命傷になりかねない。だから国交省は、自動と使うのは許すけれど、条件もつけた。

「自動という言葉でユーザーに誤解が生じる可能性は否めないため、誤使用しないようしっかりと説明責任を果たしてほしい」

権利と義務である。

◆「自動運転」という言葉の意味
日産の自動運転試作車
日産は、この国交省の態度をどう受け止めたのか。自動ブレーキののち、セレナにプロパイロットをつけたときに、「きっちりと説明をしていく」と、私は担当者から心強い言葉を聞いたはずだったのだが、その後、ユーザーはおろか、日産のディーラーマンにすら説明をしていないと証明するような事故が起きた。ディーラーの試乗車が試乗中に追突し、担当者などが書類送検されたのである。

おーい、日産。権利と義務はどうしたんだ。「きっちりと説明していく」の言葉は嘘だったのか。そして、今回のリーフの「スイッチひとつで自動運転」というTVCMである。いい加減にしろよ、日産。夢のある演出は、嫌いじゃないと改めて言うけれど、やることやってからにしようよ。
(※この記事を編集部に送った3日後に、日産の完成車検査事件が発覚した。ほんとに、やることやってほしいよ、日産)

ユーザー諸氏には、改めて申し上げたい。「自動運転」という言葉には、二つの意味がある。ひとつは、人が運転しなくてもすいすい走る「完全自動運転」。もう一つは、運転をサポートする「自動運転技術」。そして、リーフの、いや、市販車のすべてに於いて使われている「自動運転」という言葉は、後者の意味を持つ。ドライバーは、常に周囲を確認し、クルマが安全に走行できるよう操作し、また、走行中にハンドルから手を離していたとしても、いざというときは、すぐに操作できるようしておく必要がある。もちろん、事故の場合のすべての責任は、ドライバーにある。どうか、そこを誤解されませんように。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。9月よりコラム『岩貞るみこの人道車医』を連載。
《岩貞るみこ》

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