1,695mmのホイールベースはハーレーのラインナップの中でもっとも長い。その低くストレッチされた車体を、コーナーで強引に寝かし込むのが面白い。うーん手強い…これが『ブレイクアウト』だ。しかし、フルモデルチェンジした新型では旋回性がだいぶ上がっている。メインフレームが一新され、前後サスペンションを高性能化。燃料タンクを小振りなものにし、シルエットがシャープになった。車両重量は一気に15kgも減り、23.4度だったリーンアングルも26.8度に増やした。車体の動きに軽快感が伴ったとともに、エンジンに力強さが増した。排気量を107ci=1745cc、114ci=1846ccのいずれかを選べるようにした最新の空冷Vツインミルウォーキーエイトは、先代のエンジンでは1気筒あたり2つだったバルブ数を倍増し4バルブ化。さらにツインスパーク、デュアルインジェクションで燃焼効率を飛躍的に向上している。ハーレーのVツインエンジンは相変わらず気持ちがいい。不等間隔爆発、ロングストローク設定、OHVという昔ながらの機構、大きなフライホイール、要因は様々だが、このミルウォーキーエイトはハーレーダビッドソンの開発陣が、今なおコアファンらの間で人気の高い自社の旧いエンジンを研究し、さらにユーザーの声にも耳を傾け、独特のエンジンフィーリングを大事につくりあげた。モアトルクや環境性能を高めるだけでなく、鼓動感であったりサウンドであるなど、感性に訴えかけるフィーリングを大事にしているのだ。それを新型の『ブレイクアウト』では存分に味わえる。上級グレードとなる「ツーリングファミリー」ではエンジンをフレームにラバーマウントとし、コンフォート性を重視しているのだが、『ブレイクアウト』が採用する新設計の「ソフテイルフレーム」ではミルウォーキーエイトの鼓動がダイレクトに感じられるよう、ラバーパーツを介さずリジッドマウント方式でフレームに搭載されているのだ。エンジンをフレームに積むとき、ラバーの有無で乗り味がそんなに違うのか? 答えはイエス。実際に走ってみると、シートやグリップを通じて全身に大排気量Vツインならではの大きなパルス感がドコドコ伝わってきて心地いい。カウンターバランサーをデュアルで内蔵し、不快に感じる微振動だけを取り除くよう工夫されているのも心憎い。ヘッドライトをLED化するなど随所に進化が見られるものの、スピードやパワーで勝負するのではなく、フィーリングやテイスティな部分を追求し、そこを強化し際立たせてくるハーレーダビッドソン。その結果が、この心地よさだ。曲がりにくい車体も許せてしまう。■5つ星評価パワーソース:★★★★フットワーク:★★★コンフォート:★★★足着き:★★★★★オススメ度:★★★★青木タカオ|モーターサイクルジャーナリストバイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。
新型ハーレー『ブレイクアウト』&『ローライダー ST』に、SNSでは「更にカッコ良くなってきた」「奥さんの説得頑張るか」など反響 2025年7月10日 ハーレーダビッドソンジャパンは7月3日、2025年モデルに加わる…