ハイパーマックス G のプロフィールを簡単に紹介すると、このキットはショックアブソーバーとスプリングがセットになっており、バランス感覚を重視している。油圧式のショックアブソーバーは、HKSが長い経験と高い実績を持つ単筒式を採用した。形状は純正品と同じで、取り付けブラケットは純正とトレードインで装着する。また、ブラケット自体に強度を持たせるために、当て板を追加した。高い加工精度が要求されるロッドも国内の自社工場で生産を行っている。フロントのストラット式サスペンションに採用するのは、剛性の高い倒立式だ。スプリングも高品質を目指すため専用設計とした。ちなみに30mm程度のローダウンとなっている。
新シリーズとして送り出したハイパーマックス G の開発を担当した自動車開発部6課の今井達也課長は、「30系アルファード/ヴェルファイアのサスペンションキットは、今までと異なるユーザー層をターゲットにしたこともあり、開発は苦労の連続でした。ミニバンは、チューニングカーのよさや味を知っている人だけでなく、ビギナーや女性も運転します。だからスイートスポットをどこに置くか迷いました。初めてサスペンションを組み替えるエントリーユーザーには車高調整式のサスペンションはハードルが高いので純正品と同じタイプを選んでいます。純正サスペンションのよさを損なうことなく、トータルで走りのポテンシャルを引き上げることに力を注ぎました。最上級ミニバンですから、日常の走行シーンで気持ちよく、快適な走りを実現することはいうまでもありません。この課題をクリアしたうえで、ワインディングロードでは意のままに操れるようにしました」と、開発の狙いを述べる。
30系アルファードとヴェルファイアは、ノーマルでもかなりの実力派だ。だから試乗する前は「サスペンションを引き締めて走りの違いを出したのだろう」と思っていた。試乗車が履いていたのは、ファットな245/40ZR20サイズのヨコハマ「ADVAN Sport」だ。しかし、撮影で移動したとき、早くも予想は覆された。2列目に座ったのだが、驚くほど乗り心地がよかったのだ。ノーマルのアルファード/ヴェルファイアは、低速ではサスペンションの動きが渋く、突起や段差の乗り越えでは大きめのショックを感じたものである。が、ハイパーマックス G を装着したアルファードは、微低速域の減衰が滑らかに立ち上がり、フリクションを感じさせない上質な乗り心地だった。
無駄な動きが巧みに抑え込まれているから身体や頭を揺すられる回数は大幅に減っている。ドライバーだけでなく、パッセンジャーも快適にロングドライブを楽しめるだろう。クルマ酔いする人も減るはずだ。ハイパーマックス G はアスリート派だけでなく、ファミリー派にも満足度の高いサスペンションキットである。
《片岡英明》