九州新幹線西九州ルート、開業時のフリーゲージ導入を断念…当初は「対面乗換」に

鉄道 行政
2014年11月から走行試験が中断しているフリーゲージトレイン第三次試験車。西九州ルートの開業時にフリーゲージトレインを導入することが困難となったため、開業当初は武雄温泉駅で在来線特急と新幹線列車を乗り換えることになる。
  • 2014年11月から走行試験が中断しているフリーゲージトレイン第三次試験車。西九州ルートの開業時にフリーゲージトレインを導入することが困難となったため、開業当初は武雄温泉駅で在来線特急と新幹線列車を乗り換えることになる。
  • 第三次試験車の台車。車軸と軸受けの接続部に摩耗痕が見つかるなどのトラブルで2014年11月から走行試験が中断している。
  • 九州新幹線鹿児島ルートが部分開業(2004年3月)した頃の新八代駅ホーム。同駅では鹿児島ルートが全線開業するまで、博多~新八代間の在来線特急『リレーつばめ』(右)と新八代~鹿児島中央間の新幹線『つばめ』(左)が同じホームで乗り換えできるようになっていた。
国土交通省や佐賀県、長崎県など6者は3月29日、武雄温泉(佐賀県武雄市)~長崎(長崎市)間で工事中の九州新幹線西九州ルートについて、開業時は軌間可変電車(フリーゲージトレイン)を導入しないことで合意した。当初は博多(福岡市博多区)~長崎間の直通運行を行わず、途中駅で在来線特急と新幹線列車を乗り換える必要が生じる。

西九州ルートは福岡市と長崎市を結ぶ整備新幹線。博多~新鳥栖間は九州新幹線鹿児島ルートと線路を共用するため、実際の建設区間は新鳥栖~武雄温泉~長崎間になる。このうち武雄温泉~長崎間の約66kmが、2008年から2012年にかけて着工した。

この区間は2008年の着工当初、新幹線用の路盤に在来線用の線路を敷く新幹線鉄道規格新線(スーパー特急方式)として計画されていた。これにより、博多~武雄温泉間は在来線を走行。武雄温泉~長崎間はスーパー特急方式の新幹線を高速で走行し、博多~長崎間を直通する特急列車を運行するものとしていた。

その後、政府・与党は武雄温泉~長崎間を通常の新幹線規格(フル規格)で整備する方針に転換。開業時期は2022年頃とし、博多~長崎間の直通列車は開発中のフリーゲージトレインで運行することになった。フリーゲージトレインは車輪の幅を変更することができる鉄道車両で、2本のレール幅(軌間)が異なる新幹線と在来線の直通運行も可能。日本では1998年に試験車両が開発され、2014年4月からは第三次試験車両による走行試験が始まった。

しかし同年11月、車軸と軸受けの接続部に摩耗痕が見つかるなどのトラブルが発生し、走行試験も中断。武雄温泉~長崎間の完成時にフリーゲージトレインを導入できないことが確実となった。このため、武雄温泉駅での乗り換えを軸に関係者間で協議が進められていたが、佐賀県と長崎県が追加負担に難色を示していた。

与党と国土交通省、佐賀県、長崎県、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)、JR九州の6者による今回の合意によると、2022年度に武雄温泉~長崎間をフル規格で開業させるが、博多~長崎間の直通列車は運行せず、利用者は武雄温泉駅で博多方の在来線特急と長崎方の新幹線列車を乗り換えることになる。武雄温泉駅には「対面乗換方式」を導入し、乗り換えの負担を軽減する。

武雄温泉駅ではプラットホーム改修などの追加工事が必要となるが、約70億円とされる追加費用は「整備新幹線スキームで整備」するものとし、地元の追加負担をなくす。ただし、武雄温泉駅舎の追加施設(約24億円)と大村車両基地などの追加施設(約46億円)は共通経費として取り扱い、佐賀県と長崎県も一部を負担することになる。

開業時の導入が困難となったフリーゲージトレインは、秋頃に開催される技術評価委員会の結果を待って、新幹線と在来線の線路接続施設(アプローチ)の整備に着手。新鳥栖駅のアプローチはフリーゲージトレインの量産車導入時、武雄温泉駅のアプローチは先行車導入時に使用できるよう整備するものとした。また、在来線の佐世保線肥前山口~武雄温泉間で計画されている複線化工事は段階的に実施。2022年度の開業時までに大町~高橋間の複線化を行い、その後順次、複線区間を肥前山口~武雄温泉間に拡大していくものとした。

一方、西九州ルートの並行在来線となる長崎本線肥前山口~諫早間は2007年12月、佐賀県・長崎県・JR九州の3者が上下分離方式の導入で基本合意している。JR九州が長崎本線の施設を佐賀県と長崎県に有償(14億円)で譲渡し、JR九州は西九州ルートの開業後20年間、両県から施設を借り受けて列車の運行を維持することになっていた。

今回の合意では、施設の譲渡が有償から無償に変更され、大村車両基地などの追加施設で佐賀県と長崎県が追加負担する分を相殺する。JR九州による運行維持期間は、開業後23年間に延長された。このほか、西九州ルートの開業時点から3年間は「一定水準の列車運行のサービスレベル」を維持するものとし、特急列車を博多~肥前鹿島間で上下14本程度を運行。普通列車も現在の水準を維持する。

新幹線と在来線の対面乗換方式は、九州新幹線鹿児島ルートが2004年3月に部分開業した際、新八代駅に導入されている。プラットホームの北東側に在来線の線路、南西側に新幹線の線路を敷き、博多~新八代間の在来線特急『リレーつばめ』と新八代~鹿児島中央間の新幹線『つばめ』が同じホーム上で乗り換えできるようにしていた。

このほか、新函館北斗駅では3月26日に部分開業した北海道新幹線のホームと在来線(函館本線)ホームを同じ平面上で接続させ、階段やエスカレーターなどによる上り下りをなくしている。また、新潟駅でも対面乗換方式の導入に向けた工事が進められており、上越新幹線と新潟~秋田方面を結ぶ在来線特急『いなほ』が同じホーム上で乗り換えできるようになる予定だ。
《草町義和》

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