N'EXにH2そしてスイフト…そのデザインの背景を担当者が語った

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「Design is around us. あれをデザインした人!」
  • 「Design is around us. あれをデザインした人!」
  • 成田エクスプレス(N'EX)
  • GKインダストリアルデザインの若尾チーフデザイナー
  • 川崎重工モーターサイクル&エンジンカンパニーのチーフリエゾンオフィサーだった木村氏
  • カワサキ・ニンジャH2
  • カワサキ・ニンジャH2
  • スズキ四輪デザイン部デザイン企画課の結城氏
  • スズキ・スイフト
身近な工業製品のデザイン秘話を、担当デザイナー自身が語る『Design is around us. あれをデザインした人!』が6月24日、グランフロント大阪ナレッジキャピタルで開催された。今回は鉄道、自動車、モーターサイクルという3種の「乗り物」が題材となった。

これは工業デザインの世界的組織ICSIDが提唱する世界同時多発イベント「World Industrial Design Day 2017」の一環として、JIDA(日本インダストリアルデザイナー協会)の関西ブロックが主催したもの。ナレッジキャピタルの後援、日本デザイン振興会の協力を得て2014年にスタートし、今回が4回目の開催となる。

今回はJR東日本『成田エクスプレス(N'EX)』、カワサキ『H2』そしてスズキ『スイフト』という3種のトランスポーテーション(輸送機器)の担当デザイナーが登場。偶然にもすべて「乗り物」となったが、公共交通からグローバル商品、趣味の製品までバラエティ豊か。司会のヴィータサロ・ユホ氏の挨拶に続いて、いずれもスケッチや図面、モックアップの製作風景など貴重な資料も交えてエピソードが披露された。

N'EXのデザインについて紹介したのは、GKインダストリアルデザインの若尾講介チーフデザイナー。「地域性/象徴性/独自性」という3つの切り口でデザインを紹介した。地域性については「通常の路線では沿線地域の特徴を反映させるものだが、N'EXは埼玉や神奈川からいちど東京に集まり、それから成田空港へ向かうのが特徴」と説明。だから各地域のローカルな特徴を反映させることが難しいというわけだ。

そこで、N'EXが表現する地域性は「日本」としたという。グラフィックスや部品の精緻さなど、「日本らしい」とわかる要素をモダンデザインの手法であしらったという。また「普通列車と違い、特急列車は乗客が積極的に選んで乗るもの。だからN'EXというブランドを継承し、進化も織り込みつつ、印象的かつ象徴的なものになるよう目指した」とのこと。こうした意識で取り組み、スタイリッシュで、海外から来た人が「日本らしい」とわかるデザインに落とし込んでいけばN'EXらしい独自性が生まれると考えたと若尾氏。

今年3月まで川崎重工モーターサイクル&エンジンカンパニーのチーフリエゾンオフィサーを務めていた木村徹氏は、H2のデザインについてのプレゼンテーション。デザイナーとしては見た目を重視してフレームを太くしたかったが、ベテラン設計者は「CADのシミュレーションで強度やしなりを解析すると、細い鋼管をトラス状にするのがベストだ」と主張。結果的にその方向が採用され、さらにスタイリングのチャームポイントとなったという。

またスーパースポーツとしては珍しく、エンジンを完全には覆わないハーフカウルが採用されている。これは冷却性能を確保するという機能性のためだが、営業サイドからは「スーパースポーツなのにフルカウルじゃないなんて。こんなものは売りたくない」という声もあったとか。スタイリングのコンセプトや目的、意図を説いて納得してもらい、商品化したとのこと。

グローバルモデルとして誕生した先々代、そして現行のスイフトについて語ったのは、スズキ四輪デザイン部デザイン企画課の結城康和氏。「ヨーロッパではしっかり踏ん張って、安定して走れそうな造形が重要。いくら性能がしっかりしていても、薄っぺらく見えるものは信用してもらえない。安全だということが視覚的にも伝わるものが重視される」という。

またヨーロッパは高緯度で太陽光線が水平に近い角度になるので、たっぷりしたボディ側面にしないと陰影がハッキリと出ず、弱々しく見えてしまう。「日本やインドは低緯度だから、同じ形でも見え方がまったく異なる」とか。

キープコンセプトだった2代目を経て、現行モデルをデザインする際は「スイフトDNAの大胆な進化」を掲げた。初期のスケッチ作業では、まず「こうすればスイフトに見えるし、新しく変わったと感じる」という方向を見定め、その後に実際のスタイリングを考える作業に移ったという。具体的には従来のスイフトらしさを残しつつ、『バレーノ』との関連性を持たせつつ似すぎない、適度な距離感のあるデザインを目指したと結城氏。

3氏のプレゼンテーションの後には、JIDA関西ブロックの竹綱章浩ブロック長がモデレーターとなったパネルディスカッションがおこなわれた。ここでは製品が異なっても「デザインする」ということの意味は変わらない、という結論となった。

「クルマもモーターサイクルも、デザインすることは同じ。ただし大衆向け商品と趣味性の高い嗜好品では、売り方が違う」(木村氏)、「コンシューマープロダクトでも公共向け製品でも、トライ&エラーを繰り返しながら時間をかけて形を作ってゆくというプロセスは変わらない。コンセプトが大事というのも同じ」(若尾氏)、「スタイリングのアプローチは2つある。グローバル商品と、軽自動車のようなローカルを極めるようなものではまったく違う」(結城氏)。

なおJIDA関西ブロックでは、来年も6月後半の「World Industrial Design Day」に合わせてイベント開催を予定しているとか。トランスポーテーションばかりとなった今回は偶然の結果で、次回も幅広いジャンルの工業デザイナーから登壇者を選びたいとしている。
《古庄 速人》

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