6月17~18日に決勝が開催された「第85回ルマン24時間レース」で、ミシュランタイヤが1998年から継続中の総合連覇を「20」に伸ばした。“確勝”のはずが、思わぬ“ピンチ”も経るかたちでの節目到達であった。
今年のルマンで総合優勝を飾ったマシンはミシュランタイヤ装着の#2 ポルシェ「919ハイブリッド」(T. ベルンハルト & B. ハートレー & E. バンバー)。最速クラスで争うポルシェとトヨタのLMP1-Hマシンがすべてミシュランを履いていると聞けば、誰もがミシュランの勝利は当然と思うだろう。
ところが今回は両社計5台のLMP1-Hマシンにトラブルやアクシデントが相次ぐ波乱の展開で、ミシュランの総合優勝にも思わぬピンチが生じたのである(ちなみに“6台目のLMP1”、唯一のハイブリッドではないLMP1=#4 ENSO CLM P1/01もミシュラン装着だが、レース序盤にリタイアしている)。
トヨタの3台は夜のうちに総合優勝圏外へと去った。2台はリタイアし、残る#8 トヨタ「TS050ハイブリッド」(中嶋一貴組)も長期ピットインの影響で、格下のLMP2クラスのマシンをレース終了までにすべてパスすることも不可能と見られる状況に陥っていたのだ。総合首位は#1 ポルシェ(A. ロッテラー組)が独走、ペースコントロールに入っていく。
一方、#2 ポルシェはLMP1-H勢で最初にトラブル長期ピットインを強いられて遅れたが、こちらの方が#8 トヨタより遅れの幅は小さく、トヨタの実質壊滅後はレース終了までにLMP2クラス全車をパスできるスピードで走っていた。
次にレースが大きく動いたのは、ゴールまで4時間を切ったところ。総合首位の#1 ポルシェにも異変発生、リタイアとなってしまう。これで総合首位に立ったのは、なんとLMP2クラスのマシン。そしてLMP2のマシンの大半はダンロップを履いており、この段階でクラス上位はダンロップ装着車が占めている状況だった。
もちろん、#2 ポルシェはレースが終わるまでにLMP2勢をすべてパスできるペース配分で走っていたのだから、ミシュランの連覇に黄信号が灯ったわけではない。ただ、やはりペースランしていた#1 ポルシェが止まってしまったことを考えると、#2 ポルシェにもいつ何が起きるかは分からない。#8 トヨタがLMP2のダンロップ勢をすべてパスするのはもはや明確に不可能な状況。#2 ポルシェに再度の異変が起きれば、ミシュランの総合連覇は一気に赤信号へと変わる、そんな可能性もはらんだピンチの終盤戦だったのである。
最終的には#2 ポルシェが“予定通り”総合首位に立ち、優勝。ミシュランのルマン総合連覇は無事に「20」の節目へと到達した。
ミシュランのモータースポーツ・ディレクター Pascal Couasnon氏は「この20連覇は、マシンとレースが進化を続けるなかで、我々がパートナーチームに対し、勝てるソリューションを提供し続けてきたことを意味します」と語っている。
1998~2017年のミシュラン20連覇において、自動車メーカー(ブランド)別の勝利数は、アウディが13、ポルシェが4、BMWとベントレー、プジョーが各1となっている。